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王都の冒険者たち」
番外編一 冒険の合間に・風呂場にて

番外編一: 冒険の合間に・風呂場にて 1

2010.03.04  *Edit 

grindelwald_2.jpg

番外編一 冒険の合間に・風呂場にて 

 王都にやってきたばかりの頃、最も驚いたのは、見知らぬ人間同士が全裸になって、広い風呂に浸かることだった。同性同士とはいえ、あまりにも破廉恥な光景に見えて、目のやり場に困ったことを覚えている。
 プリシラがうろたえていると、傭兵仲間の女に笑われた。
『へえ~、意外とお嬢様なんだねえ』
 無論、そんなはずはない。単純に、プリシラが過ごしてきた北方地域では、大勢で入浴する習慣が無かっただけのことである。
 子供の頃から、父と共に隊商の護衛をして生計を立ててきた彼女は、生粋の傭兵のつもりだ。たたき上げられた人間だという自覚があるので、世間知らずのお嬢様だという言葉は、彼女に取って侮辱に近かった。
 彼女は憤然と服を脱ぎ捨て、全裸の女たちが浸かる浴槽へと突進した。
 しかし周囲で、乳房や陰部まで堂々と晒している女たちの素肌が目に入り、そして自身も同じように、生まれたままの姿で湯に浸かっていると思うと、どうしても顔に血が上った。真っ赤な顔で、必死に無表情を保とうとしているプリシラに、仲間の女はもう一度苦笑いを見せた。

 それから三年が経つ。
 王都の雑踏にも、全裸での入浴にも、すっかり慣れた。
「エミリーって、オッパイおっきいよね」
 慣れすぎたかもしれない。
 ちょっと触らせて、と手を伸ばすと、当然の如くエミリーは、体を引いてプリシラを避けた。
 一緒に風呂に浸かっているエミリーは、半年ほど前から共にパーティーを組んでいる、冒険者仲間である。
 今ではプリシラは、専業傭兵から一歩引いて、冒険者をしている。エミリーは、彼女のパーティーに、一番新しく入ってきた仲間だ。
 傭兵と違って、冒険者の仕事は多彩である。荷運びや、獣・怪物退治、人捜しから遺跡の探索、およそ何でも屋だ。
 経験を積み、蓄えもある程度できたプリシラたちは、そろそろ荷運びや護衛の仕事を少なめにして、一攫千金を狙った、遺跡の探索に手を染めようと考えていた。謎に満ちた未知の遺跡の探索には、研究者ともいえる魔術師は欠かせない。その専門家を、プリシラたちのパーティーは、二人抱えているのだ。
 先日、準備を整えて、いよいよ王都郊外の遺跡に潜ってみた。
 だが内部には、思わぬ危険が待ち受けていた。リーダーのルークが負傷し、彼らは一度探索を諦めざるを得なかった。
 その日暮らしの冒険者たちである。働かずにいれば、すぐに蓄えは尽きる。遺跡の次回の探索の準備をしつつ、彼らは小金を稼ぐために、仕方なく護衛の仕事を引き受けた。
 目的地であったこの町は、王都より北西にある、小さいが古い町だ。古より温泉が湧き出しており、古代には大きな温浴施設が建てられて、賑わったという。
 しかし、他にこれといった産業も無かった為、古代王国が滅亡し、封建制度が広まった後は、ただの鄙びた農村と化した。
 だが古代文明を研究する者たちにとっては、遺跡を抱くこの村は、貴重な資料の宝庫だ。今回もプリシラたちは、遺跡の探索に向かう、学者と魔術師たちの、道中の荷物持ち兼護衛としてやってきた。
 小さな農村には違いないが、かつては上流古代人、今は魔術師たちが出入りしているせいか、村は開放的で、村人も愛想がいい。居心地は悪くなかった。
 ついでに村では、湧き出す温泉を共同浴場として開放している。プリシラが育った北方では、温泉が湧く町もいくつかあったが、人々は飲泉として利用していた。薬湯とも言える貴重な湯に、王都の浴場のように、体中で浸かるのは、とんでもない贅沢だと思えた。
 プリシラたちが村に着いたのは、宵も深まった頃だった。不夜城の王都では、夕食の後の寛ぎの時間だが、田舎の農村では、既に深夜である。
 しかし彼らの雇い主である魔術師が、門番に掛け合うと、彼らはすぐに門を開いてくれた。鄙びた村では、王都の魔術師は、特別待遇らしい。
 宿も喜んで彼らを迎えてくれ、寝間着姿の夫婦が食事まで出してくれた。
 プリシラたちの仕事は、ここで終了である。魔術師たちは、研究と調査の為に、ひと月以上、ここに滞在するらしい。
 報酬の額は大したことはないが、今後遺跡の調査をするなら、魔術師ギルドとの人脈は、保っておくに越したことはない。彼女たちは不満も漏らさず、金を受け取った。
 少ない報酬の補填のつもりか、魔術師たちは、村で数日休んでいってよいと、プリシラたちに言ってくれた。怪我が完治していないルークに、ここの温泉の湯が効くだろうと、村人や魔術師たち同様に、共同浴場を使う許可を、領主から得てくれた。
 浸かる温泉というものが未体験だったプリシラは、到着したその日にもかかわらず、魔術師をせっついて、村の人間に共同浴場を開けてもらった。温泉に入ると疲れが取れると言うし、どうしても入ってみたかったのだ。雇い主の魔術師に恐縮するエミリーを引きずるようにして、早速浴場へと来てみたわけだ。


「ちょっとでいいからー」
 性懲りもなく、エミリーの胸に手を伸ばすプリシラから、エミリーは逃げ回っている。プリシラは半分は冗談だが、何と言っていいか分からず、ただ顔を紅潮させて、身を引くエミリーが、まるでウサギのようで、なんとも可愛い。
「プリシラ……」
 必死に手で胸元を隠しながら首を振るエミリーが可哀想になり、プリシラは彼女を追いかけるのをやめた。
「冗談よ」
 プリシラが笑顔を柔らかく変えて、浴槽の床に元通り腰を下ろすと、エミリーも表情を緩めて、湯の中に落ち着いた。引っ込み思案の彼女は、自分の意志をはっきりと口に出せないことが多い。「いや」と口に出して、プリシラが気を悪くしないか、傷つけはしないかと、恐れているのだろう。それはエミリー自身が繊細だからに違いない。
 短いつきあいではないのだから、あまり気を使われると、逆に少々傷つくが、エミリーの性格なので、仕方がないと思うようにしている。
 エミリーが、兄弟子のセルヴィスの紹介で、プリシラたちのパーティーに加わった時は、プリシラはこれはだめだと思った。うまくやっていけそうにない類の女に見えた。
 小柄で華奢、淡い金色の巻き毛を持つ、色白の少女だった。大切に育てられた、箱入り娘だろうということは、一見して分かる。自己紹介をする彼女の声も細く、消え入りそうで、内気な性質なのはすぐに見て取れた。
 隊商の護衛、傭兵として、荒くれ男と強かな女たちに囲まれてきたプリシラが、今まで縁のなかった類の少女だった。むしろ彼女が妬み混じりに嫌う、苦労知らずのお嬢様である。
 魔術師が加わるというのは、冒険者にとって大変喜ばしいことだ。彼らの知識、技術、大学との繋がりは、遺跡探索には欠かせない。新しい魔術師の加入は、パーティーで決定したことなので、プリシラも自分の我儘で和を乱すことはしたくなかった。
 それでも、セルヴィスの後ろで、目を合わせることもできずに、俯きがちに一同の話を聞いている少女の姿を見ていて、いずれ彼女に苛立って、プリシラと彼女が衝突する日が来るのではないかと思った。
 幸いなことに、半年以上を経た今日まで、そんな事態は起こっていない。
 もしプリシラが、エミリーのおどおどした態度に我慢ができなくなり、怒鳴りつけでもしようものなら、エミリーはきっと泣き喚き、その他の男性陣は、プリシラを非難するだろう。場合によっては、パーティーを追い出されてしまうかもしれない。
 それなりに全員信用がおけ、腕も悪くない、今のメンバーを、プリシラは気に入っていた。まだ追い出されたくはない。
 短気ではあるが、隊商の護衛らしく、人付き合いを重んじている彼女は、まず自分から、苦手意識を押し殺して、エミリーに友好的に接した。
「女同士、よろしくね。何かあったら、何でも言って」
 必死の愛想笑いを浮かべて、猫なで声で少女に話し掛けるプリシラを、他の仲間たちは人さらいのようだと、密かに笑っていたが、幸い、プリシラは気づかなかった。
 予想通り、エミリーは、はにかみながら礼を言うだけに留まった。
 これではいけないと、プリシラが彼女に積極的に声を掛けるようにすると、内気なエミリーも、徐々に目を合わせて、笑顔を見せるようになった。
 そうすると、プリシラの方も、他の仲間には見せないような笑顔を、自分だけに見せるエミリーに、好意的な関心が向くようになる。
 内向的な彼女は、困ったり、頼みたいことがあっても、なかなか他人に言い出せないようだ。そこにプリシラが、「どうしたの?」と声を掛けると、心底安心した様子を見せる。面倒見のよいプリシラは、エミリーが無言の内に彼女を頼っているのが、嬉しかった。
 もしエミリーが、もっと人懐っこい、甘え上手であれば、これほど二人は親しくならなかったかもしれない。エミリーは誰でも頼れるのだからと、他の人間に彼女の面倒を見させただろう。
 パーティー内で他の人間とは、即ち男である。大概の女は、周囲の男の関心を集める女を、好きにはなれない。
 しかし、内気なエミリーがまず頼るのは、同性のプリシラであった。そのことが、正反対の二人を、難なく親しくさせていた。
 まだ若い少女の魔術師が加わると聞いて、「やっと女が入る」などど最も喜んでいた盗賊のシーマスこそ、蓋を開けてみれば、逆にエミリーと最もうまが合わなかったりするのだから、何事も案じているだけでは分からないものだ。 
 シーマスはエミリーのおっとりしたところが、とにかく気に障るらしい。エミリーの方は、相手が自分に好意を持っていないと分かると、萎縮してしまう。それを見てまたシーマスが苛つくという、悪循環であった。
 初めてエミリーがパーティーに加わった時は、『あの怖いお姉さんにいじめられたら、オレに言って』などと、プリシラをだしにして、エミリーに愛想のいいことを言っていたシーマスだが、事態はむしろ逆だった。
 当初、右も左も分からないエミリーに、シーマスがアドバイスをするような雰囲気ではあったが、切羽詰った場面となると、彼の言動は徐々にきつくなった。エミリーも頭はいいのだろうが、回転が早いかというと、少々微妙なところではある。同じ失敗を繰り返すこともあった。
 次から気をつけてね、とプリシラが言う前に、「何回同じこと言わせんだ!」と、シーマスの怒鳴り声が飛ぶ。エミリーはそれを聞いて、謝りながら泣きべそをかいてしまう。
 エミリーが加わって間もない頃は、可憐な少女が、ごろつきに恫喝されているようで、とても見ていられず、仲裁に入ったりしたものだが、エミリーがなかなか学ばず、同じ失敗を繰り返したり、指示されるまで動かないのは、事実である。
 冒険者に向いているとはとても言い難かったが、魔術師としての技術や知識は、年齢を考えれば、相応以上のものであるらしい。大体が魔術というものは、常識を越えた奇跡を起こすのだ。その修行も、半端なものではあるまい。身の回りの雑事など、学ぶ暇は無かっただろう。これからゆっくり学んで貰えばいい。パーティーの仲間たちも、そう考えているようだった。
 但し、いつまでもこのままでは困る。困るのだが、注意すると、すぐに恐縮してしまうエミリーには、誰もが忠告しにくい。罪悪感をかき立てられるからだ。
 ところがシーマスだけは例外である。怒鳴りつけてエミリーを泣かせたところで、全く悪びれていないらしい。
 女に優しい、リーダーのルークなどは、「どこに神経が通っているんだ」などと、いつも苦々しく感じているようだ。下半身と指先にしか通っていないのだろうと、プリシラは思っている。
 今ではそのシーマスは、他の仲間たちがエミリーに言いづらいことを、ある意味代弁している形になっている。言い方はきつい──というより、もはや罵倒であった──が、自分で考えて動いて欲しい、身の回りのことはある程度自分でできるようになって欲しい、意見があれば、自分から述べて欲しいというのは、全員がエミリーに望んでいることである。
 そんな事情もあって、最近のプリシラは、エミリーがシーマスに怒鳴られていても、庇わないようにはしていた。
 エミリーも意外に芯が強く、泣きながら謝っているのは相変わらずだが、弱音を吐いたり、パーティーを抜けたいなどと言い出すことは、今のところない。プリシラは増々彼女が気に入ってしまった。

 プリシラの悪ふざけが終わったと安心したのか、エミリーは再び湯の中で寛いでいる。
 彼女たちが浸かっている公共浴場は、古代遺跡をそのまま利用したものだ。千年以上も前の人間が、同じ建物で同じ湯に浸かっていたと思うと感動すると、先ほどまでしきりにエミリーが興奮していた。
 浴槽は広い。その気になれば、何十人という人間が浸かれるだろう。楕円形の大きな浴槽の中央には、壷を持った、人間よりひと回り大きな半裸の女性像がある。その周囲に四人ほどの少年、少女たちの像が傅いていた。これも古代の物だ。貴婦人の身支度を整える小姓といったところだろうか。
 壁は滑らかに塗装されている。湿気などで損傷はあるのだろうが、そのたびに村人や大学の人間が修復してきたようだ。おかげで残念ながら、かつて描かれていた絵は、塗り込められてしまったという。丸屋根の天井は高く、頂点には湯気を逃がす穴がぽっかりと空いている。そこから星空が覗けた。床にはモザイクで、湯に浸かる男女の図が描かれていた。古代では混浴だったらしい。奔放だった古代人の生活は、現代のプリシラたちには、どことなく淫靡に感じられる。
 浴場内は、丸天井の穴から差し込む星明りの他、壁にいくつかランプが下がっていた。真昼のようにとはいかないが、薄暗いというほどでもない。
 僅かに白く濁った湯の中に、エミリーの華奢な肢体が見える。色白の美しい肌だと、常々プリシラは羨ましいと思う。小柄で細身ではあるが、胸の膨らみは意外に豊かで、今にもこぼれおちそうだ。丸みを帯びた尻の形も美しい。
「エミリーさ~」
 自分とは正反対の、女らしさを凝縮したような少女を盗み見しながら、プリシラは口を開いた。
「どう? 好きな男とかできた?」
 尋ねると、少女はいつものように顔を僅かに強張らせ、首を振る。
「そんな人、いないよ」
「もったいないなー。エミリーだったら、どんな男でも振り向かせられるのに」
 プリシラは軽くため息をついて、天井を仰いだ。そのため、「そんなことないよ」と呟くエミリーの、自嘲めいた表情に気づかず、彼女のいつもの謙遜だと思った。
 エミリーは、男に惚れたことがないという。
 隊商の護衛隊の中で育ち、周囲の男たちと、数多くの恋愛をしてきたプリシラには、驚きであった。プリシラの初恋は、六歳の時である。エミリーと同い年の頃は、丁度王都に来たばかりで、彼女の人生の中でも、最も多くの恋の花が開いては散っていった時期であった。
 可憐で愛らしい容姿なのに、十六年間、男との恋愛を楽しんだことがないなんて、勿体無い。
 いずれ恋愛をするなら、早くから男という生物に慣れておいた方がいいというのが、プリシラの持論である。エミリーのようなお嬢様でも、こんな商売をしていれば、碌でもない男と知り合う機会もあるだろう。そんな人間に引っかからないよう、見る目を養っておかなければならない。
 プリシラはエミリーにそう説明しながら、己のかつての恋愛遍歴──仲間の男たちは密かに武勇伝と呼んでいる──を話して聞かせた。無口なエミリーは、時折相槌を挟みながら、興味深そうに聞いていた。生涯独身を誓っているわけでも、恋愛に全く興味が無いわけでもないらしい。
 プリシラはかつて自分がつきあいがあった男たちの内、比較的ましな人間を見繕って、エミリーに恋人候補として紹介したこともあるが、あまり彼女の関心を引かなかったようだ。
 残念ではあったが、同時に安心もした。男に心をときめかせ、頬を染めながら胸の内を語るエミリーを見たいような、そんな日が訪れて欲しくないような、複雑な気持ちであった。今のところ、プリシラに最も心を開いているエミリーが恋をしたなら、その男に彼女を取られてしまうような、妙な気分である。
「エミリーって、どんな男が好きなの?」
 温かな湯の中で、ふくらはぎをさすりながら、プリシラは再び口を開いた。
「どんなって……そんなの無いけど」
 エミリーは普段と同じく、はにかんで答える。
「そろそろ、あるでしょ。こんな人といると安心できるとか、こんな男ならカッコイイと思うとか」
「うーん……。優しそうな人かな」
「もー、何ソレ。つまんない。そんなの当たり前だって。他に無いの? 背が高い方がいいとか、頭いい方がいいとか、むしろバカの方が操りやすいとか……」
「そんな、条件みたいなものは無いの。私のことを好きになってくれるなら……」
「その考え、ダメ! そんなこと言ってると、口がうまいだけの男に、いいようにもてあそばれるだけなんだから。こっちから選んでいかなきゃダメよ」
「うん」
 言い募るプリシラに対し、素直に頷くエミリーを見て、また失敗したと思った。エミリーは無口で聞き上手なので、こちらが話すと、それに聞き入って、自分の意見を話さなくなってしまう。彼女の話を聞きたい時は、こちらが口を閉じなければいけないのだが、考えながらゆっくり喋るエミリーがもどかしく、プリシラはつい自分で喋ってしまう。
「ねえ、エミリー」
 プリシラは姿勢を変えて、彼女を正面から見つめた。大きな、混じりけの少ない、青い瞳が愛くるしい。
「いっつも言ってるけど、何かあったら、何でも言ってね。あたし、あんたより知識も教養も無いけど、恋愛だの世間だののことは、ちょっとは経験があるから、役に立てることもあると思う。エミリーは、なかなか他人に言い出せないで抱え込んじゃうけど、溜め込むのは良くないよ」
 エミリーは眉を寄せ、泣き笑いのような表情を見せた。
「ありがとう、プリシラ」
「それから、いつも毅然としてないとだめよ。ぼんやりしていると、変な男につけこまれたりするから。寛ぐのは、彼氏の前だけ。その為にも、早く恋愛して欲しいな」
「うん」
「この前だって、変な酔っ払いに絡まれたでしょ? 隙があると、あんなのに狙われるのよ。特別な男が一人いれば、その男の為に、他の人間に隙を見せようなんて思わなくなるから。彼氏に大事にされるとね、自分自身を大事に思えてくるもんよ」
 プリシラの言葉を聞いたエミリーの瞳が緩み、唇が柔らかく微笑みを刻んだ。
「うん、分かった。……プリシラって、やっぱりすごいね」
 正面切って真顔で褒められ、逆にプリシラはやや照れくさくなった。
「すごくはないけど……。とにかく、これと思うような男を見つけたら、すぐ教えてね。あたしが会って、大丈夫かどうか、しっかり確かめてみるから。あと、この前みたいに、男に妙な真似された時もね。泣き寝入りしちゃだめだよ」
「……うん」
「エミリー、おとなしいから。でも嫌なことは嫌って、はっきり言わないと、バカはどんどんエスカレートして、取り返しのつかないことをしでかすからね」
「…………」
「相手に言えなかったら、あたしに言って。あんたの代わりに、顔の形が変わるぐらい殴ってやるから」
「……うん。あ、私そろそろ出るね」
 俯きがちにプリシラの口上を聞いていたエミリーは、浴槽から立ち上がった。
 プリシラはこのぬるめの湯で、もう少し寛いでいきたかったので、手を振ってエミリーを見送る。
 去っていく彼女の、白い豊かな尻を見て、僅かにどきどきと胸が弾んだ。プリシラは女同士の恋愛に興味を覚えない性質であるが、エミリーの後姿は、可憐ながらどこか肉感的だ。自分が男であれば、まず背後から襲いかかっていたに違いない。男でなくてよかったような、残念だったような、不思議な気持ちであった。

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