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魔女とコヨーテ」
第二話 遠吠え

第二話: 遠吠え 7

2009.04.17  *Edit 

 彼は顔を綻ばせると、シェリルの豊かな髪をそっと撫でた。
 時間が逆戻りしたような錯覚に陥る。月明かりが差し込む質素な巡礼宿で、彼は何度そうして彼女の髪を撫でただろうか。
 あの時。ことが終わり、正体が露見した後で、シェリルはもう二度と彼に髪を撫でられることなど無いのだと、眠る彼の傍らでひっそりと泣きながら嘆いた。
 再会はいつも夢見ていた。だが、夢に終わるだろうとも分かっていた。まさか本当に再び会うことがあるとは、思いもよらなかった。
 しかし、彼女が夢見ていた形とは全く違っている。夢は夢のまま終わっていればよかったかもしれないのに。現実はいつも皮肉だ。
 男は髪から顔へ手を滑らせ、シェリルのふっくらした頬を包み込むと、顔を寄せた。唇が重ねられる。
 雰囲気に酔っていると思われたくない。シェリルは目を見開いたまま、その口づけを受けた。男も目を閉じていなかった。
 下唇をついばまれ、軽く吸われる。乾いていた唇に相手の唾液が触れた。彼はさらに舌をこじ入れてくる。上顎の裏をざらざらとした舌で探られ、鳥肌が立った。
 相変わらず彼は目を開け、彼女の瞳を見つめていた。近すぎて焦点が合わない。鼻と鼻が触れ合い、押し付けられる。髭が無いように見えた彼の唇の周りの皮膚に、僅かにざらついた感触を覚えた。舌の裏側を男の舌で撫でられながら、彼女はとうとう目を閉じた。

 寝台の脇で中腰になっていた彼は、唇を合わせたまま、体をずらして寝台にのし上がる。その上でシェリルに覆いかぶさるように屈んだ。縛られて動けない彼女は、それをただ見上げているしかない。
 鼓動が早く、熱い。理由も無く息が詰まり、喉が震えた。その様子を見て、彼は再び笑みを漏らした。
「そんなにもの欲しそうな顔しないでよ。君、ちょっと気に入った人間にはすぐに気を許しちゃうんだね。だからウォルターみたいな、しょうもない男に目をつけられるんだよ」
 マライアと同じ事を言われた。
 長いつきあいの彼女に言われるのなら分かるが、たかだか二度しか会っていない人間に、ずけずけと言われる筋合いはない。
「そんな顔してないわよ。勝手なこと言わないで」
「そう? 俺にはそう見えるけど。この前だって、旅の間中、誘うようにこっちを見てたじゃない」
 失礼な。旅の間、公子に扮した彼に惹かれていたのは事実だ。しかしただ肉体的に結びつきたかったわけではない。
 言い返す寸前に、それを封じるように彼が乳房を撫でた。
「う……」
 反射的に小さな声が漏れる。それをごまかすように、どうにか気を取り直して口を開いた。
「それこそあなたの勘違いでしょ。自惚れないでよ」
「可愛くないねえ」
 男はそれまで静かに撫でていた彼女の胸をぎゅっと握った。僅かに痛みを感じる。眉が寄った。
「君が何か期待してそうだったから、わざわざ夜中に部屋まで忍んでいったのに」
「嘘つかないでよ。あたしを──伯爵令嬢を殺す為でしょ?」
 男は眉をあげて首を振った。
「殺す? そんなことするつもり無かったよ」
「あの時、辺境伯から頼まれたのは、伯爵令嬢の暗殺なんでしょ。大体分かるわよ」
 鼻息荒く言い募るシェリルに、彼は苦笑を見せた。握っていた乳房を再び軽く弄び始める。彼の手の中で乳房が形を変え、時折そのしなやかな指先が乳首を撫でる。それを目にしていると、痺れるような甘美な感覚が流れ込んでくる。シェリルは彼の手、自分の胸から目をそらしたが、研ぎ澄まされていく感覚は、そこに触手を伸ばして、流れてくるものを捕らえようとした。
「自惚れているのは君の方だよ。それは外れだ。あの時の僕の仕事は暗殺なんかじゃないよ」
 男は再び顔を近づけ、シェリルを覗き込んだ。
「そもそも暗殺が目的なら、最初に君をあの小デブ男から助ける必要なんかなかっただろ? あのまま放っておけば、奴が君を始末してくれたはずだからね」
 初めて彼に会った時のことを鮮明に思い出した。
 伯爵令嬢として、婚約者を偽った、小太りの暗殺者に襲われているところを、彼が助けに入ってくれたのだ。かつて感じたことのない胸の高鳴りを彼に覚えた。その時は、まさかその彼も偽りの婚約者などとは思わなかった。
「僕の仕事は、伯爵令嬢の略奪だよ。伯爵令嬢の聡明さは、あの辺りでも有名だからね。すぐに殺してしまうには惜しいと思ったんだろ。それに始末するより、略奪してやった方が、公爵家には屈辱的だろうからね。たらしこんだ方が誘拐もしやすいから、君に近づいただけの話だよ」
 先刻、余計なお喋りはしないと言っていた彼は、彼女の体をまさぐりながら、饒舌に話し続けた。それに耳を傾けながらも、徐々に体が熱くなってくるのを止められない。男の方が平然としているのが癪だった。
「……辺境伯にそう頼まれたのね」
 やっと搾り出した声で言うと、僅かに彼の表情が変わった。焦りに近いものを見出し、シェリルの頭にひとつの仮説が降って湧いた。
 辺境伯。伯爵の政敵で、最近力を伸ばしている貴族だ。
 もしかしたら、先の伯爵令嬢の略奪だけでなく、今回の伯爵の親戚である副伯の暗殺計画にも、彼が一枚噛んでいるのかもしれない。副伯の命を狙う彼の叔父が、その為に伯爵の敵である辺境伯と手を組んだとしたら……。
 今回の副伯の暗殺計画は、見事な手並みだ。シェリルがそれを見破れたのは、偶然に近い、根拠の無い予感に過ぎない。伯爵の内情は、かなり敵方に漏れているようだ。その敵が辺境伯であるなら、伯爵の身辺も物騒だ。
 早く伯爵に警告しなければ。

「もうちょっと集中してよ。無粋なお喋りは止めにしない?」
 男は突然シェリルの大きく広げられた両脚の間に手を伸ばした。ウォルターに切り裂かれた乗馬ズボンの間から、下着越しに秘部に触れる。腰が微かに震えた。
 指で裂け目の奥を撫でられた。布の摩擦も無く、ゆるゆると動く。そこが潤っているのが判り、顔が赤らんだ。無論のこと、男もそれに気づいたらしかった。
「ウォルターにちょっといたぶられてたみたいだけど、それで濡れちゃった? ほんとに感じやすいね」
 ウォルターに触れられた時、つい快楽を感じてそこが潤ってきたのは事実だ。だが、あれから彼との問答の間に結構時間が立っている。
 それを経て今もこうしてその部分が湿っているのは、ウォルターの愛撫の残滓か、それとも目の前の彼と体を合わせることへの期待で、新たに愛液がにじんできたのか、どちらかは判らなかった。いずれにしても恥ずかしくて、彼に答える気にはならない。
 切り裂かれた彼女のズボンを、尻を抱えるようにして、丁寧に腰から脱がせながら彼は言った。太ももに彼の息を感じる。
「随分開発されたみたいだな。あれから何人ぐらいとやったの?」
 怒りと屈辱、それに悲しみが押し寄せて、かっと顔に血が上った。溢れた感情に涙をにじませながら、彼女は声を荒げた。
「バカにしないでよ! 惚れっぽいのは本当だけど、誰とでもほいほい寝るわけじゃない。あれから誰とも寝てないよ」
 彼は虚をつかれたように動きを止め、きょとんと彼女を見た。その顔が再び微笑むのを見ると、シェリルの心はどうしようもなく溶け出していく。
 なんでだろう。
 どう侮辱されても、貶められても、彼に触れても欲しくないとは思えない。
「そうなんだ。本当なら、ちょっと嬉しいかな」 
 ズボンをシェリルの太ももの半ばまで引き摺り下ろした彼は、下着の上から彼女の恥丘に軽く口づけた。
 男は再び体を前にずらし、正面からシェリルに覆いかぶさる。
 噛み付きながら、しかし縛り上げられて、なす術もなく彼を見上げているシェリルを、彼はまるで人になつかない子犬のようだと思った。
 彼はシェリルに口づけ、舌を伸ばして彼女の柔らかい唇を嘗め回しながら、彼女の頭を支えて、上半身を起こしてやった。
 男はそのまま一度床に下り、シェリルの背後に回りこむと、再び寝台に上がって後ろから彼女を堅く抱き締めた。
 その込められた力に何を期待しているんだろうと思った。彼といると、心も体も飢えて乾いて、求めずにはいられなくなる。

 背後からシェリルの長い髪を掻き分けて、舌が首筋に触れる。同時に伸びてきた両手が両の乳房を掴んだ。それまでに無いくらいに激しく揉まれた。その動きに体も軽く揺れる。
「俺、大っきい胸好きなんだよね。──誰とも寝てないってことは、胸も誰にも触らせてないんだ?」
 やや乱れた息で問いかける彼に、無言で首を振って見せた。
「嘘でしょ。さっき、あいつに触らせてたじゃん」
 男の声色が僅かに変わった。こね回されていた乳房の先端をつまみ上げられる。思わずか細い声をあげた。
「あれは……あいつが勝手にしたのよ。だって、縛り上げられてたら……抵抗もできないじゃない」
 指で乳首を弄ばれながら、掠れた声で切れ切れにやっと呟いた。
「今度からもっと用心して? あんまり他の男に触らせて欲しくないな」
「……なんで、あなたにそんなこと言われなきゃいけないの」
 弾んできた息の下で挑発的に言ったが、彼はそれを無視して彼女の左耳に舌を這わせた。耳たぶから耳の中へ。湿った音と生ぬるい感触が耳の奥深くまで入り込む。ぞくぞくするような快楽に、彼女はつい恥も意地も忘れて喘いだ。
 同時に掻き毟るように、爪の先で乳首を優しくいたぶられる。
「あうっ……」
 快楽が弾け、たまらずはしたない呻きを漏らす。慌てて唇を噛んだ。
 シェリルの声が男の興奮を誘ったのか、彼はさらに体を寄せてきた。後ろ手に縛られた彼女の手が、男の硬くなった股間に触れる。そこから少しでも指を離そうとしたが、彼はさらに彼女の手にそれを押し付けてきた。
「触って」
 耳の中を嘗め回しながら、彼は上ずった声で囁いた。
 シェリルは反射的に首を振る。慎みの問題というより、ほとんど未知のものに触れるのが恐ろしかった。
 男は不意にシェリルの体から離れると、床に下り、再び無抵抗の彼女を寝台の上に横たえた。
 彼の思うままだ。まるで主人と奴隷、飼い主と犬だ。ふと浮かんだその考えは、何故か彼女の下腹を熱くさせた。 

 立ち上がった彼は、留め具と紐を解いて革鎧を外した。長剣と短剣が下がったベルトも外す。ついその股間に視線をやると、ズボンを押し上げて硬くなっているのが目に見える。
 水浴びをした時には、ジャクリーンの下半身には、膨れ上がるようなものは無かった。あれが幻術だと思うと、見破れなかった自分が情けない。そしてそうとは知らず、あの時真昼の陽光の下、お互い全裸で小川に浸かっていたのだ。今さら顔が熱くなった。
 男はズボンの紐を解き、自分の下半身を見下ろして低く笑った。
 怪訝そうなシェリルに、笑いながら答える。
「いやさ、鎧と服は男物でもいいとしても、水浴びの時とかの為に、下着は女物穿いてたんだよね。人に見せるとちょっと変態みたいだな」
「実際、ヘンタイなんじゃないの?」
 目をそらして強気に応酬すると、彼は軽く顔を顰めた。
「縛られて動けない癖に、さっきからつっかかってくるのは、わざと? もうちょっと素直になってもいいんじゃない」
 彼が紐を解いたズボンを下げると、局部を覆って両腰で結び合わせるだけの、女性用の小さな下着を穿いた下半身が見えた。とても男性の局部を覆い隠すには至らず、下着の端々から恥毛や睾丸が覗け、熱く膨らんだ陰茎は下着を押し退けるように大きくはみ出して反り返っていた。
 シェリルにはそれを笑い飛ばすだけの経験が無い。滑稽とも思えずに、赤面して目をそらした。
 男は手早く紐を解いて、情けない女性用の下着をかなぐり捨てると、男性器を露出させたまま、シェリルに一歩近づいた。彼女は身を竦ませて肩を引いたが、両脚を固定されているので、それ以上動けない。
 男はその器官を彼女の豊かな胸に押し当てた。乳房の柔らかい感触が男を興奮させ、男性器の先端のぺたりとした感触が、少女を熱くさせた。
 自分が汚されているようだ。屈辱からシェリルは目を閉じた。しかしそれは、あの執事に扮した小男に乳房を触られた時のような、怖気がするような嫌悪感とは根本的に異なっていた。
 下腹部が熱くなり、潤いとなって脚の間へと漏れていきそうな気がする。 
 彼は自らの器官を彼女の肌に滑らせて、その柔らかさを楽しんだ。先端から漏れ出した透明な液体が、白い肌に糸を引くような痕を残した。
 敏感な乳首を彼の男性器で刺激され、シェリルは僅かに背をそらした。どうにか声をこらえる。そんなもので体を触られ、快楽を感じてしまうのが恥ずかしい。
「こっち向いて」
 顔をそむけて快感に耐えているシェリルの頭に手をかけ、男は強引に自分の方を向かせた。目の前に怒張した性器を突き出され、小さく息を呑む。
 彼女の様子に構わず、彼はそれを唇に押し付けてきた。頭を捕まえられていて、逃げられない。唇を固く閉じてそれを拒んだ。
「可愛くないことばかり言ってるからだよ。助けて欲しかったら、しゃぶって?」
 穏やかな表情と口調と裏腹に、彼はさらに強引にそれを彼女の唇の隙間から荒々しく押し込もうとする。
 ふと腰から力が抜けた。緩んだ口元に、彼自身がするりと入り込む。
 一度そうやって受け入れてしまうと、もう吐き出そうという気にならない。彼女は口の中で時折小さく動くその先端を咥えながら、舌でそっと愛撫した。
 無論シェリルには全く初めてのことだったが、好奇心が強く耳年増の彼女は、どうすれば男性が喜ぶかは知っていた。
「幻術じゃないよ」彼の声は僅かに震えていた。「僕が本物の男だって分かった?」
 わずかに塩辛い液体が先端から漏れ出し、舌に絡んだ。独特の生臭い匂いが鼻をつく。それを我慢して、唇をすぼめて軽く吸い込むと、男が掠れた吐息を漏らした。
 彼が快楽を覚えている。喜んでいる。
 動悸が増々激しくなった。熱いものが胸に溢れ返る。それに突き動かされるように、さらに彼の性器を深く飲み込んだ。彼も応えるように、彼女にそれを押し付けてくる。柔らかい口の中で、彼自身がぴくつくのが分かった。手で触れたこともないものを頬張っているのが、自分で信じられない。息苦しさに涙がにじんだ。
 男は一度彼女の口からそれを引き抜く。
 再び寝台に上りあがり、シェリルの顔を跨ぐように両膝をつくと、再び彼女の口に分身を差し入れた。熱に浮かされたように、シェリルは抵抗もせずにそれを受け入れる。
「シェリル……顔動かして」
 蹂躙するようにのしかかる彼が、切なく懇願する声を聞き、シェリルの頭の中をさらにのぼせあがらせた。
 背中で腕を縛られて横たわったまま顔を動かすのは、ひどく首が疲れたが、できるだけのことをしたいと思った。歯を立てないように唇で彼を包みながら、顎を前後に律動させる。その合間に舌で先端をねぶると、彼は喘ぎと共に掠れた呻き声を漏らした。
 もっとそれを聞きたくて、シェリルはさらに深く男根を咥え、包むように舌を滑らせる。夢中だった。
「あ……あっ……」
 感極まった声をあげ、男は大きく息を吐いた。
 喉の奥に生ぬるい、僅かに塩辛く苦味のある液体が弾け飛ぶ。吐き出してもいいのに、息を詰めてそれを飲み下した。

「ごめん……出ちゃった」
 荒い息をつきながら、彼はシェリルの口から分身を引き抜いた。
 何も考えられず、ただ男を見上げる彼女の髪を穏やかに撫でて囁く。
「すっごい気持ちよかったよ。誰に習ったの?」
 シェリルは首を振る。顎が僅かに震えて、言葉が出なかった。
「本当に口でするのは初めて? すごいよ」
 男は彼女の目尻に口づけを落とし、少しの間彼女の上に馬乗りになったまま、その長い黒髪を弄んでいた。時折髪が軽く引っ張られ、シェリルの体に小さな快楽の波が打ち寄せた。温まった彼女の体は、どんな刺激も全て甘美なものに感じ取れた。
 やがて彼は体をずらし、シェリルの頬と喉を撫でると、その乳房に顔を埋めた。男の指と唇が触れる度、彼女は小さな声を漏らした。いつの間にか呼吸が荒くなっている。
 固くなった薄い褐色の乳首は、充血しているのか、その先端だけ桃色を帯びていた。男はそれを口に含むと、唇で挟むように愛撫し、舌でねぶる。
「うう……あ」
 何かが弾け飛んでしまったように、自制が効かなくなってきた。シェリルは喉をそらせて声をあげた。
 音を立てて吸われる。いつの間にか目を閉じて快楽に酔いしれていた彼女は、かつて婚約者同士として、夜の巡礼宿で彼と抱き合った時のことを思い出していた。
 正体を偽り、寝入った振りをして、彼の愛撫を受けた。あの時とは違い、今は偽っているものなど何も無い。彼は敵ではなく、味方でも仲間でもないが、だからこそどんな姿を曝しても、構わないと思った。
 シェリルは荒い息をつき、喘ぎを漏らしながら、時折首を左右に振って快楽を訴えた。津波のように押し寄せてくるものに、ただ身を任せていたかった。

 男は彼女の脚の間に再び手を伸ばした。
 そこは先ほどとは比べ物にならないくらいに熱く湿って、下着を盛大に濡らし、足の付け根や太ももにまで愛液を広げていた。
「びしょびしょ……」
 彼が思わず呟くと、少女は閉じていた目をうっすら開けた。黒瑪瑙のようだといつも思う瞳が、情熱に熱く曇っている。
「だって……」
「何?」
 視線を合わせて問いかけると、彼女は恥じらいからか、口を噤んだ。
 彼は体を下へずらし、彼女の脚の間を覗きこんだ。水でもぶちまけたように下着が濡れ、ランプの薄明かりに広がった愛液がてらてらと光っている。
「だって、何?」
 下着の上からそこを撫でながら重ねて尋ねると、シェリルは弱々しい声を漏らした。
「だって……気持ちいいんだもん」
「正直だね」
 苦笑いを漏らし、彼は下着の紐を解いて、さっさと取り払った。下着にはべっとりと愛液がまとわりついて、湿っている。彼はそれをシェリルの豊かな胸の上に放り投げた。
 下着を外した脚の間に目をやると、粘液に濡れ、陰毛に包まれた彼女の秘唇が見える。それは充血して膨らみながら、男を受け入れようと微かに綻んで開いていた。
 指先でそっと押し開くと、その部分に絡んだ愛液が糸を引く。南国特有の、濃厚な香りを放つ甘い果物と、虫を食べる植物を連想させた。指を入れれば、食われてしまうような錯覚に捕らわれる。しかし、その中の温かいぬめりと柔らかさを確かめ、彼女を喜ばせたいという誘惑には勝てなかった。
 開き始めた唇の奥の、彼女の体内に通じる小さな入り口も、愛液を垂れ流しながら、ごく僅かに口を開けていた。時折喘ぐように小さく蠢く。そこに指をあてがって軽く撫でると、静かに内部に押し込めた。
「あ……ああーっ!」
 シェリルがそれまでとは違う、ひときわ深く切ない叫びをあげる。耳から入り込んだ女の嬌声は、背筋をぞくぞくさせた。
 半年前にも思ったが、若い女にしては珍しく、彼女は陰核よりも膣の方がより強い快楽を感じるらしい。
 両脚を固定された不自由な体勢のまま、シェリルは艶かしく腰をくねらせ、少しでも深く彼の指を飲み込もうとしているようだ。
 熱く濡れて柔らかい彼女の体内で、優しく前後に指を動かし、時折内部のざらつきを確かめるように軽く指を折り曲げると、彼女は豊かな胸を突き出し、背をそらして味わっている快楽を伝えてきた。
 シェリルの言葉を信じるなら、彼女は彼しか男を知らないはずだが、まるで成熟した雌の反応だ。正直で可愛い女だと思った。生まれつき快楽に弱いのかもしれない。
「はあっ……あ……あう……あう……」
 娘の嬌声に誘われるように、彼は指を動かし続けた。
 愛液は彼女の内部からとめどなく溢れ続け、彼の掌まで濡らしている。
 一度引き抜いてみると、透明な液にいくらか白く濁った粘液が混じっていた。微かに生臭い香りが鼻をつく。小柄で可憐な、淑やかそうな少女の、体内の淫猥な匂いだと思うと、体が高ぶった。
 つい先ほど少女の細い喉の奥で精液を放った彼自身は、シェリルの痴態を見て感じる内に、再び硬く立ち上がっていた。


 だしぬけに足首の先に解放感を感じた。続いてもう片方。
 閉じていた目を開けると、シェリルの脚の間にいたコヨーテが、寝台の支柱に結び付けられた縄を解いてくれたようだった。
 大きく開いたまま、緊張や快楽で何度も力んだ為、脚を閉じようとすると股関節が痛んだ。
 彼は再び彼女を抱え起こし、両手をシェリルの背中に回して、結び合わされた手首の縛めもほどきにかかった。正面から抱き締められるように男の胸に頭を預け、彼の息遣いと呼吸を感じながら、シェリルは彼が縄を解くのを待った。このまま、解けなければいいと一瞬思った。
 しかし小器用な男はすぐに縄を解いてしまった。
「約束だから。助けたよ」
 ふたりは正面から見つめあった。
「すぐ逃げる?」
 男の問いに、彼女は顔を赤らめながらも、首を振った。思い切って彼の背中に手を回してしがみつくと、腹に彼の再び硬くなった股間が当たる。
「してよ。約束でしょ」
 何故か涙が溢れた。顔をあげられず、男の胸に埋めたまま囁いた。
「……痛いよ、きっと。まだ二度目でしょ」
 顔を見られるのが恥ずかしいのに、彼は彼女の両肩を取って体を少し離し、瞳を覗き込んできた。
「それでもいいの。ひとつになりたい」
 瞬きした拍子に、涙が零れた。
 彼は決して彼女が恋した公子ではないのに、どうしてこんなに欲しくてたまらないんだろう。
 男はまたシェリルの目尻、鼻、そして唇に軽く口づけ、彼女を再び寝台に横たえると、自分も覆いかぶさった。片手で手早く長靴の紐を解いて、寝台の下に脱ぎ捨てる仕草が、焦っているようで愛しかった。
 できればこの前の時のように、お互いに生まれたままの姿で、肌の隅々まで重ねたい。だが服を脱ぐ時間が惜しかった。
 シェリルは自ら脚を開き、その間に男の体を受け入れた。彼はその先端を彼女の入り口にあてがい、一気に突き入れた。

 あの時と同じ激痛が脚の間に広がる。体が裂けると思った。
 彼は自身をシェリルの中に挿入すると、息をつきながら彼女を見下ろしていた。
「大丈夫?」
「平気」
 痛みに歯を食いしばりながら、彼女は答えた。男が顔を寄せて唇を重ねる。舌を伸ばして自分から彼の口の中を探ろうとすると、彼は優しくそれを受け入れ、彼女の舌を吸った。そこから溢れる情熱と快楽が、下半身の痛みを少し違うものに変えた気がする。
 彼はゆっくり腰を動かし始めた。入り口の痛みがさらに奥の方まで広がる。だが体の芯に、激痛の先端に、形容しようのない熱さが宿った。痛みなのか分からない。もしかすると快楽なのかもしれない。性の快楽に嫌悪どころか憧れすら持っていた彼女は、そうであって欲しいと祈った。
「あ……あ……!」
 息を呑みながら喘ぐ。
「シェリル……」
 彼女の唇を時折吸いながら、合間に彼はシェリルの名を囁いた。
 レナード。
 反射的に彼の名を呼ぼうとし、それが彼の名ではないことに気づく。そういえば、まだ彼の名前を聞いていない。
 しかし体の奥で暴れる激痛と、それを上回る得体の知れない感覚に乱され、名前を聞くことなどできなかった。開いた唇からは、意味の分からない喘ぎだけが漏れ続ける。
 以前の時のように、熱した杭を打ち込まれているような熱さと痛みが、体の芯までぐいぐいと入り込んでくる。引き裂かれるような痛みが、彼の動きに合わせて襲ってきた。
 男は寝台に手をついて自身を彼女に突き入れながら、彼女の表情を気遣うように伺っている。激痛に顔を歪めると、彼の動きは緩やかに、浅くなった。
 どうしてそんなに優しいのだろう。
 でも今はあたしの体を気遣うよりも、優しさも気遣いも忘れて、もっと我を忘れて溺れて欲しい。まだ耐えられる。
 どうしたら、体の中にいる彼をもっと喜ばせてあげられるのだろう。
「あ……」
 小さな呻きが漏れる。それは先ほどのように、苦痛に堪え切れずに溢れた声とは違っていた。
 体の中で流れて逆巻いているのは痛みだ。それは間違い無い。
 けれど与えられているのは苦しみではない。彼にそう伝えたい。彼の重みを受け止め、彼自身を体の中に受け入れているのは、嬉しいのだと知らせたい。
 吐息と声が甘みを帯び、痛みにしかめられていた表情は切なく緩んだ。
 これは苦痛じゃない。快楽だ。彼に与えられているものなのだから。
 体の奥に差し込まれている激痛は、徐々に名づけようのない、ただ熱い感覚へと変わっていく。
 彼女は切れ切れに小さな叫びを漏らした。それを耳にした男の動きは、それまでの優しい、どこか遠慮がちなものから、次第に荒々しい、獣じみたものへと変化した。熱く湿った息が素肌をうっすらと濡らした。
「痛い?」
 男の問いに即座に首を振った。
「大丈夫」
 目を閉じたまま囁くと、彼の動きはさらに早く激しくなる。打ちつけられる度に腰が浮いた。
 入り口の方に、肌を裂かれるような痛みと、そこに触れるざわざわとした彼の恥毛を感じる。しかし体の深い場所にぶつかるのは、もはや痛みではなく、熱く重い未知の感覚だった。
 見上げた男の顔は劣情に紅潮し、快楽に緩んでる。それだけで何もかもが満たされる気がした。
 初めて彼と肌を重ねた時、死んでもいいと思った。後でなんて愚かなことを考えたのだろうと、自分をあざ笑ったが、今、全く同じ気持ちが沸いてくる。
 やっぱりだめだ。私はこの男を愛している。
 それは錯覚かもしれない。だが、人の心も気持ちも移り変わっていくものだ。不変ではない。この気持ちが錯覚なら、全てこの世に生まれ出でる感情は錯覚に違いない。
 その一瞬一瞬に感じたことが全てだ。そう思った瞬間、とてつもない幸福に包まれた。
 名前も知らず、シェリルの内部に入り込んで揺さぶっている男が、小さく呻いて息を吐いた。彼は一度動きを止めると、腰を微かに震わせながら、さらに数度深く彼女の中に押し入る。体内に再び彼の情熱が撒き散らされたのを感じた。

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