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山間の城の物語」
第二章 千の目

11.時の砂 記憶の墓標 (3)

2011.01.14  *Edit 

 ロデリックの手は、膝の裏から腿の裏へと滑り上がって、シェリルのふっくらとした腿をさすり始めた。ライラックの香りが、再び濃密に鼻腔をくすぐる。
 太ももに触れられると、心地良さと共に全く異なる種類の微熱を感じる。シェリルの体はもう一度ぴくりと震えた。
「腿も固いですね。こちらもたまにはほぐした方がいいです」
 黙っていたロデリックが、以前にサラが言ったのと同じようなことを呟いた。その声は、よそよそしく生真面目な調子に戻っていた。
 ロデリックは声も昔の恋人によく似ている。
 本当に、別人なのだろうか。何度跳ね除けても、その疑問はシェリルの頭に返ってきた。
(寝てみれば分かるかもしれない)
 数え切れないくらい抱き合った『彼』の手触りは、シェリルの体に刻み込まれているはずだ。本当に違う人間なら、素肌への触れ方、指や舌先の感触、情熱に上擦った声や汗が混じった体の匂いまでも、同じであるはずはない。
 抱き合って、かつての恋人とは違う抱き方をする男だと確信すれば、ロデリックと『彼』を切り離せる。
 その時こそ、彼女の胸にずっと切なく宿り、見果てぬ夢を囁き続けてきた昔の恋人の面影も、もっと穏やかで優しいかたちに変わるかもしれない。『彼』をシェリルの大切な過去の思い出として、永遠に心に残るように埋葬できるかもしれない。時の砂の中に封じ込め、美しい墓標を立てることで、本当に彼女は新しい一歩を踏み出せるだろう。

 数瞬でシェリルは我に返った。何を考えているのだろう。
 しかし衝動的に頭に浮かんだことは、なかなか脳裏から出ていってはくれない。
 シェリルは自分でも承知しているが、少女の頃から性的なことに関して好奇心が強かった。慎重で自尊心の高い彼女は、恋人と別れてから、あの兵士に陵辱されるまで、男性に身を任せたことはなかったが、体が昂らなかったわけではない。
 私室があるのをいいことに、シェリルは夜中にこっそり自分で自分を慰めていた。豊かな乳房と柔らかい秘部を探りながら、いつも頭に思い浮かべるのは、かつての恋人との睦みあいだった。    
 ロデリックに腿の筋肉をほぐされながら、彼女の頭では、普段、自慰をしている時に思い出す、シェリルに触れる恋人の姿、指先の感触、乱れた言葉が勝手に駆け巡る。
 頬がさらに熱くなった。まるでロデリックの指先を使って、頭で自慰をしているような罪悪感にかられる。
 いけない、彼に失礼だと思えば思うほど、体も下腹部も熱を持つ。ロデリックの指が腿の裏を滑るたび、シェリルの体は止めようもなく小さく震えた。知らずに両脚に力がこもる。その間はもしかしたら、快楽への期待に潤っているのかもしれない。
「先日の夜はいかがでした?」
 再びロデリックが口を開いた。
「はい……?」
 体が熱くなっていることを悟られないように、シェリルは短く尋ね返した。彼の質問の意味が分からなかった。ロデリックは穏やかに言い足した。
「気持ち良かったでしょうか?」
 一気に顔に血が上る。  
 主寝室で、グレンと絡み合った時のことを訊いているのだろうか。
 一瞬後に、彼が訊いているのはその前、サラに香油を塗られながら体をほぐしてもらった時のことだと思い至った。
 どうかしている。
 それとも、これから再びグレンの寝室を訪ねることに、肉体が勝手に期待しているのだろうか。
 胸中で自嘲しながら、シェリルは昂りを見せないように、さりげない口調で答えた。
「ええ、とても……。あの方もお上手ですね」
「そうだろうね」ロデリックの口調が変わった。「部屋の外にまで声が聞こえてたよ」
 鳥肌が立った。
 振り返えろうとする彼女の頭が、静かにしかし逆らいがたい力で、上から押さえ込まれる。
「まだ終わってないから。動かないで」
 その穏やかな声は、彼女の記憶の最も深く切ない場所に突き刺さった。
 まさか。そんなはずはない。
 驚愕に体が打ち震える。全身の血が逆流するような気がした。
 片手でシェリルの頭を押さえたまま、ロデリックのもう片方の手が再び腿を撫でる。今までの筋肉をほぐすような動きとは全く違った。ぞくりとする淡く切ない刺激が走り抜け、彼女は小さな溜め息を吐いた。   
 顔を上げたい。だが彼女の頭を寝台に押し付けた手の力は、緩む様子も無い。僅かに右に傾いた顔には自分の髪が被さり、目の前でロデリックの胴が時折動くのが見えるだけだった。
「あの……ねえ」
 弱々しい声を上げたが、返事は無かった。呼びかけようにも、シェリルは『彼』の名前も知らなかった。
 尻と腿の上部を覆っていた掛け布が取り払われる。
 油に濡れたままの手が、下着の上から彼女の尻に触れた。小さな下着では覆いきれない、丸々とした豊かな尻の柔らかい肉を掌が撫でる。それは遠慮なく下着の中へと入り込んだ。
「ねえ、待って……」
 びくりと体を竦ませ、必死に脚を閉じながらシェリルは再び声を上げた。しかし頭を押さえつけている手を振り払って、体を起こすことはしなかった。情熱に淡く浸され、思考が混乱した状態の彼女は、動くこともできずにいた。
「おとなしくしてて。ちゃんと塗っておかないと僕が怒られるんだよ」  
 冷めた声と共に下着の中で尻をぎゅっとつかまれると、彼の手はそこから離れ、下着の紐を解き始める。
「待って。ねえ、あなた……」
 従順にうつ伏せになったまま無意識に腰を僅かにひねりながら、シェリルはもう一度口を開いた。心臓がどくどくと激しく脈打つ。破れそうだ。わけのわからない熱いかたまりが、腹の奥底からせり上がり、胸を焦がして息が苦しい。涙が滲んだ。
 素っ気なく彼女の声を遮る、通りのいい声だけが返ってくる。
「ただの香油だと思った? 庭師から分けてもらった花を使って、僕が調合したんだ。──君みたいなエロい女の子には必要無いかもしれないけどね」

 どうして違う人間かもしれないなどと思ったのだろう。これほど似ているのに。
 別人になりきることなど、『彼』には朝飯前だった。変装が得意だった彼は、口調や態度、仕草まで、ほとんど完璧に違う人間を演じて見せていたものだった。 
 紐を解かれて尻を覆っていた布が外される。むき出しにされたそこに再びロデリックの手が触れ、シェリルの体が小さく震えた。豊かで柔らかい双丘を撫で回される。香油がぬめる感触が、彼女の肌を艶かしく刺激した。
 ただの香油じゃない。だから先ほどから、妙なことばかり考えていたのだろうか。そう言えば先日、女性であるサラに塗ってもらった後も、体の芯の深い部分に小さな火を放たれたような気がした。
 尻を探るロデリックの指先がさらに奥深く、脚の間に入り込もうとしている。シェリルは力を込めて、固く脚を閉じた。だがそうすると、下腹部が余計に熱くなる。
「そんなに硬くならないで。もうちょっと楽にしてよ」
 苦笑混じりの声が聞こえ、力むあまりに微かに震える彼女の尻が、軽く数度叩かれた。
 この状況で寛げる方がどうかしている。シェリルは答えることもできず、もはや形も分からないほどに混乱した感情と、体の中心から沸きあがってくる切ない衝動にかき乱されるだけだった。
 髪がどけられた首の後ろに、温かいものが触れる。指ではなく唇だ。
「こっち向いて」
 右肩をつかまれ、体を反転させようと力が込められた。シェリルは首を振ったが、彼の力に逆らうことはできなかった。
 あっさりと体を翻される。慌てて右腕でむきだしの胸を覆い、紐が解かれた下着を左手でずり上げて、局部を隠した。
 シェリルの顔を覗き込んでいるロデリックと目が合う。
 間違いない。


 十六歳の頃、シェリルは一人の青年に出会った。
 彼へ抱いていた感情は一言ではとても言い表せなかったが、最も解りやすい言葉をひとつ選ぶなら、それは恋だった。
 この辺境の地への入り口となる山脈を下ったところで、彼とシェリルは東と西へと別れた。広大な大陸で離れ離れになれば、もう決して会うことはないだろう。そう思っていた。
 

 蝋燭のあえかな明かりに照らされた彼の瞳には、特別な感慨が浮かんでいたかどうか分からなかった。絶えず揺れ動く炎の頼りない明かりは、瞳の光も揺るがせて感情を読めなくさせてしまう。
 シェリルが一言も発せずにいるうちに、ロデリックは目を逸らして再び香油が入った壷を開けた。初夏に咲く紫の花の香りが薄暗い空間に溢れる。
「ねえ……」
 肘をついて上体を起こしながらシェリルは声を上げたが、その後の言葉が続かなかった。
 どうして、こんなところにいるの。
 ずっと別人の振りを続けていたのは何故。
 東に戻ったはずなのに、何故大公の軍なんかに入っているの。
 聞きたいことがありすぎて、それがいちどきに押し寄せて、考えがうまくまとまらない。
 けれど無数の疑問も思考も、涙がこみ上げるような巨大な感情に静かに押し潰された。
 会いたかった。
 ずっと、もう一度会いたかった。      
 しかし口には出せなかった。代わりにシェリルの喉と胸が引き絞られ、彼女は息を詰まらせた。
「まだ終わってないから、寝ててってば」
 香油を足した手で、ロデリックは穏やかにシェリルの額を押して、彼女をもう一度寝台へと倒した。
 シェリルは従順な性質でもないが、体の芯が熱を持ち、頭が熱くなり始めている時には、彼にはほとんど逆らえた試しがなかった。あれから何年も経っているのに、今も彼女は不本意に思いながらも従順に、彼の言う通り素直に体を横たえた。
 ロデリックは寝台の端に移動し、シェリルの脛に香油を塗り始める。骨に沿って肌を撫でられ、その指先の動きにシェリルは陶然とした。
 膝を掌で包まれる。こそばゆさが這い上って一瞬腰が浮く。彼女は目を閉じて眉を寄せた。唇を噛んで、乱れ始めた吐息をこらえる。
 濃密な花の香りを放つ油で濡れた、温かい掌が太ももに触れた。そのままゆっくりと撫で上げられる。シェリルは再び固く脚を閉じ、艶かしい刺激に耐えようとした。
 彼の手が脚の付け根に近づく。シェリルは目を開けて、声を上げた。
「待って。もう、いいよ」
 寝台の横に立っている彼は、顔も上げずに答える。
「君はよくても、こっちはよくないの」
 滑り上がったロデリックの手は、彼女の脚の間に触れる寸前で太ももから離れた。シェリルが紐が解けた下着で覆う局部を飛び越え、彼女の臍の下に触れる。柔らかく締まった腹を撫でられ、恥ずかしさのあまり息が乱れた。
 彼は一歩体をずらしてシェリルに近づいた。冷めて乾いた横顔を見つめていると、無限の懐かしさと、まだ信じられない気持ちが押し寄せてくる。
 見つめていたロデリックが振り向いた。鼓動が高まり、弾け飛びそうになる。
「手、どけて」
 鳩尾の肌を撫でていた彼の手は、胸へと滑り上がろうとしていた。胸の膨らみを覆い隠す彼女の右腕を軽く押して、どけようとしている。彼女は首を振った。
「いいよ……」
「だから、こっちはよくないんだってば。どけて?」
 わけのわからない熱に浮かされ、半分朦朧としているシェリルの腕は、決して頑なな力はこもっていない。ロデリックがその腕をどけようと思えば、容易にできたはずだった。
 だが彼はそうはせず、シェリルを見下ろしたまま穏やかにそう言った。口調は依頼でも、こんなときの彼の言葉は、彼女に取っては常に命令だった。
 ロデリックはシェリルから目を逸らさない。彼女も逸らすことができない。無言のまま、呼吸だけが淡い喘ぎに変わっていく。胸を押し潰しているのは感慨なのか、それとも官能なのか、シェリルには考えることもできなかった。  
 赤らんだ顔で彼を見つめたまま、シェリルは胸を覆っていた手をそっとどけた。それを見た彼の顔が、ゆっくりと笑みを刻む。彼女は息をつくこともできない。

 なんて優しく微笑む人なのだろう。
 十六歳の頃、初めて彼と出会った時にも、同じことを思った。
 ロデリックとしての彼がぎこちなく微笑むのも、数度目にしたことがある。だが、今彼が浮かべている微笑みとは、同じ顔、同じ人間であるはずなのに、全く印象が違っていた。それともそれも、シェリルの願望と思い込みが、そう見せているだけなのだろうか。
 香油に濡れた手で、乳房を押さえられる。息を殺していたせいで、小さな吐息がシェリルの唇から漏れた。
 ロデリックの指は、肋骨をなぞるように肌を滑る。骨の上の肌を撫でられると、シェリルは弱い。それを発見して、感覚を鋭敏に開発したのも彼だった。
「ふっ……あ……」
 我慢できずに、吐息と共に掠れた声が漏れる。
 乳房をぎゅっと握られた。そこに感じる男の肌の熱と力が、シェリルの意識を霞ませる。
「司令官様には、もう何人も侍女がやられてるけど、あんなにスゴイ声出して喜んでたのは君だけだよ。ほんと、男に目が無いよねえ」
 その言葉は、ここのところずっとシェリルを悩ませてきた、最も爛れた傷口に触れた。
 しかし怒りと屈辱が沸くものの、蔑みと慈愛がこもった彼の視線が突き刺さると、へなへなと意識がくず折れる。瞳に力が入らない。
 ロデリックは、だらりと横たわったままのシェリルを見下ろし、指先で彼女の乳首をつまみあげた。
「く……ん……!」
 甘い刺激が鋭く突き刺さり、シェリルは目を閉じて歯を食いしばった。しかし無意識のうちに、力を込めた腰が切なくくねる。 
「一晩中、君の声が部屋の中から聞こえてきてさー、僕ともう一人の見張りなんか、もう気まずいったらなかったよ。──よっぽどよかったんだね」
 彼女のつんと固く尖った薔薇色の蕾を指先で撫で、つまみ、押し潰して玩びながらロデリックは嘲笑うように囁いた。
 あの夜グレンの寝室をシェリルが訪れた時、入り口にロデリックが立っていたことには気づいていた。しかし翌朝、彼女が寝室を出た時には、別の士官たちが見張りに立っていたのだ。夜が更ける前に、見張りは交替したのだと思っていた。
 全て聞かれていたのだ。羞恥で顔がさらに赤らみ、もう彼を見つめ返す気力も無い。
「結婚もしないで、ああいう風に男たちと適当に遊んできたの?」
「違うよ」
 シェリルは目を開き、やっとロデリックを睨み返した。生温かい薄笑いを浮かべた男は、司令官付の有能な副官のものではない。彼女が恋していた男に他ならなかった。
「何が違うの」
 彼は右手でシェリルの乳首を玩んだまま、左手を脚の間へと伸ばす。紐を解かれた下着でそこを覆っているシェリルの手を今度は無造作にどけ、彼女の手から下着を取り上げると、床へ放り投げた。
「待って。やめて」
 秘部に手を伸ばそうとするロデリックの手を振り払い、シェリルは我に返ったように体を起こそうとした。
「動いちゃだめだってば」
 ロデリックは両手でシェリルの腕をがっちりと掴んだ。片膝をついて、彼は寝台の上へと乗り上がる。シェリルの体を跨ぐように膝立ちになると、真上から彼女を見下ろした。薄暗い視界がさらに翳った。
「どうせ力入らないでしょ? おとなしくしてて」
 彼の暗い瞳から、得体の知れないものが流れ込んでくるようだ。それに絡めとられたように、シェリルは本当に動けなくなった。薬が混ぜられたであろう香油のせいだろうか。彼は決して恫喝しているわけではない。なのに逆らうことができない。
 彼女の黒い瞳から小さな反抗心が抜け切り、再び情欲に濁ると、ロデリックは目を細めて微笑んだ。その顔を見ると、何もかもどうでもよくなってしまう。シェリルの視界は徐々に狭まり、彼しか見えなくなる。
 シェリルが動きを止めると、ロデリックは再び右手をシェリルの局部へと伸ばした。
「脚、ちょっと開いて」
「やだ……」
 慈悲を請うように、シェリルは彼を見上げる。ぴたりと閉じた脚が大きく震えた。黒い茂みを蓄えた彼女の柔らかい恥丘を撫で、ロデリックはもう一度言った。
「やだじゃないの。開いて」
 最初から勝利を確信している彼の声は、だからこんなに優しいのだろうか。涙ぐみそうになりながら、結局彼の言う通り、膝を緩めて僅かに脚を開いた。
 その間にするりとロデリックの手が滑り込む。彼の指先は、脚の付け根まで濡らした熱い粘液を捉えた。
「もうぬるぬるじゃん」低い笑い声と共に彼は囁いた。「司令官様とがっつりヤる前から、こんなに濡らしてていいの? 夕ご飯食べてる間、ずーっとパンツ濡らしてるわけ?」
 罵られ、辱められて、顔も頭も熱くなる。下腹部が震え、それに従ってシェリルの豊かな乳房も、微かに愛らしく震えた。
「だって……あなたが変な薬塗ったりするから」
 弱々しく手を伸ばして、シェリルはロデリックの腕を掴んだ。それを押し返そうとしたのだが、全く力は入らなかった。指先が艶かしく動いて、彼の腕を撫でるばかりだ。
「ふーん。まあ、そういうことでもいいけど」
 意地の悪い笑みを浮かべながら、彼は指先を娘の陰裂に潜り込ませた。ぷちゅと愛液が弾ける音がする。
「ううっ、あっ!」
 自分の愛液の淫らな音は、耳から入り込んでシェリルの脳を揺さぶった。快楽に彩られた声が鋭く喉を突いて出た。
 彼の指は裂け目を滑り、淫靡な音を立てながら、彼女の脚の間にある小さな肉の蕾に触れた。そこを探り出すように指先で撫でられる。シェリルはこらえきれずに、甘い嬌声を漏らした。
「あ……ああっ! やっ……あっ!」
 突然、唇がロデリックの唇で覆われた。
 かさついた唇を潤すように、彼の舌が彼女の唇を舐める。それはすぐに口の中に入り込んできた。
「んっ……」
 くちづけからは愛情など感じなかった。汚れた性急な情熱が伝わってくるだけだ。けれどそれはシェリルの心の渇いていた部分に、冷たい湧き水のように深く沁み込む。
 微かな呻きと共に彼の舌を受け入れたシェリルは、両手でロデリックの頬を挟んだ。動き回る彼の柔らかい舌を舌で捕え、吸った。だが彼は巧みにそれを逃れると、再び彼女の口の中を奔放に這い回る。シェリルの口の端から唾液が溢れたが、誰のものか分からなかった。少しの間、舌と舌が触れ合い、唾液が混じり合う音、男女の荒い息遣いが、狭く薄暗い部屋に満ちた。
 ややあって唇が離れる。微かに息を弾ませて、ロデリックは微笑んだ。
「静かにしなきゃダメだよ。主寝室より壁が薄いんだから、お隣に聞こえちゃうって」
 シェリルは慌てて唇を噛み締めた。
 彼女は個室なので、隣は侍女たちの部屋ではなく客室だ。そこには今は士官たちが滞在している。
「シェリル」
 シェリルが潤んだ目で見上げる男が、彼女の名前を呼んだ。それは何年も前、数え切れないくらい耳にした響きと全く同じだった。
「大声出さないって約束できる? それなら、夕ごはん食べる前に一回いかせてあげる。こんなエッチな気分のまま、司令官様の前でごはん食べるの嫌じゃない?」
 シェリルの胸は大きく震えた。
 昂った体を自分で慰めても、グレンと激しい肉欲を貪っても、シェリルは一度も悦楽の絶頂に達したことがない。今まで彼女をそこに導けたのは、彼だけだった。
 感慨か官能か、やはりよく分からない。ただ熱くて重い感覚が体中に満ち、それに喘ぎながらシェリルはロデリックを見上げて頷こうとした。
 しかし彼女を優しく見下ろしていた男の顔が、突然強張った。 

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~ Comment ~

はじめまして。 

コメントつけさせて頂くのは初めてですが
密かに更新を楽しみにしている者です。
シェリルが登場する物語にはやはり、コヨーテが出て来て欲しいと思っていた私には 今回、とても嬉しい展開でした。
良い意味で予想を裏切られました♪
読んでしまうのが勿体なく、ワクワクドキドキしながら読ませて頂きました。
これからも楽しみにしています。

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RE: clearさん 

初めまして。
コメントをいただき、ありがとうございます。

推敲しながらの更新なので、スピードが遅いですが、楽しみにしていただいるとお聞きして、とても励まされました!

一章からすこーしずつ伏線を撒きつつ、ギリギリまで分からないように見えるといいなあ…と思いながら書いてました。
少しでも驚いていただければ幸いです。
読んでしまうのが勿体ないなんて、それこそ勿体ないお言葉です…!

今後も精進しながら頑張ります!
ありがとうございました。

RE: シークレットコメントいただいたAさん 

こんにちは!
コメントをありがとうございます。
いつも楽しみに読んでいただいて、本当にありがとうございます。

そうです、アレはあれでした(←?)
ギリギリまで分からないといいなーと思って書いていたので、叫んでいただいて光栄です(笑)

ふたりを気に入ってくださって&幸せを願っていただいて、ありがとうございます。
あれから年月が経って、どちらも少しずつ事情が変わっているので、すんなりまた元通りに…というわけにはいかないと思いますが><
こちらのお話は、「魔女とコヨーテ」と時間軸や舞台は同じですが、あくまで違う話ですので、恋愛(あれでも…一応…)を主眼とした「魔女~」とは、少し雰囲気が違うかもしれません。
今後の展開がご期待に沿えるといいのですが…頑張ります!

ありがとうございました。

いつも楽しく読ませて頂いてます 

以前から楽しく読ませて頂いてます。
別人だったらシェリルが可哀想って思っていたので、コヨーテが出てきて、ちょっと興奮してしまいました。
やっぱり、シェリルとコヨーテには、二人で幸せになってもらいたいと思います。
この続きがきになってしょうがないです。
これからも応援してますので頑張って下さい。

RE: 拍手お返事 >Kさん 

拍手、ありがとうございます!

あの瞬間は、結構前から考えていたので、驚いていただければ嬉しいです^^
推敲していると、色々と不出来で恥ずかしいですが、今後も、ストーリーにはできるだけ緩急つけていきたいと思います。

精進しながら頑張ります。

RE: マックさん 

コメント、ありがとうございます。
お返事が遅くなってすみません。

拙い話ですが、楽しく読んでいただいて、ありがとうございます。

いくらアイコンタクトしても返ってこないので、シェリルはほとんど別人だと思っていたようですが…。
いいんだか悪いんだかです…^^;

二人の幸せを祈っていただいて、ありがとうございます。
お話はまだ続きますので、ご期待に沿えるかどうか分かりませんが、お時間がある時に引き続き目を通していただけると嬉しいです。

ありがとうございました~!


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