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山間の城の物語」
第一章 山間の城

2.宴の間 (1)

2010.06.24  *Edit 

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2.宴の間

 芳醇な香りがふわりと広がり、鼻腔を柔らかく満たす。
 これを神の血に喩えた詩人がいたが、天才で無ければよほどの皮肉屋だ。名前は忘れてしまった。
 葡萄酒を注ぎ終えた侍女は、何か言いたげにレジーナを一瞬見つめたが、すぐに隣の士官の元へと動いた。
 銀の杯に注がれた葡萄酒は、この山間の領地で取れる、この近辺でも極上として知られる一級品だ。赤い酒は濃厚な香りのものが多いが、これは果実そのもののような、軽く瑞々しい匂いを放つ。それでいて、口に含むとこくがある。何度近隣の貴族や王に献上したか分からない。古くから続く畑を与えられた農家の人間が、一年中丹精込めて世話をした葡萄から生まれる。
 それを侵略者たちに振舞わなければならないなんて。
 苦々しく葡萄酒を見つめていると、横から伸びてきた手が杯を取り上げた。隣に立っていたグレンは、代わりに自分の持っていた杯をレジーナの手に握らせる。
「……毒殺を警戒してるの? 意外に小心なのね」
 精一杯の皮肉を込めて言うと、グレンは目元を緩ませた。
「お前がおとなしく降伏を決めたからと言って、配下全員が同じことを考えるとは限らないだろう。バカはどこにでもいる」
 レジーナは苦笑いを浮かべた。
 彼女はそこまで考えていなかった。即時降伏という自分の決断が軽いものではなかったことを城内の女官や侍従たちは知っている。それを棒に振るような無用の混乱を起こす人間がいるはずはない。
 戦況を逆転するには、司令官と士官たちを始末するしかないが、簡単に成せることではないし、失敗すれば全滅の危険がかかっているのだ。レジーナの指示を待たずに、部下たちが勝手に司令官の暗殺を試みるとは信じていなかった。
 だが、グレンは違うのだろう。常に自分の部下の動向を疑っているということだ。
 レジーナには、信用できない部下と共に戦場に出ることなど考えられなかった。さぞかし心労が溜まるだろうと想像するのだが、目の前の男はそうではないようだった。
 住む世界が違う。平和な山間の城と陰謀と戦乱に満ちた大公国では、それも当たり前かも知れない。

 葡萄酒が会場内の全員に行き渡った頃を見計らって、グレンはレジーナの背を押し、大広間の壇上、主賓席に上った。普段は夫である副伯が立つ場所だ。そう思うと再び屈辱に肩が震えた。
 壇上から広間を見渡す。
 この城で最も広い部屋とはいえ、士官たちと城内の人間のほとんどが顔を揃えると、やや窮屈だった。主賓席の正面には大きな木戸が開け放たれ、美しく手入れをされた城の中庭が見える。もう少し暖かい時期なら、外での宴会も良かったかもしれないが、さすがに夜の戸外に出るには少々寒い。 
 中には樫の長テーブルが三台ほど並べられ、士官たちに席と食事の用意がしてある。いずれも二千の軍勢の中隊以上を率いる者たちだ。ここにいる全員を一網打尽にできれば、状況は好転するかもしれない。
 今からでも侍女に、食事に薬を盛るように命じようか。レジーナは一瞬考えた。
 だが、すぐに諦める。「自分を殺したところで、公国軍から代わりがやってくるだけだ」というグレンの言葉を思い出したからだ。この軍勢を撃退したところで、公国軍は圧倒的な兵力を持っている。報復を兼ねてさらなる軍勢を送り込まれるだけだ。次は不意を突くこともできない。完膚なきまでに叩きのめされるに違いない。
 世の中には圧倒的な強者がいて、大抵の人間はそれに牙を剥かれた時、従うか蹂躙されるしかない。その強者すら、全てを自分の思い通りにできるわけではないだろう。
 大公にしたところで、家族、相続、そして王国や他の諸侯との確執。様々な火種を抱えているはずだ。この小さな副伯領を通って伯爵領に攻め込むのも、それらによって追い込まれた末の選択かもしれない。
 何物にも縛られず、頓着することなく、自分の望むがままのことができる人間などいない。それは恐らく言葉ひとつで無から有を生み出せる神だけだ。
 この隣にいる男にしたところで同じだろう。レジーナはそう考えた。そうでなければ自分だけが不幸を背負い込んでいるような、ねじれた絶望感につぶされてしまいそうだった。

「諸君」
 グレンが声を張り上げると、互いに話していた士官たちは即座に口をつぐんだ。余程恐れられているのだろう。
「先ほど私とこの副伯夫人の間で、正式に停戦が決まった。副伯夫人は寛大にも城内に君たちを、兵舎に君たちの部下を逗留させてくれることを約束してくれた」
 士官たちから感嘆の声があがる。何もかもが白々しく芝居じみていて、虫唾が走った。グレンは続ける。
「最も望むべき平和的解決だ。まずはそれを喜びたい。そして、ご主人が留守の間に英断を下した夫人に感謝を」
 グレンの言葉に、士官たちが再び感嘆の声と拍手を送った。
 あまり仏頂面でも具合が悪いかもしれない。拍手に応えてせめて微笑もうとしたが、顔がひきつってうまく表情を動かせなかった。
「優秀かつ高潔な公国軍の士官である諸君は分かっているだろうが、平和的停戦が決まった以上、副伯領の領民、それから夫人と女官方、その他の侍従や召使いに至るまでの城内の人間を、大公国の民同様に君たちは保護しなければならない。
 間違っても危害を加えるような真似は謹んで欲しい。そして、諸君の部下にもそれを徹底させること。万一不祥事の話が私の耳に入れば、本人は無論のこと、上官である君たちにも相応の処分を下す」
 グレンの言葉は、レジーナが想像していた以上に真摯に語られた。広間にいる士官たちの顔を見る限り、彼らも真面目に受け止めているように見える。
 士官たちの周囲には侍女たち、執事と侍従たち、給仕を含めた召使いのほとんどが顔を揃えていた。彼らも敵方の司令官の丁寧な振る舞いに胸をなでおろしているようだった。
「ほれ、次。お前の番だ」
 グレンはレジーナの耳元で囁き、背中を押した。その一瞬、先ほどの応接間でのひと時が思い起こされた。肩が震える。
 彼女はまだ下着をつけていなかった。応接間からそのままここに来たからだ。着替えたいと部屋に戻ろうとしたが、許されなかった。淡い緑の綿のドレスも、右の腰に切れ目が入ったままだ。襞に隠されて見えないとはいえ、居心地は悪い。
「公国軍の皆様」レジーナは気持ちを切り替えて、冷静な声を出した。「司令官のグレン様には寛大な処置を約束していただきました。小さな領地にできることは限られると思いますが、皆様が居心地良くなるよう、可能な範囲で努めさせていただきます」
 レジーナの声は女にしては低いが、よく通る。耳に心地よい声だ。士官連中も好感を持ったらしい。
 グレンは内心、胸を撫で下ろした。この気の強い女が土壇場で何をするか分からなかったからだ。誇り高いが、やはり馬鹿ではないということか。
 自分より一歩前に進み出ている女を後ろから見つめる。女にしては長身の、均整の取れた肢体。着ているドレスは襟ぐりが大きく開いている、この地方では主流のもので、背中も肩甲骨の辺りまでむき出しになっている。ほとんど贅肉の無い、美しい背中だ。普段はあまり陽にさらさないせいか、眩しいほどに白かった。
 その下の胴体の部分が細くくびれ、さらにそこから下は襞を取ったドレスの裾が広がっている。見ただけでは膨らんだ裾に隠されて、体型は分からない。
 グレンはそのドレスの裾をこの場で捲り上げてやりたい衝動にかられた。隠されていた下半身が露わになる。絹のストッキングを穿いた脚と、下着をつけていない尻と秘部が大広間中の人間に晒されるのだ。想像するだけで自分の下半身が熱くなった。
 レジーナの演説に意識を戻す。彼女は自分の部下たちに話していた。
「このように寛大な対応をしていただいたのですから、私たちも相応に応えなければなりません。副伯の留守で、皆さんにも思うことはあるでしょうが、どうかよろしくお願いします。何かあれば、私に伝えてください」
 グレンは彼女の横に再び並び、背中に手を添えた。わずかにレジーナが身じろぎする。
 彼はレジーナの言葉を引き継ぐように、侍女たちに言った。
「城内の皆さん、私からもよろしくお願い申し上げます。お聞き及びでしょうが、私と夫人は旧知の間柄です」
 何が旧知だ。
 吐き捨てそうになったレジーナは、背中に添えられていたグレンの手が、撫でる様に尻に下ろされたことに気付いた。
 背中に触れるだけでも馴れ馴れしいと思っていたのに、壇上で演説の途中に尻に触れるなどとは、何事だ。怒りを込めて男を睨みつけるが、頓着した様子は無い。相変わらず、広間の方に向かってどうでもいい話を続けていた。
「思えばレジーナ様とお会いした時には、夫人はまだ少女でした」
 大きな手が左の尻の肉を掴む。反動で彼女の肩が少し浮いた。僅かに体が前に傾いで、左手に持った葡萄酒の香りが濃密に鼻に入り込んだ。素肌がドレスの布地とこすれて、下着をつけていなかったことを改めて思い出す。
「それが副伯と結婚したとは驚きでした。正直なところ、かつての彼女はお転婆娘でしたから」
 広間から静かな笑い声が漏れた。士官だけでなく、城内の人間も口元を綻ばせている。
 だがレジーナはそれどころではなかった。グレンの手は這うようにゆっくりと尻を撫で回し、両方の肉を掻き分けるようにして、彼女の脚の間に触れようとしていた。
 主賓席は広間の端にあるが、壇の横──彼らの斜め後ろには護衛のつもりか、士官の一人が控えている。彼らの眼前にいる士官たちと侍従たちには見えなくても、背後に立っている側近の男にはグレンがレジーナに何をしているか、見えているはずだ。
 レジーナは首をできるだけ動かさないよう、横目でその士官の様子を伺った。彼は主人の行動に驚いた気配も止めるような仕草も無く、かといって体をまさぐられているレジーナを面白がっている様子も無かった。ただ、何事も無いように、葡萄酒の銀杯を持ったまま、軍人らしい直立不動の姿勢で前を見ているだけだった。
 グレンの指がドレスの布地の上から、下着を穿いていない、彼女の秘部に触れる。脚を固く閉じても、両尻の間にはどうしても隙間ができる。グレンの指はそこにねじ込むように入り、性器の入り口を探るように動く。
 背後の士官が気づいていない訳はない。彼は自分の主の行動を黙認しているのだ。
 一見、華やかな晩餐会に見えるが、招かれた客は客では無い。敵であるグレンの忠実な部下たちなのだ。改めて思い知ると同時に、どっと恐怖が押し寄せた。
 例えばここでグレンが気を変えて、レジーナの服を剥ぎ取り、この会場で堂々と陵辱したとしても、士官たちは止めようとはしないだろう。騒ぎ立てる侍女たちを追い出すか──ことによっては、自分たちも侍女たちに不埒な真似をするかもしれない。
 これは芝居だ。グレンの厚意によって演じられている、自分たちに取ってはありがたい芝居。ことの本質は変わらない。この城は占領され、自分たちは彼らに属するものに成り下がったのだ。略奪を禁じたのもグレンのありがたい気遣いに過ぎない。
 お前は俺の機嫌を取らなければいけない。
 先ほどのグレンの言葉が思い起こされた。

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