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山間の城の物語」
第二章 千の目

9.炸裂 (3)

2010.12.20  *Edit 

 背後で小さな舌打ちが聞こえた。我に返ったレジーナが止めるより早く、あたりに怒声が響き渡る。
「静まれ!」
 空気を揺るがせるようなグレンの大声に、罵り合っていた領民と侍女たちは、一斉に口を噤んだ。すぐ前にいたレジーナなどは、鼓膜を直接叩かれたような気がした。
 大きな音というものはそれだけで人間の感情を揺さぶる。雷の轟音は人間を萎縮させ、太鼓や軍隊の鬨の声は彼らを鼓舞する。傭兵同士の喧嘩や戦いも、まず罵声で相手を威嚇することから始まる。昔から思っていたが、グレンのように並外れた大声を出せるというのは、ある意味で才能だ。
 この時も、領民たちは司令官の怒鳴り声に度肝を抜かれて、静まり返っていた。平然としているのは、恐らく慣れているであろう士官たち、そしてエドワードだけだ。
 グレンは腕組みをしたままレジーナの前に進み出て、少年と向き合った。レジーナと同じくらいの身長のエドワードは、見下ろされても怯むこともなく、泰然とグレンを見つめ返している。
「エドワード殿とおっしゃったか」数瞬の睨み合いの後、グレンは口を開いた。「そもそも君は一体誰だ? 謁見の手続きもせず、こうして夫人や役人方の手を煩わせるようでは……」
「申し遅れました。先代副伯の弟の子、エドワードと申します」
 グレンの口上を遮っておいて、しかし彼は優雅に礼を取った。その動作はグレンの目にも、付け焼刃とは見えなかった。
「副伯の従兄弟殿か」
「左様でございます。あなた様は、大公から遣わされた軍の司令官様とお見受けしますが」
「そうだ」
 頭を上げたエドワードは、言外にグレンに名乗りを求めて慇懃に言ったが、グレンは無愛想に頷くだけで、それに応じなかった。鼻白むこともなく、エドワードは続けた。
「既に閣下と夫人の間に、某かの取り決めがあったようですが、この通り民は納得してはおりません。改めて民の前で、副伯家の跡継ぎにもなりえる私と、軍の駐留について正式な話し合いを持っていただけませんか」
 大軍を率いる将軍の前で、厚かましいほど平然と少年は言い放った。グレンは僅かに苦笑いを浮かべている。
「跡継ぎとは……。副伯はまだご存命だぞ。君の話が本当だとしても、従兄弟である君が跡継ぎになるには、まだ早いのではないか」
「しかしご結婚から二年、まだ夫人はお世継ぎを授かってはいらっしゃらないようですが。副伯が無事にお戻りになった後も、すぐにご懐妊されるかどうか」
 再びレジーナは顔が熱くなるのを覚えた。
 子供を埋めない女は半人前。妻たる資格なしだ。
 レジーナはそうは考えていないし、夫も世継ぎを作るためにレジーナと結婚したわけではないと兼ねてから言っていた。
 しかし世間の人間、ことに貴族やこの田舎の人々はそうは考えない。妻であるのに子供を産んでいないという言葉は、レジーナに対する一種の侮辱であった。
「そうだ! 夫人を名乗るなら、まず子供を産んでみろ!」
「政はエドワード様に任せて、ご領主様がお帰りになるのを待っていればいいんだよ」
 案の定、エドワードの台詞の尻馬に乗るように、若い領民と女たちが再び野次を飛ばし始める。
 彼らの怒号を聞き、再びシェリルたち侍女が顔色を変える。しかし彼女たちが再び怒鳴り返すより早く、領民たちに向かってエドワードの厳然とした声が響く。
「やめたまえ!」
 まだ十六、七の少年の一喝で、若者と女たちはぴたりと口を閉じる。
 彼らはエドワードをこそ、指導者として認めているのだ。レジーナではなく。
 領民たちへの失望を怒りに変えまいと、レジーナは蒼ざめながら唇を噛んだ。レジーナを認めてくれないからといって、彼らを憎んではいけない。彼らもまた大切な領民だ。
 でも、どうしたら受け入れてもらえるのだろう。できることはやっている。これ以上、どうしたら。

「エドワード殿」
 沈黙する副伯夫人に代わって、腕を組んだままのグレンが口を開いた。領民がレジーナを罵倒する間、彼は不快感すら表すことなく、眉ひとつ動かさずにいた。
「君の主張は分かったが、方法は感心せんな。城下の領民の前で夫人を面罵しては、夫人も立つ瀬があるまい。お互い冷静になる為にも、日を改めて出直して来ないか?」
 鋭くなったグレンの視線に一向に怯まず、エドワードは毅然と答えた。
「もうひと月もお待ち申し上げた。領民たちも我慢の限界だ」少年の唇が冷笑を刻む。「司令官様は、随分と夫人にご親切であらせられる。こうして本来ならば、夫人が私の問いに答えるべきところで、閣下自ら代わってお答えになるということも、開城前に夫人との間で、何らかの裏取引があった疑惑を招きかねませんぞ」
 無表情に少年を見下ろしていたグレンの眉が、初めて不愉快に寄った。
「言葉に気をつけたまえ」
「私は領民の思いを、彼らに代わって申し上げているまで。口を閉じるわけにはいきませぬ。それとも大軍をもって、力ずくで我々の口を塞ぐおつもりですか? それも結構。ここにいる者たちは、その覚悟はできております」
 領主の若き従兄弟に率いられた、放牧地の若者たちは、それぞれ頷き、手にした得物で地面を叩き、声を上げて己の勇気を誇示した。
 それは城門の外で彼らを取り巻いている、城下の領民たちの胸を熱くさせる。彼らもまた、レジーナ同様に、このまま大公の軍を受け入れていてよいものか迷っていたのだ。手に手に農具や斧をもち、命を賭して城まで訴えに来た放牧地の若者たちの姿を見て、城下の領民たちの中には、己を恥じる者もいた。
 彼らに合わせて声を上げる者、そして遠巻きにしていた野次馬の中から恐る恐る踏み出し、エドワードに続く若者たちに混じる者がちらほらと出始めた。

(ヒヨコみたいに、ぴーぴーうるせえな)
 息巻くエドワードと、それに従う領民たちを見ていて、グレンは辟易した。
 エドワードの大仰な台詞と仕草は、レジーナに特に好意的だった城下の人間にも、間違いなく影響を与えている。このまま放置しておけば、彼に従う領民はもっと増えるだろう。副伯の従兄弟かどうか、グレンは確信が無かったが、レジーナたちが真っ向から否定しないところを見ると、本当なのだろう。まだ少年のくせに、声や仕草、演説は、純朴な領民を十分に惹きつける力を持っている。
 グレンは士官たちに命じて、忌々しい少年と領民たちを切り伏せてやろうかと衝動的に考えた。そうすれば城下の領民もおとなしくなるに違いない。
 だがその後に、レジーナがどう出るか考えると面倒だ。反抗の意志を見せていようと、副伯領の民には違いなく、彼女には、領民に乱暴をしないと約束している。それを反故にするのも簡単だが、そこまで追い詰められているわけではない。もっといい方法があるはずだ。
 舌打ちをこらえ、グレンは口を開いた。
「我々も争いに来たのではない。話し合いになら応じるつもりはあるが、君と領民の告げたことは、夫人と城内のご婦人や召使いに対する侮辱だ」
 彼は芝居がかった仕草で、外套を背に払って、左手で腰に下げた剣の鞘を掴む。エドワードを見据えたまま、右手で鞘をベルトに括りつけている紐を解きながら、話し続けた。
「現在、この城は我々の保護下にある。夫人への侮辱は、私への侮辱も同じだ。賢い君なら、無論承知しているだろうな。覚悟はできていると言ったが、それを確かめっ」
 グレンが口上を続けながら、ベルトから鞘ごと外した剣が、突然横手から取り上げられた。
 がらんと重い音を立て、細工が施された金属の鞘がエドワードの足元の石畳に転がる。
 貴族と騎士の間では、左手の手袋を相手に投げつけるのが決闘の申し込みである。しかしこの辺りの地域では、日ごろから手袋をしている人間は少ない。代わって、払った剣の鞘を相手に投げつけることが、決闘の申し込みとして取られる。
 その場にいた誰もが、少年の足元に鞘を投げつけた副伯夫人に目を向けた。
「大公の保護下にあろうとも、自分の不名誉は自分で雪ぎます」
 レジーナはグレンに冷めた一瞥をくれると、すぐにエドワードに向き直った。
「エドワード様、従兄弟殿であらせられようと、先ほどまでの私と女官たちに対する暴言の数々は、聞き捨てなりません。私と司令官様が密通していること、侍女たちを司令官様の寝室に上げたこと、イブという侍女の失踪に関して、私が何かやましいことでも行ったかのようなこと、全て根拠の無い虚言です。ましてや司祭様によって正式に結び付けられた、私と副伯の聖なる結婚を貶めるかのようなお言葉、神と教会に対する反逆としか聞こえません」
 凛とした声で告げながら、レジーナは内心苦笑いしたかった。根拠の無い虚言などと言ったものの、いくつかは事実であるし、神と教会になど、レジーナ自身も大した敬意を払っていない。いずれも領民たちを納得させるための大義名分だ。
 嘘をつくのは好きではない。だが、これくらいやってのけなければどうする。真実ばかりを語って、領民を惹きつけるほどの統率力が、レジーナには無い。だから別の方法を使うしかないのだ。
 エドワードはまるでお転婆な幼女にでも対するように、苦笑いを浮かべた。
「私も事実しか語っておりません」
「お互いに真実を語っているなら、あとは刃が正義の天秤となるでしょう。その鞘を拾うか、そうでなければこの場は引きなさい」
 毅然とした女主人の低い声がよく響く。侍女と召使いたちは、息を詰めてレジーナを見守った。
「ご婦人と交える剣など、私は持っていません」
 少年は穏やかに告げて首を振った。レジーナは冷ややかな笑みを見せ、小さな溜め息を吐いた。
「そうですか。でしたら尻尾を巻いてお帰りなさい。司令官様がお相手ならともかく、女と決闘して万一負ければ、誰もあなたにはついてきませんものね。もちろん戦いたくないでしょうとも」 
 エドワードの唇が引き締まる。灰青色の瞳に、レジーナは初めて苛立ちを見た。
 彼の後ろにいた二十歳ほどに見える若い女が、レジーナを睨みつけて大声を上げた。
「なんて女なの。女の立場を利用して、卑怯な。男が女と決闘できるわけないじゃないさ」
「では、戦えないエドワード様に代わって、あなたが私と戦いなさい!」
 領民に向かって、初めてレジーナは声を荒げた。鍛えた体から吐き出された低い怒声に、女は肩をびくりと震わせる。
「女同士、文句は無いでしょう。命を賭ける覚悟があると言ったわね。それを見せてもらいましょう」
 レジーナの刃物のような鋭い視線を受けて女は怯んだが、やがて己を鼓舞するように手にしていた鋤を地面に叩きつけた。
「ああ、いいよ。私が相手になってやる……」
「よさないか」
 エドワードの涼しげな声が、女の罵声を遮った。彼は屈んで、レジーナが投げつけた鞘を拾い上げる。それは決闘を受諾することを意味していた。
「領民を傷つけるわけにはいきません。私がお相手しましょう。しかし、ご婦人とはみなしません。加減は致しませんよ」
 少年は無表情に言いながら、拾い上げた鞘をばか丁寧な仕草でレジーナに返した。受け取りながら、レジーナも怒りと興奮を押し殺して頷く。
「結構ですわ。これ以上女だからという理由で侮辱されたくありません」
 エドワードは彼女を見つめ返しながら、皮肉の混じった冷笑を見せた。そこには焦りなど欠片も見当たらない。
「場所と時間は、夫人がご指定ください」
「今、ここで」
「──結構です」
 エドワードが頷くのを見ると、レジーナは振り向いて召使いや侍女たちに向かって声を上げる。
「さあ、場所を空けて! 下がりなさい」
 彼らは久しぶりに見る、揺るぎのない副伯夫人の姿に圧倒され、ただ頷いて彼女の命に従った。怒りに柳眉を逆立て、戦いへの興奮に包まれた長身のレジーナの姿は、荒々しくも端然として美しく見えた。
 それは城門の外から見守る、城下の領民にしても同じだった。彼らは数年前、村をたびたび襲撃しては悩ませていた盗賊団と、傭兵や冒険者たちを率いて先頭をきって戦った彼女の姿を思い出した。領地の人間ではなくとも、由緒ある副伯家の血を引いていなくとも、レジーナはかつてこの地を救ってくれた英雄だった。


 レジーナはグレンから取り上げた剣を握った。重い。こんな剣で戦えば、すぐに息が切れて満足に動けなくなるだろう。
「ちょっと、なによ、このくそ重い剣。こんなんで戦えないわよ」
 彼女は剣を一度鞘に納め、背後で疲れた顔で立っているグレンに突き返しながら小声で言った。彼以外の人間は、決闘の場所を空けるために、既に城館の壁沿いに下がっている。
「勝手に取り上げておいて、適当なこと言うな。部屋に戻って自分の剣取ってくりゃいいだろ」
「逃げるみたいで嫌なのよ」
「おい……」憤然と言い返すレジーナに、グレンは顔を顰めて舌打ちを返した。「頭に血上らせやがって、バカが」
 馬鹿と呼ばわれ、レジーナも眉を寄せた。
「バカとは何よ」
「バカだろうが。相手を見くびってるか、自分を買いかぶっているかのどっちかだ。せっかく俺が穏便にカタつけてやろうとしたのに、台無しにしやがって」
「余計なお世話よ。言った通り、あたしへの侮辱は、あたしが……」
「それが考えなしのバカだっつーんだよ。お前、相手ちゃんと見てるか? あのガキが見た目通りの優男だと思ってんなら、相手なめすぎ。少なくともあいつは冷静だ。お前みたいにぶち切れて決闘を受けたわけじゃねえよ。勝算があるんだろ。加えて、ヤツはどう見ても、まだピチピチの十代だぞ。それにひきかえ、お前は乳も垂れ始めた三十女じゃねーか」
「まだ三十じゃないわよ。あんたと一緒にしないで」
 レジーナの抗議に耳も貸さず、グレンは続けた。
「全盛期のお前なら勝てたかもしれないけどな、結婚して田舎に落ち着いて、女とジジイと豚羊に囲まれてのんびり暮らしてたお前は、筋力も体力もガタ落ちだ。実戦も積んでない。ニコラスから一本取るのもやっとこだったお前が、そう簡単に勝てると思ってんのか? 負けても、ヤツがこの場でお前を殺すことは無いだろうが、領民の信頼は地に落ちるぞ」
「……絶対勝つわよ」
 畳み掛けるようにグレンに言い募られ、レジーナは反論できずに、それだけ言った。グレンが小さく息を吐く。
「絶対勝つで勝てたら、傭兵も軍人もいらねーよ。そう言って負けた人間を何人も見てきただろ。仮にも副伯夫人なら、自分ができることとできないことぐらい心得ておけよ」
 時間が経ち、次第に冷えてきたレジーナの頭に、容赦ないグレンの嫌味が溶け込む。
 言い方は気に食わないが、確かに彼の言うことは正しい。エドワードがどんな生活をしてきたかは分からないが、以前に本人が語っていた通り、屋敷を追い出されてから放浪を続けていたなら、かつてのレジーナと同じくらいの剣技は身につけているかもしれない。この山と麓の町を往復していたのなら、体も鍛えられていることだろう。
 そして確かにレジーナのほうは、年齢のせいもあって体力が落ち始めている。かつてのように体が動かないということも、最近身をもって知った。
 沈黙するレジーナに向かって、やや緩んだグレンの声が掛かる。
「お前が奴に勝てるのは経験だけだ。陽動と切り返しを使って、早めに勝負をつけろ。長引いて体力に響いてきたら確実に負けるぞ」
「……分かったわ」溜め息と共に誇りを吐き出し、日差しに乾いた地面を見つめながら、レジーナは重い声で言った。「忠告、ありがとう」
「今のがお前の最期の台詞にならないように祈っててやるよ」 
 グレンも溜め息を返す。
 そこに足音が近づいた。二人が顔を上げると、ロデリックが静かな足取りでやってくるのが見える。
「エドワード様より、我々の中から立会人を出して欲しいとお申し出がございました」
 無表情に淡々と告げる副官に対し、グレンは皮肉を込めた声で応じた。
「俺でいいなら俺がやるが、あの坊ちゃんは、俺と夫人が愛人関係にあると疑ってるみたいだからなあ」
「いいえ、可能なら、ぜひ司令官様にお願いしたいとのことでした」
 立会い人は無論、決闘を見守るだけだ。複数の人間によるだまし討ちなど、卑劣な手口を使っていないということを証明し、勝敗を見届ける役目である。とはいえ決闘の当事者同士に、物理的に最も近くにいる。片方と親交のある立会い人がつい決闘に介入し、乱闘を招く事例も少なくはない。本来なら、できる限り双方に中立な人間を選ぶのが常識である。敢えてグレンを指名してきたのは、エドワードの自信の表れなのだろうか。  
 レジーナは首を曲げて、城門前の中庭に悠然と立っている少年を見つめた。熱と光を増す朝の日差しの下で、腰に剣を佩いたエドワードは微笑みすら浮かべている。彼に従う領民たちは、期待と希望に満ちた目でその姿を追っていた。
「あいつがいいならいいけど」
 グレンは肩を竦め、レジーナを振り向いた。
「剣はどうする? 俺のを使うのか? それとも部屋から取ってくるなら、少し待つようにエドワードに言っておく」
「侍女から借りてくる」
 できれば愛用の剣を使い、着替えもして万全の態勢で戦いに臨みたかったが、この場から少しの間でも姿を消すのは、どうしても嫌だった。  
 侍女たちに向かって踏み出そうとするレジーナの前に、ロデリックが鞘から抜いた剣の柄を差し出した。
「よろしければ、どうぞ。ほとんど使っていませんが、手入れだけはしてあります」
 無表情のままの副官から剣を受け取ったレジーナは、両手で握りこんでみた。グレンの剣より大分細身で、刀身も短い。重量もレジーナが普段から使っているものと、さほど違いはない。彼の言葉通り、あまり使われた形跡の無い刃は刃こぼれもなく、磨きこまれている。
「ありがとう。お借りします」  
 微笑んで礼を言うレジーナに、ロデリックは珍しく僅かに表情を崩してみせた。
 だが次の瞬間、彼は隣に並んでいる上官と共に大きく目を見開いた。
 レジーナが副官から借りた剣で最初に切り裂いたのは、彼女が着ている服の長い裾だった。膝上に切り込みを入れ、そこから下の布地を全て切り落とす。むきだしになった脛が、外気と日差しに包まれる。
 その光景を見て、侍女たちもエドワードが連れていた領民たちも声を上げた。この辺りで、女が膝下の脚を出していることは、非常に慎みがない服装だとされる。
 レジーナももちろん承知しているが、裾が長い服では動きにくいのだから仕方ない。
 副伯夫人の突拍子もない行動に、さすがにグレンも唖然とした声を上げた。
「何やってんの、お前。そんな脚出しちゃって、飛び蹴りくれたらパンツ見えるぞ」
「負けるよりマシよ」
「ていうか、ちゃんとパンツはいたのか?」
 それ以上グレンの問いに答えず、レジーナは剣を握ってエドワードの方へ歩き出した。彼女の背後で、ロデリックが「何の話ですか?」などとグレンに尋ねていたが、無論レジーナの耳には入っていない。

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~ Comment ~

NoTitle 

もう次が待ち遠しいです!レジーナとエドワード
どうなるんでしょうか?
すごーく気になります!






















RE: 明日香さん 

コメント、ありがとうございます。

今回も続きを読んでいただいて、ありがとうございました。

サブタイトルは当初「暁の決闘」を考えていましたが、変えてよかったです^^;
レジーナ対エドワードの行方は、次回にて…。
立ち回りや格闘の場面は、描写が難しいですね><
さらに修行します。

御礼 

魔女とコヨーテ連載中から拝読しております。遅くなりましたが、ど~しても熱烈な称賛を送りたくてメールしました。
硬めの文章に、素敵な展開、なによりもにくたらしい男達が魅力的☆
魔女とコヨーテでは悲しい結末にショックを受け、また哀しいのかなあと思うと見るのが辛い反面グレンたち圧倒的な支配力を持つ男どもに引き込まれてしまいます(*^^*)
更新陰ながら応援しております。

RE: もえっくさん 

コメント、ありがとうございます。

「魔女とコヨーテ」から読んでいただいて、ありがとうございます。
かれこれもう2年前くらいでしょうか…あわわ、年月が経つのは早いです。

どのお話でも、ヤな男たちと困った女たちが登場しますが^^;、
少しでも可愛げみたいなものを感じていただければと思います。
人間らしさを魅力的に描くのは難しいですが、もっと色々インプットしながら、今後も挑戦していきたいです。

「山間の城の物語」は、「魔女~」の続編ではありませんが、時間の流れは続いている姉妹編のようなものです。
お話はまだ続くのですが、完結まで飽きずに読んでいただけるよう頑張ります。

ありがとうございました!
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