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魔女とコヨーテ」
第三話 道連れ

第三話: 道連れ 7

2009.05.04  *Edit 

 コヨーテは肩から外套を外し、腰掛けたままの足元に無造作に放り投げた。
「君も脱いで。見せて」
 恥ずかしさに体が震えた。さらに顔が熱くなる。服の胸元を押さえてためらっていると、さらに彼は言い募った。
「早く。夜が明けちゃうよ」
 そうだ。時間は無限ではない。シェリルはやっと意を決し、自分の手で服の前を留めている紐を一つずつ解き始めた。
 その下に着ている下着の紐も、彼に催促されるまでもなく従順に解く。そんな彼女の様子を見て、男は思わず笑みを浮かべた。彼女は欲望には素直で正直だ。
「胸、見せて」
 コヨーテの声に抵抗もせず、シェリルは解いた服と肌着の前を開く。さすがに体が震えた。こちらを凝視している彼は、外套を取っただけで、服をしっかり着ているのが不公平に感じられる。
「もっとこっち来て」
 彼は両膝を開き、彼女の腕を引いてその間に招いた。
「触っていい?」
 微笑みながら問いかける彼に頷くと、伸びた手が乳房を掴む。その手は軽く汗ばんでいた。
「柔らかい……幸せ」
 邪気の無い顔で呟き、彼はやや上体を伸ばして、もう片方の乳房に顔を埋めた。湿った温かい舌で、滑らかな乳房を撫でられる。思わず目を閉じた。
 豊かな胸が好きだと以前彼が言っていた。少しでも彼を喜ばせているだろうか。
 胸を撫でられながら淡い心地よさに浸っていると、突然乳首をつまみあげられ、全身が粟立つ程の快感を覚えた。反対側の乳首にも彼が吸いつく。
「ん……あ……!」
 声が大きいと言われたことと、寝静まった村の広場にいるということを思い出し、喉から漏れそうになった声を噛み殺した。立ったまま快楽をこらえると、僅かに足が震える。
「乳首、気持ちいい?」
 早くも固く尖った薔薇色のそこを舌と指で弄びながら、コヨーテはシェリルを見上げた。顔を赤らめたまま何度か頷くと、乳首に軽く歯を立てられる。我慢できず、再び彼女は細い声を漏らした。
「ちゃんと言って。気持ちいいの?」
「……うん」
「うん、じゃ分からないよ」
 まるで罰のように、再び乳房の先端を甘噛みされ、もう片方を柔らかくつねられる。どうにか声をこらえても、深く悩ましい溜め息が漏れ、彼の前髪を軽く揺らした。
「気持ちいい……」
 答える声が掠れ、嗚咽のように震えた。
「よかった」
 小さく笑い、コヨーテはもう一度彼女の乳首を口に含んだ。月明かりで茶色く見える彼の赤毛が、肌を撫でる。自分の乳房を他ならぬ彼に弄ばれているの見下ろすと、下腹部が熱くなる。
 彼の頭を思わず撫でる。汗ばんだ髪の間に指を潜らせると、彼女の乳首に吸い付いたままの彼も顔をあげた。
 コヨーテがシェリルの肌から唇を離す。
 シェリルは地面に敷かれた外套の上に膝立ちになって顔を下げると、彼の唇と自分の唇を重ねた。彼がそうして欲しそうだったからだ。すぐに唇を割って、彼の舌が忍び込んでくる。彼女も舌でそれを捕らえようとしたが、彼は全く構わずに歯茎や顎の裏を荒々しく撫で始めた。唾液の匂いが鼻につき、彼女を興奮させた。

「僕のもして」
 唇を離した後、コヨーテは呟いた。
 今さら意味を問うまでもない。シェリルは黙って膝をついたまま、彼の股間を見下ろした。服に包まれたそこは、僅かに膨れ上がっている。そっと手で触れると、温かかった。
 コヨーテは自分で動く気が無いようだ。
 恥じらいながらも、ためらう時間が惜しく、彼女は彼の顔色を伺いながら、汗ばんだ手でベルトを外し始めた。ズボンの留め具を全て外して服を広げると、下着に包まれたそれが覗いた。
「今度はちゃんと男物だよ」
 笑いを漏らしながら、彼はシェリルの髪を撫でた。その手触りに陶然とする。
 顔を上げ、二人は笑いあった。
 以前に彼と抱き合った時は、女に変装していた彼は女物の下着を身につけていたのだ。そんなささいな思い出を、こうして夏の屋外で笑い合っていられるのは、ひどく不思議だ。
 下着の紐を解いて前を開くと、硬さを含んで半分ほど大きくなった彼自身が見える。まだそれを扱いあぐねているシェリルに、優しい声がかけられる。
「根本から握って」
 恐る恐る右手で掴むと、そこがむくむくと動き、硬さを増すのが分かった。異性の性器の神秘に、彼女は純粋に好奇心を刺激された。
「もっと強く握っても大丈夫。でも爪には気をつけてね」
 シェリルは頷き、それをぎゅっと握った。
 彼女の小さな子供のような手に、自分の一物が納まっているのを見て、彼はさらにそこに血が集まるのを感じる。
 聞きかじりの知識や今までの彼との睦み合いで、次にどうすれば彼が喜ぶか、何となくシェリルは分かった。握った手を上下に動かすと、彼は首を捻って溜め息を吐き出した。
 何度か繰り返すと、コヨーテは再びシェリルの髪に手を当て、上ずった声で呟く。
「シェリル……口でして。舐めて」
 まるで小さな少年が母親に甘えるような口調だ。深い愛しさを感じ、彼女はそれを手で握ったまま、小さな穴から透明な液を漏らし始めている彼の先端に口づけした。
 汗がこめかみから耳を伝い、顎に滴る。
 手の中にある彼自身も汗を含んで、小水の香りすら混じった生々しい匂いを強烈に放っていた。柔和な顔立ちの彼の体に、こんな凶暴で醜悪なものがあるのが、目の前にしても信じられない。
 しかし嫌悪感どころか、愛しさばかり溢れた。舌でそっと舐め回す。汗のせいか、塩辛かった。彼の呼吸が乱れるのが聞こえる。
「あっ……」
 開いた口で柔らかくその先端を包むと、コヨーテは顔を歪めて声をあげた。
 彼女が不器用に口の中でそれをもてあましていると、再び彼の弱々しい声が降ってくる。
「もっと奥まで咥えて。吸って」
 シェリルが頷く前に、彼は腰を軽く腰を突き上げ、彼女の喉の奥をついた。巨大な異物の苦しさにえづき、涙がこみあげた。  
 だが彼の快楽に満ちた喘ぎを再び耳にすると、例え涙が出るほど苦しくても、彼を喜ばせたいと思う。彼女は何度か自ら彼を奥深くまで飲み込んだ。
 吐き気がこみ上げる度に柔らかい口内の肉が収縮し、男に悦楽を与えて喜ばせた。
「もういいよ……」
 このままではまた彼女の口の中で果ててしまう。彼はそっと自分に吸い付く彼女の頭を離した。彼女の舌と口で導いてもらうのもいいが、やはり彼女も喜ばせてやりたい。

「もう一回立って」   
 コヨーテの言葉に、シェリルは素直に立ち上がった。再び彼を見下ろす格好になる。
 しかし彼はまだ座ったまま、ほぼ目の前にある彼女の股間に触れた。そして両手を尻に回し、彼女の腰を抱き寄せると、服の上から恥丘に顔を埋める。そこに押し付けられたコヨーテの鼻の骨の感触をはっきりと感じ、シェリルは羞恥か陶酔か分からない波に襲われた。
 少しの間彼女をそうして抱いていた彼は、顔を離すと彼女を見上げた。
「下着脱いで」
 これ以上ない程に赤くなった顔に、さらに血が上る。
「でも……」
 腿を擦り合わせてためらうシェリルに、彼は微笑みかける。
「脱がなきゃ入れられないでしょ」
 それはそうだが、自分で脱がなければいけないのだろうか。できれば彼の手で脱がせて欲しいが、そう頼むのも恥ずかしい。
 しばらく甘く痺れた頭で考え迷った末、シェリルは膝丈のスカートの下に手を入れ、下着の紐を解き始めた。
 普段旅をする時は、動きやすいズボンを穿いているが、今回は旅芸人の扮装をしていたので、スカートを身につけている。
 両腰の紐を解き、恐る恐るスカートの下から下着を抜き出すと、素早く伸びた彼の手がそれを取り上げた。
 彼はそれを広げてしげしげと覗き込む。
「やめてよ……」
 羞恥に耐え切れず、シェリルは口元を押さえて下着を取り返そうとしたが、腕を緩やかに押し返される。
「だめ。……濡れてるね。僕のしゃぶってて興奮した?」
 コヨーテはわざとらしく、彼女の下着をひらひらと振ってみせた。股間のあたりに染みができるほど、しっとりと濡れているのが見える。
 自分の体がどれほど熱くなっているかを知り、さらに彼女は興奮した。擦り合わせた腿の間が、ぬるぬると潤っている。そこがさらに熱を帯びてくる。
 彼は下着を傍らに置くと、再び彼女を下から覗き込んだ。そのどこか挑戦的な瞳には、先ほど快楽に揺らいでいた霞はもう無い。
「めくって見せて」
 一瞬何を言われたのか分からなかった。すぐにスカートのことだと思い当たる。
「やだ……だって……」
 限界以上に溢れた羞恥に、彼女は喘いだ。自らの手で下着も穿いていない秘部を彼に見せるのは、さすがにできそうにない。
 しかし彼は彼女が困惑すればするほど、それを楽しんでいるようだった。意地の悪い笑みを深くして、さらに言い募る。
「だってじゃないよ。早く。入れる前にもう少ししてあげるよ」
 コヨーテの涼やかな声にくらくらした。本当にこれからこの男と重なるのだ。欲望が急速に高ぶり、瞳が潤んで喘ぎが漏れた。
 甘く霞んだ意識の中、シェリルは彼の目の前でスカートをそっとたくし上げた。

 湿気にざらついたような月の光に、少女の黒々とした陰毛が照らされている。
 その淫靡さに、彼もまた軽いめまいを覚えた。欲情のあまり頭が霞む。
「少し脚開いて」
 静かに言うと、彼女は素直に脚を軽く開いた。いつもこれぐらい素直だと可愛いが、それではつまらないだろう。こんな時だけ素直だからこそ、シェリルは可愛いのかもしれない。
 柔らかく縮れた繊毛を軽く撫で、恥丘に唇を触れさせる。そして彼女の脚の隙間から、その熱く濡れた裂け目にそっと触れた。べっとりとした愛液がまとわりつく。
 裂け目に軽く指を差し込み、ゆっくり手前に動かすと、さらに指を奥まで入れて、女の快楽を呼ぶ肉の芽を探した。快楽に小さく膨らんだそれが指の腹に当たる。彼はそれを小刻みに優しく震わせた。
 股間から上ってくる鋭い快感と僅かな痛みに、シェリルは思わず声をあげた。めくっているスカートの布地を握り締める。
 男は彼女の秘所をまさぐりながら、じっと顔を見ている。どんな表情をすればいいのか分からず、シェリルは掠れた声で見ないでと囁いた。それはすぐ側の噴水の水音にかき消されたのか、それとも無視されたのか、彼は聞き入れずにじっとシェリルを見つめ続けた。
 あんなに振り向いて欲しかった彼に、こうして見つめられているのに。溢れてくる切なさが胸を焼いた。
 何がこんなに切ないのだろう。明日になれば、彼がマルタの恋人であるユージンに戻ることなのだろうか。それともこんな肉欲に歪んでいる表情しか見つめてもらえないことだろうか。
「もうちょっと脚開いて」
 それでも彼の言葉には逆らえなかった。
 もぞもぞと僅かばかり脚を広げると、彼は珍しく苛立ったように、シェリルの膝を掴んだ。
「もっと。──こっちに足かけて」
 彼はシェリルの腰を片手で支え、掴んだ膝を持ち上げて、彼が腰掛けている噴水の縁に足をかけさせた。階段を上る時のように、大きく足を上下に開く姿勢になる。羞恥に再び震えたが、彼が望んでいることなら、このまま耐えようと思った。
「そのままね」
 囁くと、男は前後に開かれた彼女の股間に顔を潜らせる。
 今まで愛撫されていた敏感な場所が、さらに彼の両手の指で押し広げられた。
「うっ……あ……あっ」
 純粋に恥辱だけから、シェリルは切なく喘いだ。彼の声も言葉も恥じらいも、すべて快楽に繋がっている。

 秘唇の端を軽く持ち上げてそれを包む皮をめくると、男の目の前で彼女の陰核がむき出しになった。彼はそっとそこに舌を当てた。
「わ……あっ!」
 甲高い叫びがシェリルの口をついた。痛みにも痺れにも似ている、鋭い快感が突き上げてくる。だが彼は手加減無しにそこを舌でねぶり続けた。
 足が震える。喘ぎながら、彼女は首を左右に振り、スカートを握り締めて快楽に耐えた。
 真夜中。ぼんやりと月明かりが照らす広場の真ん中で、上着をはだけて胸を見せ、スカートを自分でめくりあげて下半身を露出させている。そればかりか脚を広げ、そこを座った男に舌で愛撫させているのだ。その男も猛った性器のみを露出させている。あまりに淫猥で倒錯的にも感じられる。
 こんな屋根の無い屋外で。例えばすぐそこの鎧戸が開いたら、この痴態を見られてしまう。
 自分と彼が淫らだと思えば思うほど、脳内が熱くなり、下腹が収縮していくようだ。陰核から上ってくる快感が、全身を駆け巡る。小さな叫びを断続的に漏らしながら、いつの間にか僅かに腰をくねらせていた。
 彼女の動きに気づき、男はそっと笑った。
 包皮をめくりあげていた指を、彼女の濡れそぼった悦楽の入り口に伸ばす。その場所のあまりに頼りない柔らかさ、熱さに彼はいきり立った。
 指をゆっくり押し入れる。
「あっ……あーっ! あっ、あ……!」
 噴水の音でもかき消せないような、深い歓喜の声を少女があげた。やはり彼女は中を探られる方がお気に入りのようだ。この分なら、すぐに挿入にも快楽を覚えるようになるだろう。
 そう考えるとふと疑念が芽生えた。
 前に彼女を抱いたのは春の頃だ。その後、この惚れっぽいが、臆病で気の強い少女は、一体男と寝たのだろうか。
「ねえ」
 指を緩やかに前後に動かしながら、彼は喘ぐ娘に尋ねた。
「すっごい感じてるみたいだけど、あの後何人ぐらいに鍛えられたの? もう大分慣れた?」
 嬌声を途切れさせ、シェリルは彼を睨み下ろした。前に同じことを尋ねた時、『誰とでも寝るわけじゃない』と、彼女に噛み付くように怒鳴られたのは覚えている。
「誰ともしてないよ」
 潤んだ瞳に怒りを浮かべて彼女は言った。
「ほんとかな。じゃ、感じやすいのは生まれつき?」
 従順そうな外見の割に、意外と気が強く、素直でない彼女には、時折こうして底意地の悪い真似をしてみたくなる。
「知らないよ、そんなの」
 紅潮した顔で嗚咽混じりに怒っているシェリルを見ると、心が静かに解けていく。たとえ彼女の言うことが嘘でも、この表情になら騙されてもいいと思った。

 彼女の脚の間から顔を離し、指を引き抜いた彼は噴水の縁に腰掛けたまま再び上体を起こした。
「いい? じゃ、この上に座って」
 コヨーテの股間から立ち上がる一物を目にして、彼女は身を竦ませる。
 まだ二回しか男を受け入れたことがなく、いずれも激痛を伴った。座ったまま脚を広げて重なるのはかなり痛そうに感じられる。
「待ってよ。……そんな体勢無理だよ。痛そう」
「ああ……ま、痛いかもしれないけど。ほんとに誰ともしてないの?」
「してないってば……怖いよ」
 シェリルの呟きに、彼の茶色の瞳が大きく揺らいだ。彼は立ち上がり、シェリルの髪を数度撫でると、囁いた。
「そっか。じゃ、靴脱いで」
 そう言うと、自分も屈んで靴紐を手早く解き始める。
「どうするの?」
「いいから、早く」
「あたし、サンダルだから……」
 もじもじと言葉を続け、一向にサンダルを脱ごうとしないシェリルに、靴を脱いで立ち上がった彼は、眉を寄せてみせた。
「あ、そ。脱がないんならいいよ」
 言うが早いか、男は縁を乗り越え、清水に溢れた噴水の内側に裸足の足で入り込んだ。
 シェリルが彼の意図を悟った時には、彼女はコヨーテに抱きすくめられ、小さな体を軽く持ち上げられて、同じく噴水の内側へ落としこまれる。足先に感じる夜の川の水は、驚くほど冷たく、心地良かった。噴水の深さは足首が浸かる程だ。見た目より浅い。
 彼はシェリルの体を回して後ろから抱きつくと、彼女の体を抱えたまま噴水の中央の像までゆっくりと歩いた。水瓶に近づくと、水しぶきが跳ねて、顔と体にかかる。
「それにつかまって、寄りかかって」
 彼は背後からシェリルの両腕を掴んで伸ばすと、中央の男の像につかまらせた。像に抱きつくような格好になる。何をさせたいのだろう。
「頭もっと下げて。お尻はこっち」
 彼に腰を掴まれて尻を突き出させられた時、ようやく意図を知った。それを確信させるように、スカートがめくりあげられ、尻がむき出しにされる。
「待って……恥ずかしい。やだ」
 尻を突き出している姿勢に耐え切れず、シェリルは腰を引こうとしたが、コヨーテにがっちり押さえられた。
「しょうがないじゃん。地面に寝転がるわけにいかないし、座ったままは痛そうでヤなんでしょ? あんまりワガママ言わないでよ」
「ワガママって……だって」
 この格好が恥ずかしいのの、どこが我儘だ。振り向いて言い返そうとしたが、欲情に瞳を潤ませ、口調とは裏腹にいつになく余裕が無いように見えるコヨーテを見ると、何も言葉が出なかった。
 それでも彼は彼女と目が合うと、軽く笑ってみせた。
「もう、いい? よくなくても入れるよ。もっとお尻上げて、力抜いて」
 シェリルは爪先だちになって尻を持ち上げる。もう彼を迎え入れること以外考えられない。
 硬いものが秘唇に触れると同時に、そこを強引に押し広げて、それが侵入してきた。
 弾けるような重い痛みに、シェリルは目を閉じて耐える。これだけ痛いのに、絶対に抜いて欲しくはないと思った。
「熱い……!」
 それでも何か訴えたくて、彼女は喘ぎながら呟いた。
「熱い? シェリルの中も温かいよ」
 息を弾ませながら、背後から彼女が愛する通りのいい声が答える。彼女はひたすら頷いた。
「大丈夫? 動いていい?」
 この体勢で挿入したにも関わらず、心配するような声をかけてくる、その彼の狡猾な優しさにシェリルは深く酔い、もう一度頷いた。
 すぐに奥深くまで突き込まれたかと思うと、彼は喘ぎながら、何度も彼女の尻に腰を打ちつけ始めた。痛みと熱さに歯を食いしばりながら、シェリルも喘ぐ。それができる限り彼の耳を楽しませるように、精一杯甘く鳴いた。
  

 彼女の白く肉付きのいい尻を掴みながら、そこから覗く裂け目に深く突き入れる。内部の温かさ、柔らかさ、そして何より少女のあげる切ない声に彼は酔った。
 まだ彼女の中は少し狭く、我慢しているようだが少し痛そうだ。それでも痛いと言い出さないシェリルを心底愛しいと思った。
 やはりこの少女は彼しか男を知らないのだろうか。そうであって欲しい。背筋を這い登る快楽を味わいながら、彼はそう願った。
「平気? 痛くない?」 
 もう一度彼女に声をかけると、シェリルは首を振って弱々しく答えた。
「大丈夫……」
 健気だと思う一方、どこかでそんな彼女をさらに責めてやりたい気がする。いつも素直ではない彼女をちょっと苛めてやるのは、思わぬ快感を呼んだ。
 彼はさらに激しく腰を動かす。こらえきれぬように漏れたシェリルの呻きが、鼓膜を甘く揺らした。

 今回の旅にしても、最初に会った宿場町でシェリルに気づいてはいた。
 だが、彼は既に踊り子マルタと情を交わした後だった。
 シェリルもかわいいと思うが、マルタの可憐で妖艶な魅力は別次元だ。飽きっぽい彼は、それにすらそろそろ食傷気味ではあったが、マルタの踊りの技術や魅力を併せて考えると、まだ離れるのは惜しいと思っていた。シェリルに馴れ馴れしく近づき、嫉妬深いマルタの不興を買いたくはなかった。
 それにシェリルたちも何かの仕事中だろう。本気で旅芸人に転職したにしては、演奏がへたくそ過ぎた。特に太鼓。
 シェリルたちとは全くの初対面の吟遊詩人、ユージンとして振舞った結果、時々もの問いたげに視線を投げてくるシェリルを、ほとんど無視する形になった。それがいくらか彼女を傷つけていることは分かっていたが、犬におあずけを食らわせるような、嗜虐的な心地よさを味わわせてくれた。我ながらあまり趣味の良い話ではないが。
 かつてレナード公子として振舞っていた頃の彼に、シェリルが強く惹かれていたのは知っていた。あれだけ丁寧に優しく接すれば、当然だろう。
 そして同じ外見を持つ自分自身にも、レナードへの想いに引き摺られるように、彼女が興味を持っているような気はしていた。多少無視したくらいでは、シェリルが自分を憎んだり嫌ったりするようなことは無いと思っていた。

 最初に気になったのは昨夜。
 演奏の途中で、シェリルたちのパーティーの笛吹きが抜けた。童顔の小男である。
 先に寝たのだろうと思ったが、遅くまでマルタを囲んで飲んだ後、どやどやと大部屋に戻ったが、小男の姿は無かった。
 その時は大して気にも留めなかった。
 笛吹きはシェリルの仲間の中でも、特にマルタに執着しているようだったが、彼女は全くと言っていい程相手にしていなかった。そのマルタが自分に夢中なのは、彼の優越感を大いに満足させた。
 小男は夜明け前に静かに戻ってきた。マルタに相手にされないので、もう一軒の酒場ででも、ふてくされて飲んでいたのだろうと思った。
 朝方、同室の人間たちは、朝食を食べに起き出した。部屋にはマルタと自分、笛吹きと太鼓叩き、そしてシェリルの仲間の小男だけが残って眠っていた。
 そこでつい底意地の悪い衝動が湧き、寝ぼけ眼のマルタの体を探って、小男に見せつけるようにその場で彼女と交わった。小男が眠っていても、それならそれでいい。ここのところ、大部屋でこっそりとマルタと愛し合う緊張感に病みつきになっていた。
 笛吹きと太鼓叩きのことは、彼は気にしたことはない。二人とも、全くマルタに心酔し、彼女の役に立てさえすればいいようだった。
 しかしその後、ひと眠りして、マルタにひきずられるように、昼食を食べに広場に出た彼は、例の小男がナイフで大道芸を見せ、広場の観客の拍手を買っているのを見た。
 注目を集めるように、小男の後ろでタンバリンを叩いて音を立てているのはシェリルだった。
 それまでの旅路の演奏では、やる気無く膝などでタンバリンを叩いていた彼女が、別人のように生き生きと楽器を繰り、大きくはないが愛らしい声で歌い、それに合わせて足踏みを交えて軽やかに踊っていた。
 異性を惹きつけてやまないマルタの舞いとは比べるべくもないが、晴れ渡る真昼の空の下、素朴な村の広場で、女と子供たちに囲まれて踊る彼女が眩しかった。
「すごーい。イーミル上手だね。あんなこともできたんだ。シェリルも可愛い~」
 隣ではしゃぐマルタに、無感動に頷いてみせた。
 やがてジャグリングを終え、噴水の側でパンを食べながら、何事か話している小男とシェリルを見て、疑念が湧いた。昨夜小男はどこに行っていたのだろう。
 二人とも小柄で黒髪という、兄妹のような彼らが笑い合っている様子に、勝手に想像力が働き始める。
 マルタにあしらわれた小男と、彼に無視されているシェリルが、互いに愚痴を話し、慰めあうようなことがあったのではないか。昨夜小男はどこかで一人で飲んでいたのではなく、シェリルと一緒だったかもしれない。女性部屋には、シェリルと連れの女しかいなかったはずだ。彼女が気を利かせて少し部屋を空ければ、シェリルと小男は簡単に二人きりになれる。
 まさか、何かあったか。
 その結果、こうして昼間二人で芸など披露し、清々しく笑い合っているのかもしれない。
 考え始めると、落ち着かなかった。
 彼が処女を奪った小柄な魔女が、その豊かな胸やふっくらした尻、その間で絞るように引き締まった腹、腕や顔と違って日に焼けていない白い肌全てを、マルタに振られた哀れな小男に晒し、二人が絡み合う姿すら浮かんだ。
 さほどシェリルに執着しているつもりは無かったが、自分に気があった女が、別の男に身を任せてしまうのはやはり面白くはない。
 果たして今夜も、小男は寝る前にもう少し飲むと言い出し、寝室になかなか戻ってこなかった。
 暗闇の中、マルタがさりげなく体を寄せ、彼をねだってきたが、今夜は眠った振りをしてやり過ごした。既に完全に自分の物になったマルタよりも、今はシェリルの方が気になった。
 大部屋の連中が例外なく鼾をかき始め、マルタも眠りに落ちた頃、彼はそっと隣の部屋の壁に頭を寄せ、聞き耳を立てた。
 極めて情けないが、気になるのだから仕方ない。
 隣の部屋からは、寝藁が擦れ合う、がさがさという音が時折聞こえてきた。声も聞こえないし、情事の音にしては静かだが、眠っている人間の寝返りにしては激しい。
 鋭敏な彼の耳は、少しして誰かが部屋の中で立ち上がり、歩く音を壁越しに捉えた。
 部屋を出て行こうとしている。
 彼はそっと扉に移動する。廊下の前を誰かが忍び足で通り過ぎるのが分かった。足音が通り過ぎた後、僅かに扉を開いて廊下を覗き見ると、天窓からの微かな光に、小柄な女の後姿が浮かんだ。あれはシェリルだ。
 こんな夜中にどこに行くつもりだろう。
 慌てて外套を掴み、彼もそっと部屋から出た。階段を下って廊下を覗くと、シェリルが入り口の扉を開けて外に出るのが見えた。
 まだ大部屋に戻っていない小男と、どこか外で落ち合うつもりか。密会の邪魔をするのは見苦しいが、せめて確認したい。
 彼は廊下を歩き、シェリルに続いて外に出た。どこかへ歩いていくと思った彼女は、意外にも目の前の広場の噴水に立ち寄り、ぼんやりと滔々と溢れる水を眺めていた。
 小男が来る様子は無い。
 思い切って、彼は先にシェリルに声をかけた。
 話し始めた彼女は、やけに一人になりたがった。
 増々怪しい。正直に小男と密会すると言えば、こちらも引っ込まざるをえないものを、理由を告げずにいるあたりに、どうしても意地の悪い真似をしたくなった。
 しかしそうしてねばる内、シェリルの瞳に徐々に変化が現れた。初めて会った時から、そうやって彼を見つめる彼女の瞳は、好奇心と好意と欲情に彩られていた。愛らしいシェリルに、そんな目で見つめられると、構わずにはいられなくなる。
 広場で交わろうと言い出したのは、かまをかけたつもりだった。小男と村のどこかで密会するなら、彼女がそれを承諾するはずがない。この広場で交わっていれば、すぐに肝心の小男に見つかるからだ。
 だが結局シェリルはそれを受け入れた。
 小男とは実際は何も関係が無かったのかどうか、確信には至らなかったが、こうして彼がシェリルを愛撫し、彼女の中に入り込むことで、彼女を喜ばせているのは間違いない。
 それだけでも腹の中に溜まった、もやもやとした感情は薄れていく気がした。 

 後ろでコヨーテの腰がぶつかる度に、彼女の体も前へと押しやられる。繊細に見える彼の、我を忘れたような動物じみた動きに陶酔した。助けを求めるように、掴まっている彫像にさらに強くしがみつく。
 彼女が上体を預けている、石でできた青年は、素朴な村人の服装ながら、長身で逞しい体つきをしていた。丁度その腰の部分に手を回して縋りつき、顔を石の青年の股間に押し当てている格好になる。溢れる水しぶきに冷たく濡れて固いそこは、当然ながら、今シェリルを貫いているもののように、熱く硬く膨らむことはない。
 それでも何故だか彼女は赤面し、倒錯した行為を行っているような錯覚を覚えた。潤んだ顔で彫像を見上げる。石の青年は腰にしがみつく彼女のことなど目もくれず、共に水瓶を合わせ持つ彼の恋人を見つめている。
 たかが彫像なのに、しがみついているものがそっぽを向いているのは悲しかった。背後から体内に入り込んでいる、温かい彼の体に触れて抱き締め合いたい。男の形をした石では、とても代わりにならない。
 何度かシェリルの名を囁きながら、彼女の内部に突き進み続ける彼に、名前を呼び返すことがきないのが淋しかった。本当の名前を知りたい。
 だが、次第に下腹部を中心に熱く膨れ上がっていく感覚に満たされ、何も考えられなくなる。
「あ……あ……はあっ……!」
 耳に響く自分の嬌声は、快楽から出たものにしか聞こえなかった。
 そうだ。この重い感覚は、悦楽なのかもしれない。きっと。絶対にそうだ。
 不意に彼が動きを緩める。
 何かがせり上がりそうだったシェリルは、非難を込めて彼を振り返る。
「ね……」
「しっ!」
 彼は完全に体の動きを止め、彼女の体内から彼を引き抜くと、シェリルの肩を抱いて、急ぎ足で噴水から出た。
 シェリルのぼんやりと霞がかかった頭にも、理由が分かった。向こうの大通りの方から蹄と車輪の音が聞こえる。馬車が近づいてきている。
「こっち」
 コヨーテはシェリルの手を引き、反対の手で外套を掴み、広場の端を通る大通りと反対側へ回り込んだ。膝の高さほどある噴水の縁を陰にして屈み、大通りの向こうから姿を隠す。その間、シェリルは子供のように彼にしがみついているだけだった。
 しかし馬車はあっという間に通り過ぎていった。
「なんだ……」
 コヨーテは舌打ちを漏らす。
 シェリルはそんな彼の首に手を回して抱きついた。恥も常識も自尊心も無い。早く、冷めない内に彼の情熱を受け入れたい。 
「ね、コヨーテ。もう一度……」
 夢中で彼の頬と唇に口づけしながら、シェリルは囁いた。
 惚けた顔をしていた彼は、そんな彼女の髪を優しく撫でる。
「かわいいね、あんた。そんなに欲しい?」
「欲しいよ」
 体の奥から、心の内側から溢れてくるものが止まらない。息も絶え絶えになるほど、シェリルは彼の体を抱き締め、その胸に顔を埋めた。
 コヨーテもこらえ切れないように、シェリルの小さな体を地面に押し倒す。背中と髪が土にまみれたが、全く構わなかった。
「もう誰かに見られても、止めなくても済むようにね」
 彼は茶色い麻の外套を、重なった二人の体の上からすっぽりかぶせた。
 シェリルの視界が暗転する。何も見えない暗闇の中、彼の唇と触れ合うのが分かった。ほぼ同時に、自然に広げていた脚の間に、コヨーテの重みが割り込み、再び体の中に彼が入り込むのが分かった。
 苦痛は一切無かった。
 ただ言葉にできない程の甘美な悦楽に、シェリルはついに叫んだ。それを封じるように、彼の唇が重なり、舌が押し込まれる。
「シェリル……いい子だから、お願いだから静かにして」
「するする。静かにする……」
 二人は白痴じみた言葉を交わし、荒い息と互いの唾液を交換する。
 男は少し体を揺すっただけで、最後の呻きをあげた。
「出すよ……中に……」
「出して。お願い……!」
 シェリルは息を呑み、彼女の膣で彼が痙攣するのを感じながら、両手と両脚をその体に絡ませた。ひとつになりたい。もっと何もかも分かち合いたい。
 彼がそうして自分の体内で悦楽の極みに達したことが、彼女の至福だった。
 麻の布に頭から二人でくるまり、優しい暗闇に包まれながら、彼女の体の上で荒く息をつき、微かに震えるコヨーテの頭を両手で抱き締めた。
 彼もされるがままになり、なかなか彼女の体からも出て行こうとしなかった。
 広場の地面の上で文字通りからだを重ねながら、二人はそうしていつまでも互いを抱き締めていた。

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拍手へのお返事 >hさんへ 

拍手&コメント、ありがとうございます!

道連れ編は、あと半分くらいですかねー。
全六話ですので、もう少し続きます。お暇な時にでも読んでいただければ嬉しいです♪
応援ありがとうございます。がんばりまーす!
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