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山間の城の物語」
第一章 山間の城

5.醒める (1)

2010.07.18  *Edit 

cnf_castle

5.醒める

 涼やかな空気の流れを感じて目を覚ました。
 右腕がだるい。背を向けて横たわる女の体の重みを支えているからだ。
 小さく開けられた窓からは、清澄な若い陽光が差し込んでいる。もう朝のようだ。室内のあちこちに灯された蝋燭は、そのほとんどが燃えつきかけていた。
 鼻の奥が冷えてむずむずした。夜は暖かかったのに、早朝から朝にかけての方が冷える。
 グレンはそっと右手をレジーナの体の下から引き抜いた。軽く痺れている。
 女が目を覚ます気配はない。寝息を立てて眠り込んでいるようだ。背中の中頃まで伸びた蜂蜜色の髪をなんとなく痺れた指先で弄ぶ。公都の貴族娘と比べれば、手入れが行き届いているとは言いがたいが、豊かで清潔な髪だ。
 女戦士のほとんどは、戦いの邪魔になる髪を短く切っていたが、彼女は昔から伸ばしたまま、常に束ねているか三つ編みにしていた。かつて、ほどいたところを見たい、と言っては相手にもされなかったことを思い出す。こんな形──彼にとって最も望ましい──で、それが叶うとは思ってもみなかった。昨夜の彼女はまったく素晴らしかった。 
 そのままひとしきりグレンは物思いに耽った。目覚めてしばらくの間、まどろみと覚醒の間をさまよいながら、思考を流れるままにしておくのは、彼にとって至福の時間だった。寝台から離れてから眠るまで、常にめまぐるしく活動している脳が休まる。隣に女がおとなしく眠っていれば、尚言うことはない。
 ふたりの体温でぬるく温まった掛け布の中、時折うとうとしながら、窓から差し込む朝日が徐々に色味を増してくるのを眺めていると、レジーナがわずかに身じろぎして、息を吐いた。
 起きるのかと思ったが、首をゆっくり横に振りながら、何かぶつぶつ言った後、また寝息を立て始めた。
「おい、何だって?」
 反対を向いているレジーナの肩を掴んで、こちらを向けさせると、彼女は大袈裟なほどに眉を寄せて、髪が跳ねるくらい激しく首を振った。口の端に涎の跡がある。まだ半分寝ているのだろうが、とにかく嫌がっているらしい。
「うるさい」
 彼女は目を閉じたまま、いやにはっきりした声でそう言うと、何か咀嚼するようにもぐもぐと口を動かした。そしてまた静かに寝息を立て始める。
「なに食ってんだよ……」
 赤子や動物のような仕草に、ついグレンは吹き出した。
 かつてのじゃじゃ馬とも、昨夜の貴婦人の皮をかぶった娼婦とも、また違う姿だった。昨日の夕方は彼を殺そうとしていた女が、一夜明ければ隣で、全裸に高いびきで涎まで垂らして豪快に眠っている。それだけ自分に心を許したと思うのはまだ早い。単純に無神経なだけだろう。
 不意に邪気の無い愛おしさを感じ、口を半開きにしたまま眠る女のこめかみに口づけた。レジーナは目を覚ます気配も無く、規則正しい寝息を立てている。


 さざ波のように、徐々に穏やかに押し寄せる意識を手繰り寄せる。
 体に違和感を感じた。流浪の生活をしていた頃は、それが直ちに危険に直結する。眠気を振り払って、武器を手に飛び起きたはずだった。
 だが今寝ているのは、自分の寝室だ。身に危機が迫るはずはない。レジーナは夢うつつの中、波が自然に高まるのを待った。

 目を開けると濃い褐色の髪が見える。時折それが顎の下を撫でている。胸のあたりにも何かが触れている。
 瞬く間に完全に目が覚めた。
「朝っぱらから何してるのよ!」
 驚いたレジーナが、グレンの頭をどかそうと手をかけると、彼女の乳房に顔を埋めていた男は、すかさずその手を掴み、顔をあげた。
「なんだ、挨拶も無しに」
「挨拶が無いのはそっちでしょ」
 声をさらに張り上げようとしたが、起き抜けの独特の口臭を自分で感じ、彼女は口を閉じた。
「俺は挨拶したって。お前が寝言言ってばっかりで聞いてなかったんだろ」
「寝言なんか言わないわよ」
「言ってた言ってた。めちゃめちゃ喋ってた」
 グレンは低く笑うと、再び彼女の胸に舌を這わせた。震えが走る。
 小さな窓から差し込む光は頼りないが、月光などではなく、凛とした朝の陽光だ。早朝という時間でもない。もう召使いたちは起きてとっくに働いているだろう。
「やめてよ、起きるんだから」
 焦燥にかられて、レジーナは横向きに向かい合ったグレンから身を離そうとしたが、掛け布の中で脚も絡められ、動けなくなった。
「起きるのなんかいつでもできる」
 訳の分からない理屈を呟きながら、彼は胸のふくらみの先端を舌先で撫でた。一瞬、呼吸も忘れる。男の口元からも、起き抜けの匂いがした。
 グレンの唇が乳首に吸いつく。
「うぅ」
 思いがけず漏れた声が、陽光に似つかわしくなく甘ったるい。
 彼女の声を耳にして高揚したのか、グレンは赤子のように乳首を吸い上げながら、さらに体を寄せてきた。腿に既に固くなった彼自身が押し付けられる。
 あっという間に顔に熱が上った。

 夢の続きを自分で紡いでいるようだった。
 昨夜の痴態は、夜の時間と揺らめく蝋燭の光が見せた幻のような手触りがあったが、今ここで繰り広げられているのは、どこにも逃げられない、朝日の中、紛れもない現実での情事だ。
 抱き締められる手が背中を撫でた。体が跳ねる。男の手はゆっくりと、触れるか触れないかのような動きで背中を下に撫で、尻に触れた。腰から尻にかけての辺りにそっと触れられると、自然に体が反れて、切ないため息が漏れた。
 昨日、応接間でそうしたように、グレンの手は両方の尻の間から、下着越しに彼女自身に触れた。
「なんだ、お前。いつの間に下着なんか穿いたんだ」
 指でそこをやわらかに探りながら、耳元でグレンは囁いた。今朝方、グレンに寝台に引っ張り込まれて、そのまま彼女を離さないので、寝台の中で苦労して穿いたのだ。
 だが、そんなことを長々語っている余裕などない。耐えるために余裕が無いのか、一刻も早く上ってくる快楽に身を任せたい為なのか、分からなかった。どちらも正しい気がした。
 男の指は下着を押し退けて、直接その内側に触れる。皮膚同士の摩擦は無く、昨夜の名残か、にじんだ愛液が既に異物を迎え入れようとしていた。
「お前こそ朝っぱらから濡らしてるじゃないか。もう金輪際下着は穿くな。どうせすぐ濡らして汚しちゃうんだからな」
 嘲笑とともにグレンの指がくねりながら、レジーナの中に入り込んできた。ささやかだが眩しいほどに清い朝の光の中、昨夜と全く変わらぬ快楽が満ちていく。体中、指先まで。
「あ……あっ」
 初めて応接間で触れられた時には堪えられた愉悦の声が、今はもう止められない。
 昨夜と比べてグレンは性急だった。レジーナの下着を剥ぎ取って、指を優しく蠢かせ、彼女の中心がほぼ完全に潤むと、掛け布が乱れるのも構わずに彼女の体を仰向けにし、脚を開かせてその上にのしかかった。
 猛った彼自身が打ち込まれる。彼女はそれを昨夜より遥かにすんなりと受け入れた。
「は……ああああっ!」
 熱の塊を押し入れられたような感触に、レジーナは体を反らして叫んだ。
「静かにしろよ、もー。しょうがねえなあ」
 聞き分けのない子供を諭すかの様に、グレンは苦笑いを浮かべたが、すぐに体を動かし始める。
 扉の外にはグレンの部下が控えているし、窓の外、庭では召使いたちが既に立ち働いている。そう思うと悦楽の声をあげるのにも背徳感を伴ったが、それが尚一層快感を煽り立てる。顔を振り、唇を噛み締め、組み敷いているグレンの腕を掴んで、声をこらえようとするほどに乱れていく。それでも時折ため息に混じって甲高い嬌声があがってしまう。
 どうしようもない。自分ではもうどうにもできない。グレンが自分の中で肉欲を放つまで、レジーナは快楽をただのぼりつめた。
 夫のことは思い出さなかった。


「おい、いつまで寝てるんだ」
 突然降ってきた男の声に、レジーナはがばっと身を起こす。すっかり昼の色に染まった陽光が直接肌を撫でる。いつの間にか窓は大きく開け放たれていた。
 朝にグレンと抱き合った後、再びまた眠ってしまったらしい。呆れた話だ。
 グレンの方はと言えば、とっくに起きていたらしく、既に身支度を整え終わろうとしている。
 レジーナは足元に脱がされた下着を見つけ、仕方なく掛け布を不器用に被りながら、それを身につけた。悔しいがグレンの言う通り、自分の愛液で汚れてしまったので、また新しいものを穿きたいが、寝台から全くの全裸で出るのは気が引けた。グレンと肌を重ねて、お互いの体は見てしまっているが、それでもなるべく肌は見せたくない。
 寝台から出ようと、グレンの様子を伺っていると、服を身につけ、腰に剣を佩いた彼は、きょろきょろと部屋を見回して何かを探しているようだった。やがて視線が一点に止まると、外套掛けの方へ歩いていく。彼がそこで拾い上げ、身につけたのはベルトだった。昨夜自分を縛めたものに気づき、一瞬、レジーナの思考は追憶に飛んだ。
 いつも自分が寝起きしている寝室。だがそこかしこに満ちて溢れた愛欲の余熱が残っている。


 二人で寝室を出るのはどうにも気恥ずかしかったが、勝手を知らないグレンを先に歩き回らせる訳にもいかず、かといってレジーナが先に部屋を出て侍従たちと話している間に、おとなしく部屋で待っているような男でもない。
 不承不承、グレンに続いて部屋を出る。
「おはようございます」
 案の定、部屋の前で見張りをしていた士官が、二人に挨拶をしてくる。
 気まずかったが、礼儀として挨拶を返さない訳にもいかず、目を伏せたまま、レジーナは小声で答えた。
「おはようございます……」
「おはよう、ご苦労だな」対してグレンは朝から声が大きい。「ちゃんと寝たのか?」
「一応は。宴会が夜中に終わってすぐに、朝まで寝ましたから」
 やや年のいった士官の一人が快活に答えた。
 では、今ここにいる見張りたちは、夜中の人間とは交代しているということだ。少しばかりレジーナは安心した。ゆうべ、グレンに「声が大きい」と口を塞がれたことを思い出して、一人で赤面する。夢中だったとはいえ、はしたなかった。
 その場を離れて、とりあえず執事や侍従たちが詰めている召使い部屋に向かう。
 二人で歩いているところをあまり城の人間に見られたくない。レジーナの足取りは重くなった。遅れがちな彼女の肩をグレンは遠慮無く叩いた。
「なにしょんぼりしてるんだ、お前。昼まで寝ておいて元気ねーな」
 当たり前だ。夫でない男に抱かれて、翌朝元気溌剌としている妻がどこにいる。いや、いるかもしれないが、自分はそういう類の女ではないし、夫への愛が失せた訳でもない。
 だが、ゆうべの自分の乱れ方と、今朝陽光の下で再び簡単に抱き合ってしまったことを思い出すと、グレンにそう言い返すことがためらわれた。言ったところで、グレンも喜々として切り返してくるだろう。
「……あんたは元気ね」
 皮肉をこめてやっとそれだけ言ってやる。
「そりゃあねえ。戦いも無しに、うまいもん食って、うまい酒飲んで、綺麗な女を抱いたんだ。これでがっかりしてたら何が楽しくて生きてるんだか」
 誰もいない廊下を歩きながら、馴れ馴れしくグレンは彼女の腰を抱き寄せた。
 戦利品扱いされたことに、一瞬、レジーナは肌が粟立つほどの怒りを覚えた。だが、息をついてすぐに気を落ち着かせる。そんなことは最初から分かっていたことだ。
 それにしても本当に元気な男だ。昨日は麓から一日この山城まで軍を連れて登ってきて、大した休憩も無しに、レジーナと会談を持った。宴会の後は、庭と寝室で二度彼女と抱き合い、朝また肌を重ねた。それからしばらく寝たとは言っても、レジーナはまだあちこちだるいというのに、グレンはぴんぴんしている。なんとなく癪だ。
「離してよ」無愛想にレジーナはグレンを押し退ける。「一度寝たぐらいで、自分の女扱いしないでくれる?」
「一度? 三回やったじゃん」
「うるさい!」
 どうもこの男と話していると、主導権を取られて気が緩む。気を張っていないと、取り返しのつかないことになりそうだ。レジーナは大きくため息をついた。

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