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王都の冒険者たち」
第二話 地下都市

第二話: 地下都市 6

2010.01.26  *Edit 

 セルヴィスは目を閉じたまま微動だにしない。
 閉ざされた扉を開くのには、相当手間がかかるのだろう。相手が魔法で閉じた扉では、他の三人はやることがない。集中しているセルヴィスを見守るだけだ。
「ちょっと奥見てくる」
 気の短いシーマスは退屈に耐えられずに腰をあげた。
「一人じゃ危ないよ」
「様子見てくるだけだ。やばそうならすぐ戻るよ」
 顔をあげたミクエルにそう言うと、プリシラも立ち上がった。
「じゃあ、あたしも行く。ミクエルはセルヴィスについてて」
 ミクエルは一瞬顔を曇らせたが、結局頷いた。

 広間から続く扉を開いたのは、本当に何気なくだった。少し様子を伺おうと、中に入り込むと、他の仲間たちも続いた。突然後ろのセルヴィスが声をあげたので、振り返ると、入ってきた扉は閉じていた。
 セルヴィスの話によれば、彼の後ろに続こうとしたエミリーが、扉の前でしゃがみ込むのが見えた。最後尾のルークが彼女を気遣うように声をかける姿が、振り向いた彼の目に入ったと思ったら、突然扉は閉じてしまったという。
 それから扉は押そうが引こうが開かなかった。セルヴィスによれば、魔法によって閉ざされているらしい。
 扉の向こうは出口に続いているが、こちらがどこにも繋がっていなければ、閉じ込められたことになる。
 調べもせずに不用意にドアを開け、通路に入り込んで閉じ込められてしまったことで、シーマスは多少責任を感じていた。
 通路は、入り口付近を除いて、狭まっており、人一人が通るのがやっとだ。
 広間も階上と比べれば薄暗かったが、この通路はさらに明かるさが少ない気がする。ランプを灯さなければならないほどではないが、通路の外れにあり、下に続いている階段の奥は、暗がりになっていた。
 用心しながら階段を下りると、後ろから続いているプリシラが口を開いた。
「あんたさ」
 勝手に通路に入り込んだことを責められるのかと思い、内心身を竦ませながらシーマスは振り向いた。だが予想に反して、彼女の表情は微笑みに近いほど穏やかだった。
「最近エミリーに優しいじゃん。やっと大人になった?」
「え、そう?」
 動揺を悟られないように、シーマスは素っ気無く返事を残し、また前を向いて階段を下り始めた。
「だって前は野宿する度に、姑の嫁いびりみたいにあの子に小言言ってたじゃない」
(姑って……)
 他の喩えは無いのか。
 シーマスは確かにのほほんとしているエミリーを叱りつけることが多かったが、それほど陰湿な言い草に聞こえただろうか。
 野宿ともなれば、することは山ほどある。火を起こし、水を汲み、寝場所を整えて、食事の支度をする。
 しかし普段エミリーはてきぱき働く仲間たちを目で追いながら、ただ座っていることが多かった。時折、見かねたミクエルが簡単な用事を頼むことがあったが、薪を拾いにいけば湿った枝ばかり取ってくる、水を汲みに行けば迷子になる、食事の支度にしても手順が分からない。結局尻拭いをするミクエルの手間が増えるだけだった。
 昨夜、この遺跡に来る途中に林で野宿した時も、エミリーはしばらくの間、ぼんやり座っていたが、集めた薪で火を起こすミクエルに「何か手伝うことはない?」と尋ねるのが聞こえた。
(てめーで考えろ! ミクエルだって忙しんだよ)
 チーズを切り分けながら、よっぽどそう言ってやりたかったが、こらえた。
 ちなみにセルヴィスも野宿の最中は何もしない。忙しく働く仲間たちを尻目に、瞑想などに耽っている。居眠りしてるんじゃないかとシーマスは思っているが、何もできないならそれぐらい堂々としていればいいものを、エミリーは何か手伝わなければという焦りを見せながら、結局何もできずに、おどおどと周りを見回している。その仕草がいつもシーマスの癇に障る。
 今にしてもそうだ。遺跡に下る最初の階段で、エミリーは軽く足を痛めたらしいが、それを誰にも告げずに、平然を装って調査を続けながら、結局は我慢できなくなってしゃがみ込んでしまったようだ。
 一見、健気にも見える行為だが、他人にどう思われているかを気にしていて、自分の意志をはっきり伝えられないだけだ。 
 小言を我慢した理由はひとえに、はずみで彼女を抱いてしまったことにつきる。
 一応、エミリーに失礼なことをしてしまったという自覚はある。それを棚にあげて彼女を怒鳴りつけるのもきまりが悪いし、怒鳴られた彼女が怒って、例の事件を仲間に告げれば、自分の身が危ない。
 しかし彼の微妙な態度の変化に、プリシラが気づいてたとは思わなかった。鈍いように見えてもやはり女だ。
「ま、あんたのいつも言ってることも間違ってないけどさ、あれじゃ八つ当たりだったもん。見ててエミリーが可哀相だったよ」
「そうやって可哀相とか言って、お前らが甘やかすから、あいつ、いつまで経ってもぼけーっとしてんだろ」
 言葉を続けるプリシラに、シーマスは思わず言い返した。
 シーマスがエミリーを叱りつけると、プリシラやルーク、時にはミクエルが仲裁に入ることがある。「おとなげない」「そういう言い方はない」というのが、彼らの決まった言い分だったが、何のことはない。小柄な少女が怒鳴りつけられているのを見ていられないだけだろう。
 エミリーがそうして庇われると、庇う人間にはもちろん、庇われてさらに涙を流すエミリーにも尚更腹が立った。さらに言葉が荒くなり、一度など、仲裁に入ったルークと危うく殴り合いになりかけたこともある。
「そりゃそうよ。まるで女の子がチンピラに因縁つけられてるみたいだもん。あんたも結構ひどいこと言うしさー。……ま、でもやっと落ち着いてあの子を見守る余裕ができた?」
「別にそんなことねーよ。グダグダ言うにも疲れただけ」
 シーマスとエミリーの間に何かあったのかと勘繰られるのが一番困る。答えながら、シーマスは早くこの話題から離れたかった。
 別の話を探すまでもなく、彼の望みは叶うことになった。
 体が宙に浮く感覚を一瞬覚える。底知れず深く続いている階段の足元が突然消えた。

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