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王都の冒険者たち」
第一話 冒険の合間に・宿屋にて

第一話: 冒険の合間に・宿屋にて 3

2010.01.04  *Edit 

(誰……)
 最初に浮かんだのが安堵ではなく、焦りだったことにエミリーは愕然とした。
 助けを求めているのではないのだ、自分は。
 扉が開く音がすると同時にシーマスの左手で口を塞がれる。彼の右手は相変わらず自分の一番大切な部分に入り込んでいたが、そこから流れ込んでくる快感は途絶えていた。
 下段ベッドは四方をカーテンで覆われ、外から中は見えない。とはいえ、薄い古布だ。小さな音でも外に漏れるだろう。
「エミリー? いる?」
 のんびりした声は彼女が淡い恋心を抱くルークのものだった。
 昼食時に姿を見せないエミリーを探しに来てくれたのだ。そう思うと彼の優しさに涙があふれた。
(どうしよう……)
 しかし、助けを求めてもいいはずなのに、彼女の脳裏に浮かんだのは、この状態を彼に見つからないようにするということばかりだった。
 何故だろう。
 ここでルークに助けを求めて声をあげれば、彼はカーテンを引きあけ、非力な彼女ではどうしようもないシーマスを一撃でどかしてくれるはずだ。
 でもそれだけは嫌だった。シーマスに口を塞がれるまでもなく、彼女は物音ひとつ立てる気は無かった。
「いないのー?」
 ルークの足音が近づく。
 もしカーテンを引かれたら……。彼女は身をすくめた。
 だが、ほんの数瞬、様子を伺う気配がしたかと思うと、ルークの足音は彼自身のベッドの向こうに向かった。そこには彼の荷物が置いてある。それを探っているような物音がした。どうやら荷物を何か取りに来たようだった。
(私を探す為だけに来たわけじゃないんだ……)
 安堵のような失望のような感情が胸に落ちた。ルークが探し物をしている音だけが響く。
 先ほどまで我を失うほどの快楽を送り込んできた彼女の下腹は、男の指の妙な異物感を残すだけだった。体は冷めていた。
 シーマスの左手が彼女の口元からそっとどけられる。
 エミリーは今度こそ安堵の息をついた。
 シーマスも我に返ったのだ。こんな場所でパーティーの仲間に手を出すのはどう考えても得策ではないということを悟ったのだろう。
 魔術師らしく、人並み以上の好奇心を持ち合わせていた彼女は、未知の体験が未遂に終わったことが残念なような気もしたが、持ち前の倫理観が戻ってきて、やっと思い直す。
(これで良かったのよ……。良かった)
 あとはルークをやり過ごすだけだ。だがシーマスと目を合わせづらく、彼女は気まずく顔を横にそむけた。
「どうしたの?」
 シーマスのごく小さな囁き声、カーテンの外に辛うじて聞えないような声が耳元で響いた。息が耳に首筋にかかり、ごく僅かに髪が震える。
(どうしたって……何考えてるの)
 ここで自分が声をあげれば、彼女を組み敷いているシーマスがどんな目に合うか、彼は考えていないのだろうか。
 呆れる彼女に構わず、シーマスは続けた。
「別にいいよ、奴に泣きついたって。助けてって言ってみれば?」
 エミリーは振り向いた。たじろぐほど近くにあるシーマスと目が合う。彼は焦るどころか、薄笑いを浮かべていた。
「飛んできてカーテンを開けてくれるよ? そんでオレをぶっとばして、あんたを助けてくれるよ。可哀想に、こんなにはしたない姿にされちゃって、大股開きでしかもびっしょり濡れちゃってるもんね……」
 再び顔に血が昇るのが分かった。その瞬間、シーマスが再び指を静かに彼女の体内で蠢かせ始める。
 冷めていた体にすぐに熱が回り始めた。エミリーは唇を噛み、シーツを握り締めて、声を、吐息をこらえた。
 シーマスは彼女にぴったりと重なって体重を預け、指だけを静かに動かしながら、耳元で囁き続けた。
「声あげないの? 我慢しなくてもいいのに。ヤツにもお前の一番大事なとこを見せてやれよ」
 口を開いてしまうと声が漏れてしまいそうで、エミリーは唇を噛んだまま、ただ首を振った。
「奴もお前のこんな姿見たら飛びついてくるよ。ねえ、それとも三人で仲良くしようか」
 体の芯を優しくかき回され、切ないほどの快感が何度も押し寄せる。声を漏らせない代わりに涙が流れた。
(早く出て行って……)
 彼女は快楽の拷問に耐えながら、ルークが出て行くことだけを祈った。
 通じたわけでもないだろうが、やがて物音が収まり、ルークが立ち上がる音がする。
「ホラ、あいつ出てっちゃうよ? いいの? この姿見せてやれよ」
 囁きながら、シーマスの舌が彼女の耳を這う。それすら快感となる。秘所がまださらに潤い、熱を帯びてくるのが分かる。
 シーマスの親指が陰毛を掻き分け、彼女の割れ目の端で固くなりつつある陰核を探り当てた。中指を膣で動かしながら、器用に親指でそこを撫で擦られる。エミリーは閉じた目の奥に光が散ったような気がした。シーツをつかむだけでは情熱の行き場が足らず、思わず自分にのしかかるシーマスの腕をつかむ。
(早く……早く……出て行って)
 もう耐えられない。
 陰核からの鋭い快感は、体内から送り込まれるものとはまた違った。この全身を駆け巡るふたつの快楽を思うさま味わいたい。自分が獣になってしまったような気がした。
 ぷちゅ、という粘ついた淫らな音が微かに自分の局部から聞こえる。
(ああ……ルークに聞こえたらどうしよう)
 羞恥すらも自分を興奮させる道具だと、エミリーはようやく悟った。
 だから先ほどから自分を恥ずかしがらせる言葉を吐くシーマスに嫌悪がもてない。当然だ。彼が与えているのは快楽だけだから。
「いくら声を堪えても、ここからエッチな音がしちゃうんじゃ意味ないよ」
 粘ついた音をさらに立てて彼女の内部を愛撫しながら、シーマスは意地悪く囁く。
 それはカーテンと、ルーク自身が立てる物音にかき消され、彼の耳には届いていないようだった。
 エミリーは小さな声をやっと絞り出した。
「やめて……言わないで」
 もっと言って。
 シーマスは恐らく自分の言葉とは正反対の無言の願いを聞き入れるだろう。自分自身が知らなかった、認めたくなかった望みを巧みに引きずり出してきたのだから。
 彼の腕をつかむエミリーの手に力がこもった。
 やがてルークは扉を開け、出て行った。階段を下りていく音がする。
「なーんだ。なんで助けを求めなかったの?」シーマスは再び両手をついて彼女の真上で起き上がりながら言った。「あいつに邪魔されずにオレと続きがしたかった?」
 エミリーは首を振った。
「嘘つきめ」
 男の吐き捨てるような言葉に彼女は酔いしれた。
 シーマスはさらに指を激しく動かし始める。ぶちゅぶちゅという淫靡な音が遠慮も無く部屋に響いた。
「うあっ……」
 エミリーは耐え切れずに声をあげた。
「もう声出しても大丈夫だよ。ここは昼メシ時はほとんど誰も客室には入ってこないし」
「でも……」
「大丈夫だって。ねえ、気持ちいいんだったら声聞かせて」
 優しくなだめるような声。そんな声を今日まで彼から聞いたことはなかった。肌を合わせるというのはこういうことか。仲間や友人の仮面をかぶっている知り合いの、その内側を覗くことか。
「ねえ」
 もう一度シーマスが言うと同時に、エミリーの体内にもう一本指が差し込まれ、押し広げられた。
「あああっ!」
 苦痛と快楽に彼女はついに叫んだ。
 今まで一度もあげたことのないような、上ずって深い、嬌声としか呼べないような淫らな声。
 体の芯からあふれ出るような、悦楽に満ちた自分の声を聞き、さらにエミリーは昂った。体が反れる。
 もう止まらない。自分の体はうねり、どこかに向かって流れ出している。知らないところへ。


 実際、ルークが出て行くまではひやひやした。
 エミリーも気が気ではなかっただろうが、シーマスの方こそ首の皮一枚のところに刃物をつきつけられているようなものだった。
 プリシラも恐ろしいが、ルークが本気で怒ればその比ではないだろう。もしエミリーが助けを求めて声をあげれば、飛び込んできたルークに血だるまにされていたはずだ。正義感に満ちた彼は、女を陵辱するような男が一番嫌いだった。
 しかしそんな危険を冒してでも、シーマスはエミリーを責め立ててやりたかった。元来、スリルに目のない人間なのである。
 危機を自分の読み通りに回避したことで、シーマスはさらに興奮していた。彼自身も呼応するように昂る。
 ルークをやり過ごして、エミリーを頑なに包んでいた恥じらいの殻も一枚破れてしまったようだ。
 彼がさらに人差し指を彼女の中に差し入れると、聞いたこともないような、少女のものとも思えないような淫靡な声があがる。
 シーマスは少女の両膝を立てさせ、自分の指を突っ込んでいる、彼女自身にじっくり目をやった。
 あふれ出した愛液が自分の指にまとわりつき、それでも足りずに割れ目の先、陰毛を濡らして光らせ、尻の方まで広がり、彼女のローブに垂れて染みを作っている。
「あーあ、パンツ脱がせてやったのに、ローブまで垂らして汚しちゃって……恥ずかしい奴」
「うっう……」
 シーマスが彼女の羞恥心をわざと掻き立てるように言うと、少女は上気した顔で歯を食いしばり、声を漏らした。いじめられて興奮するタイプの女らしい。見た目通りというか、見かけによらずと言えるのか。
 彼は一度指をそこから引き抜いた。さきほどは中指一本できつかった、男を知らない少女の蕾は、シーマスの愛撫によって、文字通りほころぶように少しずつ彼を受け入れようとしていた。
 彼は蜜に濡れた自分の指を、エミリーが見えるようにねっとりと舐めた。まだ若い少女の愛液は酸っぱいような味と、生臭い女の肉の匂いが微かにした。
 シーマスはその指を半開きで息が荒いエミリーの口元に押し付けた。
 彼女は嫌がって顔をそむける。だが無理にその柔らかな唇に指をねじこんだ。
 口内の柔らかい肉につつまれ、指先から快感が駆け上がる。彼はわずかに体を震わせた。
「お前が汚したんだから、舐めて綺麗にしてよ」
 エミリーは顔を歪め、首を振った。だがすぐに彼の指はざらざらとした、湿った柔らかな舌に覆われた。声が漏れそうになるのをやっと堪える。
 素直な娘だ。もう完全に性の快楽の言いなりだ。恥じらいや道徳や威厳を武器にそこから逃げ出す気もないようだった。
 結婚前に、しかも恋人でもない男との肉体交渉を持つくらいなら、舌でも噛みかねないような潔癖な女に見えたが、見た目や言動では本質は分からないものだ。
 指を舐め回されるだけでこんなに気持ちいいのだ。この小さな口に自分の猛った性器を突っ込んだらどれだけの快感だろう。
 頃合を見て、彼は指を彼女の唇から引き抜いた。
 少女の唾液に濡れた指を、彼女自身の豊かな乳房にこすりつけてぬぐう。
「ああっ」
 エミリーは身をよじった。恥じらいでも抵抗でもなく、痴態としか呼びようのない仕草だった。両手を縛られているせいで、わずかに体を動かすだけで、柔らかな乳房がぷるぷると揺れる。
「気持ちいい?」
 乳房を揉みしだきながら尋ねると、エミリーは快楽に潤んだ目で、何かを訴えるように彼を見つめたが、首を縦にも横にも振らなかった。
 生意気な。
 シーマスは再び彼女の秘所を覗き込む。膝をさらに大きく開かせ、立たせた。その姿勢はまるで蛙か何かのようだ。その真ん中にぐっしょりと濡れて開く、恥毛から覗く赤黒い肉の花もとても動物じみている。
 エミリーの太ももをつかむと、驚くほど柔らかく、彼の手が彼女の肉に食い込んだ。ふくらはぎを自分の両肩に掛けさせると、彼女の脚の間はこれ以上なく広がる。
「あっあっ……いや!」
「うるさいよ」
 まだ残っている恥じらいから悲鳴をあげるエミリーをぴしゃりと黙らせる。
 優しくなだめ、時に鋭く罵る。飴と鞭を使い分けることで、少女の感情が揺さぶられるのが手に取るように分かる。
 エミリーは黙り込み、彼に怒鳴られた時のようにすすり泣くような嗚咽をあげた。
 普段であれば苛立ちしか感じないその声が、自分が与えた快楽を源として漏れていると思うと、耳に心地よかった。愛しささえ感じる。
 そうしておいて、彼は彼女の秘所を視姦する。
「いい子だね……可愛いよ」
 優しくつぶやき、指先でそっとそこをなぞると、内側から泉のようにとろとろと愛液が溢れてきた。男に見られていると知って、さらに感じているらしかった。
 シーマスはあふれ出る泉の入り口に舌を這わせた。むっとするような湿り気と彼女の体温が彼の顔を包む。
「あぁぁ……」
 深い喘ぎがエミリーの喉からほとばしった。
 女の肉の匂いと微かな小水の残り香が鼻に入り込んだ。
 こんなに愛らしい、まだ若い少女なのに、なんて淫猥なんだろう。そこは生々しく動物的で、生気に満ちていた。
 舌を尖らせて、彼女の体内に侵入させる。
「は、あぅ、あっあっ……」
 エミリーは悦びに満ちた声をあげる。彼の肩にある両脚が快感に耐え切れないように踊った。
 じゅるじゅると音を立てて、少女の愛液を吸い、舌を割れ目に沿って撫で、今度は陰核を撫でる。それは可哀想なほど充血して、ぷっくりと起き上がっていた。
「あ、そこ……待って……」
「待たないよ」
「お願い……ふ……そこ、あっ…つらいの」
「どうつらいの?」
 小さな肉の蕾を舌で転がしながら、合間に彼は意地悪く尋ねる。
「だって…だって……分からないけど……あ」
「だって、何? ハッキリ言えよ」
 さらに強く舌を動かす。
「はぁぁ……」エミリーの口から漏れる喘ぎは、もう完全に肉欲におぼれる女の、雌のものだった。「ああ、ああ……あぅ、うう……意地悪言わないで」
 媚に満ちた愛らしいその言葉に、彼の一物に一気に血が流れ込んだ。シーマス自身ももう暴発しそうだった。
 彼は体を起こすと、彼女の両脚を肩から下ろし、ベルトを外してズボンの紐を手早く解いた。
 エミリーはその光景を見て、身を震わせた。紅潮した顔が恐怖に歪む。シーマスはしかしそこに絶対的な拒絶や嫌悪を見ることはなかった。
 紐を解いたズボンと下着をずり下げると、屹立した彼自身が待ちきれないように飛び出した。
「見たことある?」
 エミリーの目を覗きこみながら訊くと、予想通り少女は首を振った。優越感、征服感がシーマスを満たした。この娘は男を知らないのだ。それを今から自分が貫く。
 エミリーを改めて見つめる。なんて愛らしい動物だろう。乳房をはだけ、濡らした股を開いて小さく震えている。
 一瞬、面倒とも思ったが、シーマスは手を伸ばして、彼女の両手首を縛り上げたままの細縄を解いてやった。手が痺れていたのか、そんな理性も吹き飛んだか、もう彼女は体を隠そうとはしなかった。
 自分だけがっちり服を着ているのも格好が悪い。体がほてっていることもあって、シーマスはもどかしく上着を脱ぎすてると、彼女に改めて覆いかぶさり、ぎんぎんに張った彼自身を彼女の体内への入り口にあてがった。
「まって……まって」
 エミリーは首を振った。
「どうして? そっとするよ、大丈夫だから」
 シーマスは再び手を伸ばして、可憐な少女の髪を撫でてやった。必死に堪える欲情で手がわずかに震える。早く。早く入れたい。
「だって……そんな大きいの入らないよ。裂けちゃうよ」
 可愛いといえばあまりに可愛らしい乙女の言葉に、彼の男根はさらに猛った。
「入るよ。大丈夫だよ」
 無理にぶちこんでやりたい衝動と戦いながら、彼はあくまで優しく言葉を吐き出した。必死で抑制している自分にさらに興奮する。
「これだけ濡れてるんだから、大丈夫。痛いかもしんないけど、我慢して」
 もうシーマスも限界だった。
 エミリーの返事を待たず、濡れそぼる彼女の中に彼自身をそっと、だがためらわずに押し入らせた。
「はっ……!!」
 今度ははっきりと苦痛の声がエミリーから漏れた。
 きつい。だがぬるぬるだった。尖った男性自身が彼女の内部の襞を押し退け、蹂躙している。
「ああ……」
 シーマスもたまらず声を漏らした。
 女の中は、くだらないことしか言い残さなかった神が残した最高の遺産だ。
 エミリーが破瓜の痛みに耐えているのは分かったが、彼はもう待てずに腰を動かして、彼女の未熟な肉襞を突き始めた。エミリーの華奢な体、重たげな乳房が揺れる。
 涙が出そうな快感が股間から伝わり、背中を這い登って全身に広がった。


 体を引き裂かれるような激痛に、彼女は身を縮ませた。
 痛みのあまり歯を食いしばるのが精一杯だ。声も出ない。
 快楽を送り込んできた体の芯から、今度はまっぷたつに裂けてしまいそうな鋭い痛みが突き抜ける。
 絶対的な異物感を感じさせる杭のようなシーマス自身は、彼女を貫いてほどなく、さらに苦痛を与えるように動き始めた。
 体の奥で感じる引きつれたような、鋭い痛みにエミリーはただ耐えた。
 何故止めてと言えないのだろう。
「あぁ……はぁ」
 先ほどまでエミリーをいい様に責め立てていた男の、快感に屈服した喘ぎが聞こえる。
(私が……私の体の中が、シーマスを悦ばせている。いつも私を叱り飛ばし、今日も私を強引に組み敷いた彼を)
 そう考えるだけで、この痛みも誇りのような、そして愛しいもののような気持ちがした。
 そして激痛の奥に火花がともるように、同じでいて、異なる感覚が伝わってくる。それこそが真実の悦楽の末端だということを、エミリーは悟っていた。
 もう少し……それを捕らえるまで。
 エミリーは縄が解かれた手を、自分に苦痛を与えている張本人でありながら、この場で唯一すがれる男の背中に回した。無我夢中だった。
「エミリー……」
 上ずった声でシーマスが腰を動かしながら喘ぐ。彼女の名前を呼ぶ。
「は……シーマス……」
 自らの声の思いがけない淫らな響きは、エミリーを震わせた。
 名前を呼ぶことさえ少ない男を、こんなに甘く、切ない声で呼ぶことがあるなんて。
「エミリー、可愛いよ、可愛いよ」
 シーマスの汗ばんだ、薄い胸が自分の体とぴったりと重なる。シーマスの動きに合わせて震えていた乳房がその重みでつぶれた。
 体温が中と外で混ざり合う。抱き締められるのはこんなにも幸福だったのか。たとえ高尚な愛など無くても。
「シーマス。シーマス。シーマス……」
 エミリーは熱に浮かされたように何度も彼の名を呼んだ。
「エミリー……」名を呼ばれた男は、愛しそうに自分を見る。「ごめん、ごめんね。痛くない?」
 今さら……あんな大きくて固そうなものをねじ込んでおきながら、今さら。
 だが思いとは裏腹にエミリーは首を振った。
「大丈夫。大丈夫だから、止めないで」
 考えるより早く言葉がこぼれる。
「止めないよ。エミリーの中に出すよ」
 その意味が分からないはずはなかったが、エミリーは何度もうなずいた。恐怖も痛みも何も勝てない。今自身を支配している激情の名を彼女は知らなかった。
 体の芯を貫く苦痛は痺れのように甘みを帯びて広がる。苦痛も快楽も根本は同じなのだ。
「あっ……ああ……シーマス……」
 熱い、汗にまみれた背中に強くしがみつく。体をうねり走り抜ける圧倒的な感覚を伝えたい。だが、二人の肌は重なるばかりで溶け合うことはない。それがもどかしくて、さらに強く強くしがみつく。
「エミリー、気持ちいいよ。気持ちいい。最高だよ」
「私も……私も。シーマス、シーマス」
 好き。
 喉の奥からこぼれかけたその最後の一言を、ほんの僅かに残った理性で飲み込んだ。
 それは言ってはいけない。どんなに理性を失っても。そんな気がした。
 男がひときわ荒い息を放った。
「エミリー……出すよ」
「シーマス。お願い、出して。私の中に出して」
 信じられないほど淫らな言葉が滑り出た。先ほど飲み込んだ言葉が持つ禁忌の重さに比べれば、鳥の羽のようなものだった。
「ああっ……あ」
シーマスが動きを止めて呻いた。
「ああ……!」
 エミリーも一緒に呻く。それは性の絶頂ではなかったが、脳裏の奥で飛び回る火花を捕まえたような、ひとつの到達点だった。
 シーマスの日焼けした体から急に力が抜ける。
 彼はしばらくエミリーの体に体重を預けていた。互いの荒い息が空間を満たす。
 やがてシーマスは手をついて身を起こし、彼女の中から自分のものをそっと引き抜いた。
 こっそり目をやると、先ほどまで固く猛り、彼女を蹂躙していたそれは、力を失って垂れ下がり始めていた。
 シーマスはそれを無造作にズボンの下にしまいこみ、紐を結んでベルトを締めた。脱ぎ捨ててあった上着を乱暴につかみ、エミリーの方を振り返りもせずに立ち上がる。
 エミリーの方はと言えば、睦みあいの余韻で、まだ頭に霞がかかっていて、動く気力もなかった。
 シーマスはカーテンをめくり、ベッドの外に出て行った。
 別人のような男の背中を見失い、自分だけ夢の世界に置き去りにされたように、エミリーは途方にくれた。ようやく上半身を起こし、自分の体を見下ろす。
 胸元の肌は赤く染まり、鎖骨にはシーマスの唇の痕がある。大きくめくられたローブから覗く股間はまだ粘液に濡れ、膣からはそれとともに彼が彼女の体内で吐き出した精液が僅かに漏れ出していた。よく言われているような破瓜の血は見当たらなかった。
 すぐに力を失って我に返った彼の性器と、性の余韻から自然には元に戻れない自分の性器はなんて違うんだろう。
 エミリーは惨めにそう思った。
 だしぬけに再びカーテンが持ち上がり、シーマスが顔を出した。上着を着込み、先ほどの劣情などは微塵も残っていない、いつもの乾いた表情だ。
 彼は無造作に手ぬぐいをエミリーの目の前に突き出した。
「使えば? そのまま捨てちゃっていいよ」
 彼女は呆然としたまま、それを受け取る。自分の体を見、手ぬぐいをどう使うのか、思い当たった。さらに小さな袋に入った粉薬を差し出される。
 何だろう。
 今度は不審に思い、彼女が受け取らずにいると、シーマスは苦笑しながら言った。
「避妊薬。すぐに飲んどけ」
 エミリーがやっと合点がいき、それを掌に受け取ると、彼は微笑んだ。
「内緒ね」
 言うが早いか、シーマスの姿は消え、今度こそドアを開けて部屋を出て行ったようだった。
 手ぬぐいで体を拭くことも忘れ、彼女は再び呆然と粉薬を見つめた。
 貴族の間に出回っている避妊薬は、血の流れを荒らして、確実ではないものの、妊娠を防ぐ効果がある。魔術師の知識として知っていた。数多く作られているとはいえ、庶民にとっては決して安くはない。
 ご丁寧にありがとうといえばいいのだろうか。
 エミリーは自分の中の奇妙な感情に戸惑った。
 「内緒」とは、何のことだろう。今のほんの一時にも満たない、二人で共有した乱れた時間のことだろうか。
 何も。今は何も考えられない。
 肌を重ねたからと言って、彼に貞操を捧げたとは思っていないし、愛するようになったわけでもない。けれど全く想像もしなかったシーマスの姿を五感すべてで感じて、彼に対して得体の知れない気持ちが沸き起こってくる。嫌悪なのか、興味なのか、親近感なのか。言葉には表せない。かたちもはっきりとしなかった。
 エミリーは混乱しながらも、避妊薬を一気に飲み干した。


 内緒ね、などとかっこつけて部屋を出たはいいが……。
 シーマスは頭を抱えたかった。
(あ~~~、オレはバカか。なんでやっちゃったんだろう)
 ほんの少し、いたずら心が湧いただけなのだが、とんでもないことになった。
 内緒と言ったところで、エミリーがプリシラに泣きつけば、鉄拳制裁が待っている。歯という歯を折られるかもしれない。
 暴力の果ての陵辱ではない、とは断言できる。エミリーもすさまじいほどの抵抗をしたわけではないし、経過はどうあれ感じて、悦んでいたのは間違いはない。
 が、我に返った彼女がそう思うかどうかは、全く定かではない。
 ムードにつけこまれて抱かれた、とエミリーが言えば、やはりプリシラに殴られるだろう。雰囲気に酔った方も悪いと思うが、プリシラやエミリーは酔わせた方が悪いと考えるのはまず間違いない。
(それにしても可愛かったな……エロくて)
 思い出すと、つい口元が緩んだ。
 しかし、あの処女とも思えないような乱れようは、なかなか無い。
 もしかしてルークではなく、自分に気があったんではないだろうか。
 あるいは、今日のことをきっかけに、あんなに悦ばせた自分に惚れるかもしれないではないか。
 そうすれば、抱かれたからといって、プリシラに告げ口することもないかもしれない。
(でも、それはそれで面倒だな……)
 抱いている時はともかく、素に戻るとやはりエミリーは苦手なタイプだった。本気で惚れられたらしつこそうだ。
 万一、彼女が避妊薬を飲まず、あるいは飲んだとしても薬が効かず、子供でもできたら……。
 考えたくない。
 どう考えても良い方向にいかなそうだ。とりあえず、今日は夜まで雲隠れしていよう。
 食堂に通じる階段を避け、考え事をしながら、裏口に通じている細い階段を降りていたシーマスは、途中で階段を踏み外し、一気に下まで転げ落ちた。


<冒険の合間に・宿屋にて:おわり>


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