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王都の冒険者たち」
第三話 女の聖地

第三話: 女の聖地 4

2010.04.15  *Edit 

 シーマスが目を覚ましたのは昼過ぎであった。
 昨日の朝から、プリシラとエミリーは、王都の北の村へと出かけている。
 二人抜けていれば、仕事の話が舞い込んでも、すぐに引き受けることはできないため、昨夜と今夜は、夕食時に集まることもないだろうとルークが男たちに告げたのだった。
 セルヴィスは例の実験のために大学に籠っているらしいし、ミクエルは遠方から来た修道院長のもてなしで忙しいようだ。丁度よい機会だった。
 シーマスは特に用事らしい用事も無かったが、たまには一人で夕食を食べるのも悪くないと思い、近くの食堂に出かけていった。旅籠の地階のその食堂で、運が良ければ一人旅の女などと知り合えるかもしれないなどという、ちょっとした期待も持ってはいた。街を案内すると言って、仲良くなれるかもしれない。
 しかし結果は空振り以下だった。食堂で運悪く、遠出から戻ったばかりの知り合いの冒険者に会ってしまった。シーマスにとって、盗賊ギルドの先輩にあたる。
 彼は強引に、シーマスを自分のパーティーのテーブルに招き、彼らの冒険譚を延々と語って聞かせた。先達の話は勉強になることも多いが、すっかりできあがっていた彼らの話は、荒唐無稽と言うほかなく、ほんとかよと疑いたくなる逸話ばかりであった。
 冒険者でもある、ギルドの先輩を無下に扱うわけにもいかず、シーマスは曖昧な表情で彼らの話に付き合い、魔物のように酒をあおり続ける冒険者たちから解放されたのは、真夜中過ぎのことであった。
 当然宿の入り口は閉まっている。彼は仕方なく、盗賊ギルドの酒場に入り込み、そこで夜明けまでごろ寝した。
 宿の寝台に戻ることができたのは、初夏の太陽が王都の家々の屋根の上に出る頃であった。仲間たちだけで占領している六人部屋では、ルーク一人がいつもの場所で高いびきをかいていた。セルヴィスもミクエルも、宿には戻らなかったらしい。
 あんな思いをするくらいなら、ルークと二人で淋しく夕食を食べて、早寝した方がましだった。
 後悔しながら、シーマスは寝台に倒れこみ、泥のように眠った。

 起床したシーマスは、階下の食堂に向かった。朝食は当然終わっているだろうが、そろそろ昼食を出してくれるはずだ。
 いつもの場所には、当然のように既に寝台にはいなかったルークが、一人で腰掛けている。
 食堂は閑散としていた。元々昼食時は人が少ない。昨夜の旅人たちは宿を発ち、今夜の旅人たちはまだ来ない。いるのはシーマスたちのように、ここを常宿にしている流れ者だけだ。
 それも初夏のこの時期は、宿の食堂よりも、露店で買った食品を、燦々とした日差しと喧騒を楽しみながら、広場などで食べる者が多い。他の時期にましてひと気が無かった。
「おはよう」
 シーマスの姿を認めると、ルークは穏やかに微笑んだ。
「早くねーけど」
 無愛想に呟くシーマスを気にせず、最も付き合いの長い男は、苦笑いを見せただけだった。
 ゆうべ酒の量を節制したおかげで、二日酔いにはならなかったが、いっそ彼らに付き合って大量に飲み、同じくらい馬鹿になれた方が楽しかったかもしれないなどと思う。
「昼メシは?」
「いや、まだ。一緒に食おうと思って、一応待ってたんだ」
 短く尋ねると、嫌味のない声でルークが答えた。
 ルークとシーマスは、性格はほぼ正反対といっていいが、以前のパーティのいた時から、何故かうまが合った。口に出すことこそ無いが、互いの腕を認めてもいる。
 シーマスは現在のパーティ仲間のことを信頼しているし、気に入っている。だがこうして、一対一で差し向かいで食事をするとなると、誰が相手でも、どこか身構えてしまうだろう。しかしルークとの間には、気遣いや遠慮はほとんど感じることがない。気楽であった。
 人が少ないせいか、給仕の姿がない。シーマスは席を立ち、カウンターまで行って、主人に飲み物と食事を頼んできた。
「セルヴィスたちも帰ってこなかったのか?」
「うん。昨夜は一人でメシ食って、一人で寝たよ。たまにはいいな」
 飲みかけの麦酒に口をつけて呟くルークを、シーマスは羨ましいと思った。昨夜の彼に比べれば、その方がよほど良かっただろう。
「それにさ」カップをテーブルに置いて、ルークは寛いだような溜め息を落とす。「なんかこう……。こういっちゃなんだけど、プリシラがいないと、ちょっとのびのびするな」
「だよな~」
 頷くシーマスも思わず顔が緩む。やはりルークも同じ気持ちであったか。
 プリシラは大切で得がたい仲間であるが、言動が威圧的である。また本人は奔放であるくせに、男たちが何か弱みを見せたりすると、すぐにからかってくるので、隙を見せられない。
 シーマスとしては、ついでにエミリーがいないことも、心が軽い要因ではあった。
 はずみと偶然で、彼女とは二度寝ている。エミリーがシーマスに惚れているとは思えないし、たとえそうだとしても、シーマスは応える気などない。
 パーティ仲間でないのなら、適当に遊んでもいいのかもしれないが、互いに命を預けることもある仲間である。不誠実な真似はしたくなかった。
 ならば最初に、宿の寝室で、寝台から突き出た彼女の尻を見つけた時から、我慢すればよかったのだが、起こってしまったことは仕方ない。
 二人とも、その時のことも、ギルドの研究室での秘め事も、無かったかのように振舞っているが、どうしても態度はぎこちなくなった。     

 一昨日の夜、エミリーが友人のシャムリーナと二人で、神殿遺跡を見に出かけると言った時、シーマスは珍しく好奇心をかきたてられた。
 古代で女たちが守っていた、男子禁制の秘密めいた神殿。美しい──というのはシーマスの想像だが──、清らかな巫女たちがそこに住まい、どんな儀式を執り行っていたのか。
 エミリーと違い、想像力が非常に俗的な方向に鍛えられている彼は、美貌の乙女たちが、男のいない神殿で、神の名前を唱えながら半裸で絡み合う姿などを思い浮かべていた。
 しかも村では、その伝統が、形を変えつつも、現在まで続いているという。もしかすると現代でも、そんな儀式の名残りがあったりはしないだろうか。
 ぜひ見たい。見てみたい。
 しかも、エミリーを遺跡に誘ったシャムリーナは、彼も何度か会ったことがあるが、とても可愛い少女である。
 小柄な彼女は、雰囲気こそエミリーと似ているが、性格はかなり違うらしい。さばけていて、少しばかり生意気そうだ。彼は鼻っ柱が強いくらいの女が好きだった。
 エミリーも、可憐で実は豊満な容姿だけ見れば、シーマスにとっては非常に好ましいのだが、あの内向的な性格がどうも苛立たしい。
 しかしそのエミリーの動作を我慢さえすれば、彼女たち二人と彼一人の旅は、極めて楽しいものになりえないだろうか。
 エミリーが話していた通り、北街道には大きな危険は少ないが、少女二人の旅では心もとないだろう。夜営の時など、二人の少女が頼るのは、男の自分に違いない。狼の遠吠えなど聞こえてこようものなら、少女たちは彼に身を寄せてくるかもしれない。
 楽しい夜になりそうだ。
 エミリーたちを心配したルークも同行するとしても、それはそれでいい。エミリーの面倒をルークに任せて、シーマスはシャムリーナに近づけるいい機会だ。
(よし、オレが行ってやろう)
 シーマスが慈善精神を装った振りをして、エミリーに声をかけようとした瞬間、プリシラが先に、エミリーに同行すると声を上げてしまった。
 プリシラが一緒に行く。
 それだけで、シーマスの楽しい旅計画は、音を立てて崩れ去った。
 少女二人とシーマスだけなら楽しいだろうが、そこにプリシラが入れば、女三人と男一人という、悲しい力関係に一変してしまう。狼の遠吠えが夜に聞こえてくれば、身を寄せられるどころか、『様子を見て来い』とプリシラに蹴り出されるのは確実である。他にもさぞかしこき使われるだろう。
 彼は膨らんだ期待を押し潰しながら、こっそり嘆息した。


「お待たせ」
 シーマスがルークと、どうでもいいようなことを話していると、明るい女の声が響いて、目の前に酒が入ったカップと、蒸し料理を乗せた皿が音を立てて置かれた。結構な勢いでテーブルに着地したカップから、酒の滴が跳ねる。
 乱暴な給仕女だ。
 シーマスは軽い非難を込めて、料理を持ってきた女を見上げた。
 初めて見る娘だった。まだ若い。十五、六歳だろう。リスを思わせる小作りな顔に納まった、黒い大きな瞳が印象的な、可愛い娘だった。
 だが彼女は、シーマスの視線に気づく前に、ルークの顔を覗きこんで声を上げた。
「あら、あなた。今日も昼間からここで飲んでるの?」
 顔を上げたルークは、微笑みながら苦笑いを浮かべて答えた。
「いや、くだ巻いているわけじゃないよ。午後は出かける」
「やーだ。無理して用事作らなくたっていいわよ。ずっとここで飲んでてもいいのよ。うちは儲かるしね」
 爽やかな、媚のない声で娘は言い、慣れた仕草で片目をつぶって見せると、慌しくすぐにテーブルを離れていった。
「誰、今の? 知り合い?」
 シーマスが尋ねると、ルークは軽く肩を竦めた。
「新しく入った給仕娘らしい。昨夜俺が一人でメシ食ってたら、淋しい男だと思われたみたいで、気を遣って忙しい中、何度も話しかけにきてくれたんだ」
 またかと、シーマスは平静を装いながら、内心苦々しく聞いていた。
 長身で男前のルークはもてる。あの男嫌いのエミリーでさえ、ルークには心惹かれているようだ。無理もない話だが、側にいる身としては、あまり面白くない。
 しかし一方で、簡単に心を許さないルークに興ざめする女たちに、シーマスが声をかけると、あっさりとなびいてしまうことも稀にあった。大抵の女は、男を追いかけ続けられるようにはできていないようだ。近づいてくる男を待つ方が楽なのだろう。
 言ってみれば、ルークのおこぼれにあずかっているようなものだが、今のシーマスはそれを非常に前向きに考えるようにしていた。プライドにこだわっていては、女などと付き合えない。ルークがいい例だ。
 それにしても、昨夜、気まぐれなど起こさずに、ルークとここで夕食を食べていれば、今の可愛い給仕娘と仲良くなれたかもしれなかったのだ。プリシラたちがいないので、彼女たちの目を気にすることなく娘を口説けたはずだ。つくづくゆうべは折り合いが悪かった。
 だがまだ遅くはない。プリシラたちが帰るのは、早くても明日の夜だ。今夜一晩、機会はある。
 蒸し鶏がうまいと話しながら料理を頬張るルークに生返事を返しながら、シーマスは食堂を行き来する、敏捷な給仕娘の姿を目で追った。

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