FC2ブログ

ココナッツ図書館 夜間書庫

スポンサー広告

スポンサーサイト

--.--.--  *Edit 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



登録させていただいているサイト様
「山間の城の物語」に投票
 ↑現在連載中の「山間の城の物語」が気に入ったら、クリックして投票してください。
「乙女の裏路地」へ 「にほんブログ村 小説ブログ」へ
fc2ブログランキングへ投票 「十八禁恋愛私花集」へ
*Edit TB(-) | CO(-) 

山間の城の物語」
第一章 山間の城

10.早咲きの花 (2)

2010.08.30  *Edit 

 庭園には誰の姿も無かった。ただ風だけが草花をそよがせて、ゆるく駆けていく。
 今日はマイラの見舞いもあって、領地回りは休んだが、兵舎の改築などを執事たちと話していると、あっという間に時間は過ぎた。
 遅い昼食を食べた後、やっと少し時間が空いたので久しぶりに広間から続く庭園に出てみた。
 元々レジーナたち夫婦の他は、執事や侍女頭といった、一部の召使いしかここには入れない。今のところ士官の立ち入りもグレンによって禁じられているので、人気が少ないのは当たり前かもしれない。
 少しゆっくりできそうだ。
 溢れる緑の葉の中を、レジーナは池の方へ回った。正午を回ってかなり経った今も、陽光の強さは衰えない。だが、池の周りでは、若葉を茂らせた木立が日差しを優しく遮ってくれた。
 レジーナは東屋のすぐ近くで、庭師が草地に寝転がっているのを見た。夜明け前から仕事をし、昼から夕方にかけては寝ている彼の姿を見るのは久しぶりだ。召使いたちから煙たがられている気難しい庭師が、レジーナは妙に気に入っていた。
 草を踏んで彼に近づくと、庭師は体を起こした。庭師ではない、グレンだった。
 知っていれば近づかなかったものを。何故こんなところに……。
 内心舌打ちをしたかったが、そこですぐに踵を返すのも子供っぽいような気がして、レジーナはゆっくりと彼に近づいた。
「なんだ、お前か。おどかすな」
 そう言いながらも、グレンは表情を緩めた。
「こんなところで何しているの?」
「昼寝だ。ここは今の時期、気持ちいいな」
「そうね。──邪魔したわ。ゆっくり寝てて」
 皮肉の混じらない穏やかな笑みを返すと、レジーナは戻ろうとした。背後からグレンの声が追ってくる。
「おい、久しぶりに会ったってのに。ちょっと話していけよ」
「久しぶりってほどじゃないじゃない」そう答えながらも、レジーナは足を止めて、男の方を振り向いた。「顔つき合わせてないのは昨日一日だけよ」
「そうか? 随分会ってない気がするけどな。……まあ、少し座れって」
 言われるまま、グレンの隣の草地に腰を下ろす。いつも着ている服の長い裾が、草地に広がった。
 グレンの方は、相変わらず無愛想ながらも、絡むこともなく素直に自分の言葉に従うレジーナを物珍しく思っていた。 
「今日はど田舎見物には行かないのか?」
「少し疲れたのよ」
 視線も合わせずに答えたレジーナに、グレンは軽い嫌味を返した。
「なんだ、やっぱり足腰弱ってるんじゃないか」
 次の瞬間、左の頬に風圧を感じた。
 咄嗟に顔を庇った左手を固いもので打たれた。一拍遅れて手を打った物を左手でそのまま掴み取ると、それがレジーナの脚だと気づく。
 互いに座ったままの姿勢から、蹴りを繰り出されたのだ。一昨日風呂場で食らったような、じゃれあいの延長とは違う、鋭い動きだった。手で庇うのが遅れれば、肉体と違って鍛えようのない頭部に命中した蹴りで、昏倒していたかもしれない。
 ひやりとした焦りが苛立ちに染まる。
 レジーナは地面に腰を下ろしたまま、やや倒した上体を背後についた両手で支え、グレンの頭に向かって高く脚を差し上げている。服の裾が大きく捲れて素肌の脚がほぼむき出しだ。
「危ねーな。どういうつもりだ」
 グレンは声の調子を低く落とし、掴んだレジーナの足首を引いた。服の裾がさらに落ちて、下着に包まれた彼女の脚の付け根まで覗ける。大きく広げられた脚の間に手を伸ばして、下着の上から強めに撫でた。
 レジーナの顔に目をやれば、悔しがるか恥らっていると思っていた彼女は、ほとんど表情を表していなかった。
 座ったまま、片足首を掴まれて脚を大きく広げているという、はしたなさを通り越して、情けないほどの格好だが、レジーナは泰然としていた。口元には薄笑いさえ浮かべているように見える。
「……無駄な体力使ってていいの?」 
 七日前、応接間で再会した時から、レジーナの感情を翻弄してきたつもりだった。今日、初めて彼は昔なじみの副伯夫人の態度に戸惑いを覚えていた。   
「お前、そんなこと言ってる場合か?」
 グレンは脅しのつもりで彼女の秘部を、下着の上から指でさらに強く押した。だがレジーナの顔には相変わらず、痛みも快楽も恐怖も表れていない。
「まあ、私はどっちでもいいんだけど。好きにすれば」
 レジーナの声は金属的に冷たい。感情を堪えている訳ではなく、自分の言動が本当に彼女の心のどこにも響かず、ただ目と耳に届いて表面を撫でているだけなのだとグレンも気づいた。
 この分では、例えこの場でいきなりレジーナを犯したとしても、彼女は抵抗もせずにただ脚を開き、面白くもなさそうにしているだけだろう。そして彼女の心には傷や憎しみさえ残らないに違いない。
 たった一日会わなかっただけで、女は変わる。グレンは昼間のニコラスたちの忠告を思い出していた。
 確かに、お互いにもう少し信頼関係が育つまで、夕食くらいは毎日共にした方がいいかもしれない。この女とそんな高尚なものが育つかどうかはさておき。
 グレンに対するレジーナの無関心は、次第に不審に、そしていずれ深刻な反感や害意に変わらないとも限らない。レジーナほどの身体能力を持ち、ある程度の侍女たちに影響力を持つ女を、反感を持たせたまま放っておくのは、少々危険だと彼は思った。

 今まで自分の中に深く入り込み、揺さぶっていたグレンの視線や声、触れる肌の熱さえも、何ひとつレジーナに伝えてこない。どこも波立たせない。
 どんなに強烈な日差しでも、池の水面を波立たせることができないのと同じだ。風ならば僅かな微風でも波紋を描かせることができるというのに、肌を赤黒く焼く高地の太陽も、湛えた水を動かす役には立たない。
 グレンのこめかみに向かって放った蹴りも、憎しみからではない。肌を這い回る小さな虫を鬱陶しいから潰すのと同じような気持ちだった。
 その脚を捕らえられ、服の裾が捲れて下着が見えるほど大きく開かされているというのに、恥じらいも怒りも感じない。冷え切った雪解けの湧き水のように、レジーナは平静だった。下着の上から陰部に触れたグレンの指も、違和感を伝えてくるだけだ。
 焦りこそ表れていなかったものの、グレンは今のレジーナに対して、確かに困惑しているようだ。今まで散々振り回された男が、自分の態度に狼狽しているのを見るのは小気味よかった。
 だが、それもどうでもいい。
「私も暇じゃないから、用が無いなら戻りたいんだけど……いい?」
 掴まれた足を振り払うこともせず、脚を広げた姿勢のまま素っ気無く告げると、グレンはレジーナの足首を放した。
 体を起こして姿勢を戻し、服の裾を直していると、横から伸びたグレンの両腕が、肩と背中に巻きついた。
 もう放っておいて欲しい。うんざりと溜め息をつき、レジーナはされるがままになっていた。

「レジーナ」
 グレンはレジーナの体を引き寄せた。胸に倒れこんだ彼女の上半身は細身ながら固い筋肉がついている。
「何そんなに怒ってるんだ」
 耳元で優しく囁くが、レジーナの小さな頭は微動だにしなかった。相変わらず冷たい声が返ってくる。
「別に怒ってないわよ」
「じゃあなんでいきなり人の頭蹴るんだよ」
「足腰弱ったなんて言うからよ。弱ってないとこを見せたかっただけ。脅かしたならごめんなさい」
 あれほど自尊心の高いレジーナが、口先だけの詫びをすんなりと告げている。グレンは数日前に小食堂の椅子で彼女と重なったことを思い出した。彼に貫かれてむせび泣くように謝っていた女とは、本当に別人だ。
「おい、もう。そんな拗ねるなって」
 グレンはさらに彼女を固く抱き締める。レジーナの緩いくせのある髪が頬を撫でた。
「別に拗ねてるわけじゃないけど。そう見えたなら悪かったわ。態度を改めるから、どういう風に振舞ったらいいか教えてくれない?」
「拗ねてんじゃん。なんだよ、もー」
 グレンはレジーナの両肩を掴み、一度顔を離した。視線が合う。レジーナは一瞬も目を逸らさずにグレンの瞳を見つめた。
「言う通りにするって言ってるのに、あなたこそ何が不満なのよ。大体私がどうしようが、司令官様には関係の無い話でしょ」
 グレンは空を仰いで小さく嘆息した。これは重傷だ。相当臍を曲げてしまったらしい。
「関係無いことないだろ。今の城主はお前なんだから」
「だからと言って、何の関係があるの? あなたは軍の面倒を見る。私は城内の人間の面倒を見る。それだけじゃない。細かいことは執事と副官に任せれば済むでしょ」
「も~、頼むよ。膨れるなってば。女官たちを呼びつけてることを怒ってるのか? あんなん、半分仕事だって。城内の人間が何考えてるか、普段話してるだけじゃ分からないだろ」
 我ながら白々しい言い訳だ。レジーナに鼻で笑われた。
「あらそう。じゃあ厨房のおばあさんや執事とも寝たら?」
「…………」
「別に今さらそんなこと怒ってないわよ」
「じゃあ何? 何か悩みでもあるのか? 力になってやるから話してみなさい」
 あまりにとぼけたグレンの台詞に、さすがにレジーナの胸にも小さな怒りが湧いた。悩みは山ほどあるが、原因は全てこの男に繋がっているのだ。力になってくれるというなら、今すぐに消えて欲しい。
 だが、苛立ちを表に出すことなく、レジーナは冷笑を浮かべた。
「司令官様に骨を折ってもらうほどのことなどありませんわ。お気になさらず」
「気にするよ」
 グレンは再び腕を伸ばして、彼女をその中に閉じ込めた。肩や背中がいささか痛むほどにきつく抱き締められる。顔が男の胸に押しつけられ、頬が歪んだ。木陰から疎らに差し込む陽光がグレンの体と腕で遮られて、ささやかで温かい暗闇に閉じ込められる。
「俺にとってはレジーナはいつまでも十五、六の女の子だよ。鼻っ柱ばっかり強くて人に頼ることをしないから、見てて危なっかしいんだよ」
 グレンはレジーナを抱いたまま、仰向けに草の上に倒れこんだ。暗闇が解かれて木の葉越しの日差しが控えめに降り注いでくる。グレンの体の上で抱き締められたまま横になるレジーナの鼻腔の奥にも、日光に温められた春の草いきれが入り込んだ。
 風はいつの間にか止んでいた。
 視線の先にある人工の池の水面は波ひとつ立てず、周りの木立を鏡のように映している。そこから、普段なら暑い夏の間しか感じられない、湿った水の香りが立ち昇っていた。木陰越しとはいえ、朝から強烈な日差しを浴びて、池の水はぬるく温まっているようだった。 

 横になったまま、髪を静かに撫でられる。
 身を起こしたかったが、グレンを意識しているようで、何となくためらわれた。レジーナは喉の奥で笑いながら呟いた。
「思い出したようなこと言わないでよ。二十五も過ぎればおばあさんなんでしょ」
「ほら見ろ、やっぱ一昨日のことを怒ってるんじゃないか」
 重なって横になったまま、グレンはレジーナの肩を引き上げ、近づいた額に口づけた。
「ババアとか飽きたとかなんて、嘘だって。お前だって俺にバカだの死ねだの散々言ってるだろ。せめて半分くらい言い返したかっただけだよ。ガキの頃からずっと好きだった女をやっと抱けたんだ。飽きるわけないだろ」
 頬にグレンの唇が触れる。
 昔、お互いに冒険者だった頃、グレンが彼女に想いを寄せていたはずはない。当時の彼女がグレンに誘われたのは食事と寝台ばかりだ。向けられていたのは愛ではなく欲望だったはずだ。
 薄っぺらな巧言を堂々と言い放つ厚顔には、怒りを通り越して呆れるばかりだ。だが触れ合っているだけで、何故それが脳の奥に沈んでいくのだろう。頭の表面は、それは偽りだと言い聞かせ続けていても。
「よく言うわ。何十人って女を毎晩とっかえひっかえ抱くのが夢だったんでしょ」
 まぜっかえすレジーナのこめかみに口づけながら、グレンは悪びれもせず微笑んだ。
「まあね。でもそれはそれ。お前は特別だよ。他の女が泣こうが喚こうが知ったこっちゃないけど、お前に臍曲げられると困るんだよ」
「何も困ることなんかないじゃない」
「俺が落ち着かないの。だから機嫌直せ。ね?」
 再び額に口づけを落とされた。
 あれほど頼んでも勅書も返してくれず、侍女たちにも手を出しているというのに、機嫌を直せもないものだ。 
 そう思うのに、少しずつ緩んだ隙間から、グレンの声が忍び込んでくる。自分だけが特別などということはない。グレンにとっては、ちょっと綺麗な女は皆同じだ。知っているのに。
 空々しい言葉の媒介になっているのが、触れ合う皮膚とそれが持つ温かさなのだろうか。理路整然と並べ立てる言葉よりも、肌を触れ合わせた方が届けたいことは伝わってしまうのだろうか。だとしたら、人間ってやはり動物だ。神は何故人間をもっと自分に近い、精神的な存在にしなかったのだろう。これでは二本足で立って、言葉を喋るだけで、他の動物と何も変わらない。
「昨日と一昨日、淋しい思いをさせたなら、悪かったよ」
 顔や髪に何度も口づけを落としながら、グレンは囁いた。
「なんであたしが淋しいのよ。やめてよ」
 思わず目を吊り上げて言い返すと、唇を塞がれた。

 顔をそむけようとすると、グレンの手がレジーナの頭に添えられて動かせなくなる。
 レジーナは目を閉じなかった。グレンも同じだった。二人は目を見開いたまま、唇を合わせていた。
「レジーナ……俺だって淋しかったよ」
 グレンの体の上に重なるレジーナの脚を、服の上からグレンが撫でた。
「嘘つくんじゃないわよ」
 身を引いて体を起こそうとするが、今度はその脚をしっかりとつかまえられる。
「嘘じゃない」
 じゃあ、侍女たちを呼びつけるのをやめてくれるの?
 そう聞きたかったが、言葉が出なかった。答えは分かっていたからだ。それほどまでにグレンの言葉が虚ろな偽りに満ちていると知っているのに、触れた部分から流れてくるものが、耳に響く言葉の真実まで捻じ曲げて、いいように解釈させようとする。
 グレンは抱き締めたレジーナの長身をずらし、自分の体の上でうつ伏せにさせた。ごつごつと硬いグレンの体の上でうつ伏せに重なるのは、居心地が悪かった。
 脚を撫でていたグレンの手が服の裾から中へ潜り込んでくる。
「ちょっと……こんなところで何してるの。やめて」
「今さら。前にもここでやったじゃん」
 動く手を振り払おうとしていると、グレンに低く笑われ、たちまち頬が熱くなった。
 初めて彼らを迎え入れた夜、この場所で立ったまま初めてグレンと抱き合った。若木にもたれて、夜の空気が触れる戸外で、夫以外の男を受け入れた。何もかもが初めてのことだった。
 腰を抱いていたもう片方のグレンの手が、レジーナの背中をゆっくり撫でた。羽のように軽く撫で上げられると、腰が微かに反れる。そのまま彼の手は首筋をゆるく撫で、耳を撫でて、軽く耳たぶを引っ張られた。
 再び髪に潜り込んだ手で頭を動かされ、唇が重ねられた。今度は舌が入り込んでくる。グレンの胸板を押して起き上がろうとしたが、脚と頭をしっかりと押さえられて、半端に腰が浮くだけだった。
「少しおとなしくしろ」
 グレンは裾の長いレジーナの服の下で、彼女の素脚を撫であげ、下着の上から尻を掴むように撫でた。 
 手を滑らせて腰にたどり着くと、下着の紐の結び目を解く。
「やめて」
 レジーナは服の上から、腰を探っているグレンの手を掴んで止めようとしたが、簡単に振り払われた。
「下着は穿くなって言っただろ」
 グレンの手がレジーナのスカートの中から、下着を抜き出した。そのまま草の上に無造作に放り出される。
 恥じらいに身をよじるレジーナの太ももは、グレンの股間が固くなっているのに気づいた。彼女の太ももがそこにぶつかると、グレンは顔を歪めた。
「蹴るなよ、痛い」
 下着を抜き取ったグレンの手が再び彼女の服の中へ潜る。太ももを掴まれ、グレンの体を跨ぐように広げさせられる。そこからゆるい波が体を昇って、レジーナの体は一瞬震えた。
 グレンに馬乗りになる格好だ。今すぐにでもどきたいのに、恥じらいとそれが呼ぶゆるい快楽が体を重くさせている。ここから身をもぎはなして立ち去るのは凄まじい力を使うだろう。それよりは男に身を任せている屈辱の方がまだ楽に思えた。
 そんなだから駄目なのだ。マイラの純粋さには足元にも及ばない。
 心のどこかで自分を叱咤する声が聞こえるが、甘んじてレジーナはそれを受けた。誰になんと罵られても、ここから抜け出すのはあまりに億劫だ。負け犬でいい。
 後頭部に添えられていたグレンの手が、耳と首筋を滑り、鎖骨を撫でた。再び口づけされると同時に、服の上から乳房を撫でられる。
 服の下に入り込んだもう片方の手は、再びレジーナの太ももを撫でると、今度は尻に移って何度も撫で回す。時折尻肉を揉むように力が込められるが、肉の薄いレジーナの尻は乳房のように掴むところがあまりない。
「尻はガキの頃と変わってないんだな」
 面白そうに笑うグレンを睨む瞳に力が入らない。
「小さくてかわいいよ」
「なによ、もっと肉つけろって昔言ってたじゃない」
 言い返す声が掠れそうになる。 
 数年前、行動をともにしていた頃は、グレンによく痩せすぎて男のようだとからかわれていた。どさくさに紛れて触ろうとしてくるグレンの手を振り払うのがいつも面倒だった。
 だが夜営で寝ている間に、この男はちゃっかり自分の体を撫で回していたのだ。そしてそれを思い出して自慰をしていた。先日この場所で交わりながら、グレンはそう言っていた。それを聞いた時に胸をかき乱したものは何だったのか。
「こっちについてるからいいの」
 グレンはレジーナの乳房を強く掴んで揺すった。それに合わせて肩も僅かに浮く。服の上からとはいえ、淫らな動きを見せているだろう自分の乳房を想像すると、下半身が膨らんでくるような気がする。
 さらに服の上からその先端をこすられる。弾けた快楽に目を閉じた。すぐに固く尖った乳首をグレンの指がつまみあげた。指先で弄ばれると、乳房も形を変える。
 グレンに乳房ごと軽く体を押されて、レジーナは上半身を少し起こした。両手を彼の脇について体を支えると、グレンが自分に覆いかぶさる時と丁度逆の体勢になることに気づく。
 鼓動が早まる。いや、もうかなり前からだ。

 服の中で指を滑らせ、馬乗りになったままの彼女の陰唇にそっと触れた。
 先ほど下着越しに触れた時には、乾いた摩擦と陰毛のごわごわとした手触りしかなかったが、今はぬるりとした愛液が指にからんで、皮膚の摩擦を感じさせない。
「レジーナ、俺に触られて感じてるんだ。嬉しいよ」
 見上げるレジーナの顔が赤らむ。瞳が潤んだ。気難しい奥方様はやっとご機嫌が直ったようだ。
 レジーナは陰核を愛撫しても敏感過ぎて痛いらしい。何度か裂け目を撫でて愛液を広げると、襞を掻き分けて彼女の体内へと指を潜らせた。
 レジーナの眉が寄る。半端に開いた唇から吐息が漏れた。膣内を探られることが大好きな彼女は、声を堪えているに違いない。いじらしい。
 さらに指を奥まで差し込む。温かく、柔らかく、ぬめっている。軽く指を折り曲げて内部を撫で回すと、地面に手をついたレジーナが腰を僅かにくねらせた。
 長い服の裾に隠され、自分の手が夫人のどこに触れているのか、外から見ただけでは分からない。分かるのは実際に触れている自分と触れられているレジーナだけだ。
 春の太陽の下、草いきれと花の蕾に囲まれながら、服を着たまま女の性器を愛撫する。その淫靡さに、グレンの下半身はさらに高ぶった。
 乳房を弄んでいた反対の手もスカートの下に潜らせ、自分の服のベルトと紐を外し、立ち上がった一物を取り出す。
「おいで、レジーナ」
 久しぶりに聞いたグレンの限りなく優しい声に、レジーナの意識はすぐに溶け始めた。それでも彼女が動けずにいると、グレンは下から彼女の尻を支えて、腰を持ち上げさせた。
「そのまま重なって」
「でも……」
「早く。俺がお前の中に入れたいんだよ。無駄な体力なんかじゃない」
 欲望に上ずるグレンの声は、何故いつもレジーナを涙ぐませるのだろう。どこに響いて熱くさせるのだろう。嬉しいのか、悲しいのか、切なさばかり満ち溢れて分からない。
 レジーナはそれ以上逆らえずに、自らの秘部で彼の男根を探し当てると、両手で自分の体を支えながら、ゆっくりと腰を落とし込んだ。 

 いつものように挿入の悦楽を叫ぶレジーナを見上げ、グレンも顔を歪ませながら、手を伸ばしてレジーナの頬を撫でた。
「いいよ、レジーナ。今日は我慢しないで声出していいから」
「だ……だめ。だって、こんな時間にこんなところで……聞こえちゃう」
 薄れそうになる意識の中で、うわごとのように切れ切れにレジーナは言った。
「誰も来ないよ。大丈夫だから。人が来ても、服着てるし平気」
「平気じゃない……」
「じゃ止める?」
 グレンが腰を浮かせた。体が下から突き上がり、体内で彼自身が最も深い場所に突き刺さる。
「ああ……」
 声を出してはいけないと思っても、深い嬌声が溢れた。
 侍女頭や執事、薬草取りの侍女、それに気まぐれな庭師、庭に来るかもしれない人間は少ないが、いる。万一こんなところを見られたら、いくら二人とも着衣のままでも、こうして互いに体を揺すっていれば、何が行われているかは一目瞭然だ。
 でも止められない。止めて欲しくない。このままレジーナが彼を呑みこんで昇りつめるまで。彼が自分の中で欲望を放つまで。

 快楽に歪むレジーナの顔を見上げ、グレンは息をついた。時間はかかったが、どうにかレジーナを取り戻せたようだ。大分ご満足らしい。
 ふと思いついて、腰に跨る彼女の服の裾をめくりあげる。薄暗いその中では、反り返っているはずの彼の陰茎がレジーナの中に埋め込まれている。腰を浮かせる度に、二人の粘液にまみれた男根の根本と、彼女の肉襞が覗いた。外から見た人間は、このスカートの中でこんな淫靡なことが行われていると想像できるだろうか。
「淋しかったよ、レジーナ」
 腰を突き上げて下から彼女の体を揺らしながら、グレンは震える声で言った。
「嘘……」
「嘘じゃないって。お前はほんとに特別なんだ。黙ってむくれてないで、構って欲しかったら言え。ちゃんと体空けてやるから」
「嘘だよ」
 レジーナの喉から嗚咽が、瞳から涙が溢れた。貫かれている快楽の為だ。それ以外の答えを彼女は探そうとしなかった。
「嘘じゃないよ。レジーナが一番だよ。本当だ。一番大事だよ」
 グレンも自分の言葉に酔いしれているのか、相変わらず腰を動かしながら、今までに聞いたことがないほどに乱れた声で続けた。熱にうかされているようだ。 
「昔から、見ててほっとけなかったんだ。一人で強がってるのが可哀想でさ」
「嘘つき……」
 嗚咽に混じって、悲鳴のような声が漏れた。緩んだ唇から唾液が滴る。
「本当だよ。だからこうしてレジーナの中にぶち込めるなんて、夢みたいだ。一番大事なんだよ。大公が何言ってきても手出しさせないよ。だから……機嫌直して。俺を受け入れて」
「いやだ」首を振りながらそう言った瞬間、体の芯が持ち上がり、腰が浮いた。体が震え始める。「やだ……絶対やだ……あ……あああああっ! いや!」
「レジーナ……かわいいよ。好きだよ。レジーナ……」
 グレンの手がレジーナの背中を抱き寄せた。上半身を起こしていた彼女は再び、グレンの鍛えた体の上に倒れこむ。
「う……嘘つき……やだ……やだやだ……あ……はああああっ!!」
 走り始めた体は止まらない。首を振りながらも、体の中は痙攣を始めてグレンを締め付け、彼のありったけの欲望を搾り取ろうとしている。
「レジーナ」
「グレン……グレン」
 彼女の中と同じように、性器を震わせて精液を放ったグレンの名を呼んだ。そこに何がこもっているのか、レジーナにも分からなかった。


 結合していた性器を抜き、体を離すと、レジーナは膝立ちで脱ぎ捨てられた自分の下着を拾いにいった。
 夕方前の日差しが空々しく肌に当たる。文字通り白昼夢を見ていたようだった。
 グレンに背を向けて、服の下で下着を穿いて紐を結び直す。振り返るとグレンも服を直して起き上がっていた。
「昼寝のつもりが体力使ったな」
 小憎らしいことを呟き、グレンは立ち上がる。自分の方が先に去るつもりだったが、一緒に城館に戻る気はない。レジーナは浮かせかけた腰を下ろした。
「あんたこそ体力落ちたんじゃない?」
 皮肉を返した声が僅かに掠れている。グレンは薄く笑った。
「そうかもな。少し鍛え直すか」
 草地を踏みしめて、彼の姿は広間へと消えた。それを見送ってレジーナは仰向けに寝転がった。今さっきまで二人で体を重ねていた場所だ。
 視界いっぱいに木々の梢と、その隙間から覗く午後の白っぽく明るい空が見える。
 目を閉じた。


「レジーナ様」
 女の声に目を覚まして、飛び起きた。
 状況は分かっていた。庭で寝込んでしまったのだ。視線をあげると、侍女頭がこちらを覗き込んでいる。
「あ……ごめんなさい、寝ちゃったみたい」
「もう夕方ですよ。お風邪を召します」
 彼女の言葉通り、薄暗いと思ったら、既に西の空は赤く染まっていた。建物に隠れて夕日は見えないが、もうすぐ沈んでしまうのだろう。
「シェリルが探していましたよ」
「ありがとう、すぐ戻るわ」
 恐らく侍女頭は広間の木戸を閉める前に、庭の身回りに来たのだろう。グレンと抱き合ったのが夕方でなくて良かったと思った。
 腕を上げて、どことなくだるい体を伸ばす。
 さあ、明日からも頑張らなければ。無理矢理自分を叱咤した。心の中で何が起ころうとも、陽は沈むし、また昇ってくる。
 立ち上がろうとしたレジーナは、視界の隅で、夕暮れの赤い光の中、キキョウのひとつが花咲き始めているのを見つけた。確か七日前はまだ全て蕾だったはずだ。
 山キキョウは低地のキキョウと違って、夏に咲く。初夏に咲くものもある。だが、まだ夏至まで二月あるというのに、もう蕾が開いているとは。この花がこんなに早く咲くのを見るのは、レジーナは初めてだった。
 早咲きの花は、この辺りでは幸運の印とされている。だが。

 広間に戻ろうとして、ふと後ろを振り返る。東の空は既に暗い青に染まり、星が見え始めていた。
 そこは夜だった。

BackNext


ネット小説ランキング>【R18部門】>山間の城の物語

 ↑ネット小説の人気投票です。投票していただけると励みになります。


登録させていただいているサイト様
「山間の城の物語」に投票
 ↑現在連載中の「山間の城の物語」が気に入ったら、クリックして投票してください。
「乙女の裏路地」へ 「にほんブログ村 小説ブログ」へ
fc2ブログランキングへ投票 「十八禁恋愛私花集」へ
*Edit TB(-) | CO(0)

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。
 ◆Home  ◆Novel List  ◆All  ◆通常ブログ画面  ▲PageTop 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。