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魔女とコヨーテ」
第四話 捕獲

第四話: 捕獲 4

2009.06.19  *Edit 

 唇を押し開けて入ってきた舌が、口の中で柔らかく不器用に動くのを感じる。やっと彼女が激怒した理由が分かった。
 両手を縛られて壁に繋がれた不自由な体勢で、少女の柔らかい唇の感触を味わう。彼女は目を閉じたまま小さな手で彼の頬を緩やかに撫で、指先で耳たぶに触れた。彼の舌に絡めようとするシェリルのそれを捕らえて軽く吸ってやると、彼女は僅かに震え、さらに顔を押し付けてきた。頬を撫でていた右手が顔を滑り、髪の中へ潜り込む。首筋の後ろから、髪を逆立てるように頭に沿って撫で上げられると、ちょっとしたくすぐったさが這い登った。
 毛布と水筒を抱えたシェリルが牢に顔を見せた時、もしやとは思った。
 時折彼をどこか渇いて飢えたような瞳で見つめる彼女は、今夜もこっそりと牢で自分と交わる為に忍び込んできたのだろうかと思った。
 しかしすぐに考え直した。いくら何でもそんなにうまい話はないだろう。彼女もそこまで彼に惚れ込んでいるわけではあるまい。それを裏付けるように、シェリルは依頼主を明かせと問い詰めてきた。
 話せば逃がしてくれると言ったが、それも話がうますぎると思った。そうすることで、彼女と伯爵側に生まれる利点や、自分が背負う危険などをじっくり考え比べている内に、彼女は突然立ち上がると、持ってきた葡萄酒を床にぶちまけるほど激高して、とっと牢屋を出て行ってしまった。
 あまりの豹変ぶりについていけなかったが、それでも脱出の機会を逃すのは惜しい。慌てて夢中で呼び止めると、しばらく間を置いてシェリルは戻ってきた。
 その彼女の黒い瞳がランタンの薄明かりの中で、赤く潤んでいるのを見て、一体何がそんなに悲しくて腹立たしいのだろうと、増々分からなくなった。自分に見えないところで涙を拭ってきたに違いない。
 しかし、こういうことだったのだ。やはり最初の彼の直感は正しく、シェリルの目的は彼にあった。脱出させてくれるという彼女の提案を逡巡する彼の態度を、誘いに対する遠回しな拒絶と取ったのだろう。自尊心を刺激されて、あれほど逆上したに違いない。そう気づくと、泣くほど怒っていた彼女が哀れで、愛しかった。
 最初から素直に、逃がすから抱いて欲しいと言えばいいのに。それなら自分が拒むわけはない。

 ここ一年ほどで何度か彼女とは顔を合わせているが、最初に会った時から、彼女は何か訴えるように彼を見ていた。
 元々慎みより好奇心の方が強い性質なのだろう。彼女の視線に応えるように誘いをかけると、表面上の態度はどうあれ、ご褒美を与えられた犬のように、彼女はそれに飛びついてきた。つまらない道徳や貞操観念に縛られて、取り澄ました高飛車な態度に出る女と比べれば、素直で大変可愛らしい。
 シェリルが彼に惚れているのは間違いないように見えたが、同じ年頃の少女たちが男に抱く恋心とは少々違うだろうという気がした。彼女は何も彼に求めないからだ。
 気持ちをぶつけられたことも無いし、恋人にして欲しいとも、一緒に連れて行って欲しいとも、ましてや結婚して欲しいとも言わない。彼が時たま女たちに告げられて、うんざりするような言葉を彼女は発したことがなかった。
 聡明なシェリルは、彼がそれを望んでいないことを見抜いていて口に出さないのか、あるいは彼女にそんな気持ち自体が無いのかは、さすがに分からなかった。後者が正解であれば、彼女は彼の肉体にだけ興味を持っているということになる。心はどうでもいいということだ。面倒が無くて良いが、その場合は、いずれ彼女の心を満たしてくれる恋人が現れるだろう。
 肉体の繋がりが無いとしても、賢く繊細なシェリルを彼はそれなりに好きだったし、そんな恋人が彼女を愛してやるなら、喜んでやりたい。
 だが一方で、その恋人の前で彼女が体を開くのを考えると、やはり面白くはなかった。ずっとあの飢えたような潤んだ瞳で、彼を見つめていて欲しい。彼が女の肉体が恋しくなった時に、今までのように喜んで応じて欲しいと、身勝手なことを考えてもいた。
 縛られて床に座っているしかない彼の体に跨るように、床に両膝をついた彼女は、彼の顔をしっかりと両手で捕らえて長い口づけをしている。疲れ切って動けない主人に、これ幸いと好きなようにまとわりつく犬のようだ。
 いや、飼われているのは自分か。
 見たことがないほど積極的なシェリルに、彼は自分が困惑していることを知った。夏至が終わったばかりの真夏にあの美しい谷の村で別れた後、彼女に何か変化があったのだろうかと考える。
 時たま彼女に対して覚える焦燥と、情交への予感、何より少女の温かい体温と柔らかさを感じて、次第に股間に血が集まっていくのを覚えた。

 膝をずらして徐々に彼に近づき、ついにその頭を両手で抱き締めて、ぴったりと体を寄せた。
 やっと捕まえた。
 彼が抱き締め返してくれることはないが、彼女から逃げ出すこともできない。
 一度唇を離して目を開けると、彼と視線が合った。褐色の瞳に哀れみが見えた気がしたが、全く構わなかった。
 このまま永久に繋いでしまいたい。
 できもしないことをまたシェリルは夢想した。
 コヨーテは犬に似ているが、ずっと知性が高く、悪賢い。従順な性質でも無いので、飼い慣らすことはほぼ不可能だと聞いたことがある。
 自分ではとても彼の心を繋いでおけないことは知っている。それならせめてその身体だけでも捕まえて、自分以外の誰にも触れられないところに繋いでしまいたい。
 手を伸ばして、彼の額に触れる。形を確かめるように鼻筋をなぞって指を下げた時、鼻の下に僅かに鼻水が滲んでいるのに気づいた。小さく笑うと、彼は不機嫌そうな声をあげた。
「……何?」
「だってハナ出てるよ。まだ寒い?」
 中指でそっと拭いながら答える。他人の鼻水に触れたいなどと思ったこともないが、彼なら何でも許せる気がする。
「寒いっていってるでしょ」
 自分でも格好悪いと思ったのか、早口で言いながら、コヨーテは鼻をすすった。   
「我慢して」
 愛しさを覚え、彼の頬に口づける。弱みを握っている彼に、まるで恋人のように堂々とじゃれつけるのが嬉しかった。
 彼が彼女にそうしたように、耳たぶを舐めて甘噛みすると、その奥へ舌を差し入れる。彼が僅かに首を捻った。
「くすぐったいよ」
 快感を覚えているのかと思ったが、そうではなく、本当にこそばゆいようだ。コヨーテは肩を窮屈に動かして、彼女の舌から逃れようとする。
 少々自尊心が傷ついたが、これくらいでめげてたまるか。
「我慢してってば」
 彼の体をしっかりと捕まえる。囁いた後に再びその耳に舌を寄せると、彼はまた身を引こうとした。その仕草にどこか嗜虐的な部分を刺激される。微かに息が荒くなり、鼓動が早くなった。
 耳から首筋に沿って舌を這わせる。鼓動に合わせてどくどくと脈打つ彼の頚動脈の動きを舌で捕らえると、彼の生殺与奪を握った気がして、倒錯した微かな眩暈を感じた。
 そのまま舌を顎に滑らせる。顎の下にざらついた感触を覚えた。剃った髭が伸びかけているらしい。
 再び唇を重ねながら、彼の服の襟元の紐に手を伸ばした。解こうとすると、唇を僅かに離して彼は囁いた。
「寒いんだけど……」
「うるさいな、もう」
 構わず紐を外す。しかし頭から被る形の服を、両手を縛られたままの彼から剥ぎ取ることはできない。仕方なく、胸元をはだけるに留めた。彼の腰に跨る彼女の尻は、硬くなり始めた彼の股間の感触を捕らえており、それが彼女にちょっとした自信と余裕を与えていた。
「おとなしくして」
 露わになった鎖骨にそっと指先で触れる。コヨーテは僅かに目を細めた。その反応を逃さず、そこに唇を寄せて太い骨をなぞると、彼の喉が仰け反り、白い息が舞い上がった。
 唇を触れされたまま、胸毛が無く筋肉が薄めの胸をなぞり、紅が混じったごく淡い褐色の乳首に触れると、唇でそれを包んだ。寒さの為か、彼女の同じ部分と同様、彼のそこは既に固く尖っている。
 反対側も果実を摘むように、指先で軽くつまんでみると、彼は再び息を吐いた。唇が触れている方を軽く吸い込む。
 弾んできた彼の息が、彼女の愛撫に快楽を覚えている為か、あるいは彼に興奮する彼女の熱に当てられた為かは、判断がつかなかった。ここのところ機会があれば、冒険者仲間や旅芸人の女たちから、男性を喜ばせる方法について、マライアに内緒で話を聞いたが、何しろ試すのは初めてだ。彼女は彼しか男性を知らないし、今のところは他にこんなに深く知りたいと思う男もいなかった。彼を喜ばせているかどうか、今ひとつ自信が無い。
 しかし焦がれたコヨーテの体を好きなように探れるのは、彼女に取って無上の喜びだった。それは間違いない。
 そして彼女は気づくはずもないが、彼の体に触れて興奮する少女の姿は、やはり彼を熱くさせていた。これまで彼女が、自分に触れる彼の姿を見て興奮してきたのと、丁度同じことだった。
「気持ちいい?」
 欲情に潤んだ目でコヨーテを見上げて尋ねると、彼は微かに息を乱しながらも苦笑いを見せた。
「くすぐったいよ……」
 悔しい。頑張ったのに。
 さすがに少しばかり気落ちしたが、すぐに気を取り直し、彼の体からどくと、マライアに拘束された時からずっと彼の足首を縛めているベルトを外し始めた。
 両脚を開かせて、その間にシェリルがちょこんと座り込んでも、コヨーテは何も抗議めいたことを言わなかった。その眼差しも、拒絶も映していないが、快楽や恐怖にも程遠く、小さな子がこれから何をしでかすんだろうと見守る、年長者の生温かい好奇心を覗かせて、シェリルを見ている。
 完全に拘束され、服を脱がされかけている彼の方にまだ余裕があるのが、何とも歯がゆい。
 しかし目の前で服の下から膨らんでいる彼の股間を軽く撫でると、初めて彼は眉を寄せて目を閉じた。やはりまだ自分はここに触れることでしか、彼を喜ばせられないのだろうか。
 見てろ。
 何故か闘志のようなものが沸いてきて、シェリルは荒々しい手つきで彼が穿いているズボンの留め具を全て外した。そのままズボンをずり下げようとすると、彼は非常に協力的に尻を持ち上げ、彼女が服を脱がせやすいようにしてくれた。
 膝までズボンを下げ、下着──無論、今回も男物であった──に包まれたそこを晒している彼の姿は、なかなか見られないほど情けない。彼の顔に視線をやると、やはり彼も自分の格好を恥らいながらも、次に彼女が行うことに期待しているらしく、僅かに瞳が濁っている。
 下着の上から、彼の立ち上がり始めた一物に触れて撫でると、それは頼りなく揺れた。コヨーテが大きく息を吐く。今までの溜め息とは違い、確かな快楽に色づいていた。

 そこに一瞬だけ口づけ、シェリルは再び彼の目の前にいざり寄る。再びその体をまたぐように膝立ちになると、両手で彼の頬を包んで、口づけた。今度はシェリルは目を開いたままだったが、コヨーテは閉じていた。
 もう少し焦らしたい。
 意地の悪い衝動が湧き上がる。彼女は恥じらいを覚えながらも、恐らくこんなことができるのは今夜だけだと言い聞かせ、服を留めている紐を次々と解いて、前を開いた。普段はその下に肌着を着ているが、今は直接素肌が覗く。いきなり脱いで上半身を見せたシェリルに、コヨーテも軽く目を剥いた。
 次の言葉が出ずに、何と言おうか考え迷っていると、彼の方から首を伸ばして、彼女の乳房に唇を寄せた。
 官能が溢れ返る。息苦しい。こんな状態でもやっぱり彼には敵わないのかもしれない。シェリルが何も言わなくても解ってくれる。彼の頭を抱き締めて、そのてっぺんに口づけを落とした。応えるように乳房を撫でていた彼の舌が、乳首を転がし、先ほど彼女がそうしたように、軽くそこに吸いつく。
「はあっ……」
 俯いて溜め息を吐き出すと、コヨーテの髪が揺れた。胸から伝わってくる快楽のまま、意味も無くその髪をかき回す。彼が赤子のようにより強く乳首を吸う。僅かな痛みと鋭い快楽に、再び深い溜め息が溢れるのをこらえられなかった。歯を立てられると、さらに痺れるような感覚に襲われる。
「あ……あ……!」
「気持ちいい?」
 思わず声をあげるシェリルに、先ほどの仕返しのように同じことをコヨーテが問いかけた。同じようにくすぐったいと一蹴したかったのに、考える前に彼女は何度も頷いていた。
「ねえ、片手だけでもほどいてよ。触りたい」
 その熱っぽい声にふらふらと誘われそうになったが、どうにか理性を保った。慌てて首を振る。
「だめだよ。逃げちゃうでしょ」
「逃げないよ。でも場所を変えない? あんまり君が大声出すと、隣の奴らも起きるかもしれないよ。どうせ動けやしないけど、見られたらやでしょ」
「ちょっとやそっとじゃ起きないもん」
 官能に濁った甘い声で自信たっぷりに告げると、彼は微苦笑を見せた。
「魔術で眠らせたの? さっき呪文唱える声が聞こえたけど、まさかギルド出身の正式な魔術師様が、こんなことの為に眠りの術を使うなんてねえ……」
「うるさいな、いいの」
 あまり良くはないのだが、照れ隠しに乱暴に呟いて、彼女はコヨーテにしがみついた。こんなことと彼は言ったが、シェリルに取っては千載一遇の機会であり、もう巡ってこないかもしれないのだ。
 しばらく彼を一方的に抱き締めたまま、その幸福感に浸った。渦巻く想いが肌を通して彼に伝わって欲しいのか、あるいはそれを決して望んでいないのか、よく判らなかった。
「……分かったよ。とにかく解いて。片手だけでもいいから」
 一方コヨーテの方は何が分かったのか分からないが、動物の子供よろしく彼にじっとしがみついているシェリルに向かってそう言った。
「ダメ。片手だけほどいたら、あたしのこと殴りつけて逃げる気でしょ」
「しないってば。僕だって君としたいよ。それまでは逃げないから」
「とにかくダメ」
 彼の頼みをつっぱねる度、胸の奥がどくどくと弾み、熱くなってくる。下腹部が僅かに震えた。
 コヨーテの体から自分の体を離すと、再び彼の足元へ移る。脚の間に座ると、先ほどより大きく膨れた彼自身が目に入った。
 下着の上からそこにもう一度口づけする。熱いほどだった。
 むき出しになった彼の太腿に触れる。どこか中性的な容貌の彼だが、腿には髪よりやや濃い褐色の体毛が、女の彼女には無い濃さで生え揃っていた。触れるとざらざらとする。前に女装していた時は、この脚の毛も剃っていたのだろうかと思うと、その時の彼が下着まで女性ものを穿いていたことを思い出し、忍び笑いが漏れた。
「ちょっと……何笑ってんの」
 不満そうな彼と視線が合う。自分が主導権を取り返していることに気づき、彼女はより意地悪く笑ってみせた。
「ううん。かわいいなーと思って」
 薄明かりの中でも、唇を噛んだコヨーテの顔が、羞恥に赤く染まるのが分かった。
「かわいいってね……」
 口の中で呟くコヨーテに構わず、内腿を撫であげた手で、頼りなく下がる陰嚢に包まれた彼の睾丸に触れる。熱くたぎった陰茎に比べると、随分と冷たい気がした。
 そこを軽く弄びながら唇で触れ、反対の手で、その上で立ち上がろうとしている彼自身をさする。やはりこちらは熱いほど温かい。根本を握ると、見る間にそこが硬度を増すのが分かる。
 荒い息のまま、下着の紐を解いてそれもずり下げると、彼自身が弾けるように飛び出した。
 彼の顔を再び見上げる。その表情は快楽に緩み、観念したようにシェリルを力なく見つめていた。
 追い詰めた獲物をついに屈服させた。そんな錯覚を覚えた。
 
 前に彼に教えられた通り、彼自身を強めに握ったままそれを上下にしごくと、縛られたままの彼は喉を反らせた。
「あ……あっ」
 甲高いコヨーテの喘ぎを耳にし、シェリルの頭にもさらに血が上る。
 先端から滴を漏らしている彼のそこに唇をつけた。そのまま焦らすように唇だけでそこを撫でていると、頭上から切なげな声が聞こえる。
「気持ちいい……舐めて」
 シェリルはもう一度彼のそこに口づけしながら、彼を見上げた。
 恥ずかしげもなく、男のものに唇を触れさせながら、彼を見つめる少女を見て、この小さな魔女はなんて可愛くて淫らなのだろうと、彼は思った。
 彼女の愛らしい小さな口元に、自分の性器が触れているのが、淫靡で罪深いような気すらした。だが早くその口を自分のもので満たしてみたい。あどけない淑やかな外見の彼女に精液をぶちまけて、その本性に見合った姿に汚してやりたいと、怒りにも似た衝動が沸いた。   
 しかし今の彼はシェリルのなすがままだ。屈辱は、今まで体験したことのない快楽を呼び起こし、背筋を震わせた。
「勝手に出しちゃダメだよ」
 ニ、三度、亀頭に軽い口づけを落としながら、魔女はそう囁いた。
「分かってる」
 搾り出した彼の声は、自分で驚くほど乱れて掠れている。彼女はしつこく続けた。
「絶対だからね。出しちゃったら、もうこのままほったらかして帰るから」
 なんて生意気言うんだ。俺が抱くまで処女だったくせに。
 抱き締めたい。手さえ動かせるなら、彼女を力の限り抱き締めて潰してやりたい。欲情と苛立ちがないまぜになり、息が詰まる気がした。
 しかしその熱い塊も、シェリルが彼を口の中に含むと、その柔らかさと湿った温かさの前に、たちどころに溶けていった。
 彼女が小さな手を添えて、必死で彼のものを口に含み、その頬が自分の性器で膨れているのを見ると、もう彼女の言いなりになってやろうと、自棄のように思った。
 柔らかい頬の内側で彼を包みながら、舌で時折先端を優しく叩かれる。舌の裏側でそこをくるりと撫でられると、痺れるような快感が突き上げてきた。
 深く吸われ、彼女の喉の奥に彼自身がぶつかる。苦しそうに彼女が一瞬力を込めた瞬間、その口の中も収縮して、えもいわれぬ感触を与えてくれた。
 どこで覚えたんだ。誰に教えられた。
 彼は口で性器を愛撫されるのが好きだったが、シェリルのような若い少女で、彼女ほど抵抗を持たない女を知らない。頼むと、嫌がりもせずに応じてくれる。彼が彼女を愛しいと思う理由の一つではあったが、指や唇、舌と喉まで使って、あらゆる快楽を彼に与えてくれようとする彼女が、誰にも教えられずに自然にそんなことを覚えたのか、常に小さな疑問が沸いた。
 誰かに教え込まれたのか。彼がよく思い浮かべるのは、普段から彼女と行動を共にしている、彼女の仲間たちだ。男が三人。その中の一人と、あるいは三人全員と交渉があったのでは。時折シェリルがその男たちに夜な夜な体を弄ばれたり、もう一人の女と混ざって五人で痴態を繰り広げている図など想像し、股間が熱くなることがある。そんな時はさすがに彼女と彼らに罪悪感を覚えたが、疑いは捨て切れなかった。
 想像に耽る内に、シェリルが顎を動かし始める。性器を擦る頬の肉の規則的な動きに、むずむずとした快楽が尻の奥から湧き、這い登ろうとしていた。

「待って。シェリル……。出ちゃう」
 切なげな彼の声を耳にして、そっとシェリルは動きを緩めた。縛られたまま、彼女を力の無い視線で睨みながら、左右に身をのたうたせる彼の姿が悩ましかった。
 彼女の唾液にまみれた彼自身をそっと口から引き抜く。
 重なりたい。
 熱い衝動が湧いたが、自分の方は十分に潤っているだろうか。
 彼の前で触れて確かめるのが、今さらながら恥ずかしかった。できれば彼女の脚の間も彼に愛撫して欲しいが、手を動かせない彼には舌でしてもらうしかない。
 それを頼む構図を想像すると、やはりどうしてもためらわれた。彼の目の前で下着を脱いで、脚を開かなければならない。この前彼と会った時、やはり座った彼の前で、立ったままの彼女が脚を開いて、そこを可愛がってもらったが、あの時は彼がそうしろと言ってくれたのだ。同じことを自分からさせるほどの勇気は、さすがに無かった。
 少々不安はあったものの、ぐずぐずしていてお互いの体が冷めるのは嫌だ。
 シェリルは膝丈のチュニックの裾から手を入れて、下着の紐を解いた。普通チュニックにはズボンを合わせるが、今夜の彼女の目的の為には、ズボンは邪魔なので穿いてこなかった。
 下着を脱ぐふりをしながら、服の下でこっそりと脚の間に触れてみる。
 あまりに濡れてぬめっているので、自分で驚いた。今夜は彼女が彼の体を弄んでいただけで、彼は僅かに彼女の乳房を愛撫してくれただけに過ぎない。それなのに、どうしようもないほどに体は熱くなっている。
 自分が貞淑で慎み深いとは思っていないが、考えているよりもずっと淫乱なのではないかと思うと、さらに体の芯が熱を帯びた。男の体に触れて、性器を愛撫しただけでこんなに濡れてしまうなんて。
 自身の本性などどうでもいいが、コヨーテに呆れられたり、疎まれたりするのだけは嫌だった。彼の顔を盗み見ると、ずっとシェリルの動きを見つめていたらしく、視線がぶつかった。
 彼の横で膝をついて、その茶色の瞳を覗き込む。一度も目を逸らさず、彼は彼女の視線をしっかりと受け止めていた。
 前に彼に物欲しそうな顔をしていると苦笑いされたことがあったが、それはまさに今彼が見せているような、何かに飢えて渇いているような、切ない表情だったのだろうか。彼が時々自分の中の願望を読み取ってくれるのが不思議だったが、こんな表情をしているのなら、確かに望むことは丸わかりだし、それを叶えてもやりたくなるだろう。
 いつも彼がシェリルにそうするように、その髪を優しく撫でて口づけする。飼い犬のように彼は従順に唇を寄せてきた。もう葡萄酒の香りは消え、愛欲に溢れた唾液の生っぽい匂いだけが嗅ぎ取れた。

 もう一度コヨーテの体に跨るように膝をつき、少し下にある彼の頬を包むように触れる。先ほどはやや冷えていたその顔は、もう上気していて温かい程だ。黙って彼女を見上げた彼は目を閉じた。そのまぶたを親指でそっとなぞる。そのしっとりとした繊細な柔らかさ。戦慄がこみあげた。
 息を呑みながら、反対側のまぶたに口づけする。彼はおとなしくされるがままになっていた。
 彼女は膝を折って、彼の腰に馬乗りになった。脚の間の濡れた場所に、彼のざらついた陰毛を感じる。
「……入れたい?」
 はだけたままの彼の胸に両手で触れると、コヨーテは何かに操られるように陶然と頷いた。
「じゃあお願いして」
 彼は僅かに口を半開きにし、彼女の命令に従うのをためらっているようだった。
 静かに短い沈黙が流れる間、シェリルはひたすら彼の喉や顎、鎖骨、胸に触れて、もう会えないかもしれないと思っていた男の肌の感触を味わっていた。そして今夜彼を約束通り逃がしたら、やはりもう会えないかもしれないのだ。
 やがて彼は溜め息と共に、哀願するような声をあげた。
「……シェリル」
「ダメ。ちゃんとお願いして」
 彼の言いたいことは十分以上に伝わっていたが、無言のままそれを捕らえても意味が無い。言葉にさせたい。これが最初できっと最後だ。
「入れさせて」
 さらに少しのためらいの後、彼は羞恥にぶれる小さな声で呟いた。ぞくぞくする。鼓動がはちきれそうに高まる。
「ダメ。もっとちゃんとお願いして」
 両手を毛布を敷いた床の上につき、軽く腰を浮かせながら、彼女は軽く彼の下唇にくちづけた。早く言って。あたしも待てない。
 コヨーテは縛られたままの体を僅かによじり、小さな溜め息を吐くと、彼女の耳元に顔を寄せて囁いた。
「早く……シェリルの中に僕のを……入れさせてください」
 今まで感じたことのない歓喜が湧いてのぼり、シェリルは力いっぱい彼を抱き締めた。
 腕を彼の背中から離し、もう一度両手を床について腰を浮かせると、溢れた愛液に濡れた秘部を、下から立ち上がる彼の男根に触れさせる。そのまま腰を落とし込もうとしたが、ぬめる液体につるつると滑り、うまくいかない。
 彼女は片手を彼の根本にあてがって支えると、慎重に腰を下ろした。彼自身によって入り口がみしりと開き、僅かに痛みを伝えてくる。
 この前彼と重なり合った時は、痛みはほとんど無かった。だから今回も大丈夫だろうと思っていたのだが、このまま彼を受け入れれば、以前のような激痛が襲ってくる予感に、彼女はややためらいを覚えた。経験の浅い彼女は知らなかったが、元々数回しか男を受け入れたことがなく、前回から三月もの間、何も異物が入らなかった彼女のそこは、徐々に狭まってきていたのだ。 
 でも痛みなんか関係ない。この人と繋がりたい。
 思い切って腰を沈めた。初めてや二度目の時ほどではないが、引き裂くような痛みが体の中心から広がる。
「は……あ……」
 痛みの為に漏れた呻きを、快楽の為を装った。彼に遠慮させたくない。
 潤んだ目をやっとのことで開け、彼を見つめる。彼もまた熱に濁った瞳で、喘ぐ彼女を見つめ返していた。
 レナード。レナード。
 つい零れ落ちそうになった名前が、全くの他人のものであったことに気づいた時、思わず涙が零れた。
「コヨーテ……」
 彼女が知っているのは、唯一その通り名だけだった。
「痛い?」
 呟きに優しく答える彼に、激しく首を振ってみせた。
 彼を飲み込んだ彼女の秘部は、まだ熱く重く痛んでいたが、一刻も早く彼を喜ばせて、悦楽の極みに導いてあげたい。他ならぬ自分の体内で。
 ひきつれるような痛みをこらえて、シェリルは腰を動かし始めた。硬く尖った彼自身に、何度も自分の秘肉を埋め込み続ける。
「あ……シェリル……温かいよ」
「熱いよ。熱い」
 再び肩をよじって快楽を訴える彼に取りすがり、彼女も感じたままを囁く。
 身動きが取れないまま喘ぐ彼を見ていると、まるで彼を犯しているような気がした。実際にそれは半分間違っていない。
 そうして熱い彼の性器を自分のぬめった膣で何度も擦っていると、やがてその太さと硬さになじんでくるように、彼女のそこの痛みは薄らいでいく。代わりにもっと鋭く強烈な、熱っぽい感覚に変わっていった。
 合わせた部分から漏れる濡れた音に興奮し、シェリルは自分の腰の動きを早めた。息が荒れる。溢れる喘ぎは断続的な悲鳴のように高くなった。
 コヨーテもそれに煽られるように息遣いを乱れさせ、不自由な体勢ながら、彼女に合わせるように腰を突き上げてきた。突き上げる彼と腰を落とす彼女の動きは、うまく噛み合わずに時折ぶつかる。だがその瞬間にこそ、彼が深く彼女の中に入り込んで中の肉を鋭く抉り、甲高い嬌声が飛び出した。
「ああっ……! 中で……中でぶつかってる」
「いいんだよ。いいの」
 自分でなんて間抜けなことを言っているんだろうと思ったが、彼が返す言葉も意味はよく分からない。薔薇色に染まり、どこか高みに向かって走り始めた脳内は、もう理性など及びもつかない状態になっている。
「ねえ……気持ちいい?」
 いつも彼がそう聞くように、うわずった声で彼女が訊くと、彼は劣情に霞んだ瞳で彼女を見て、腰を浮かせながら頷いた。
「気持ちいいよ。温かくて、気持ちいい」
「よかった」
 腰を動かしながらも、両手をついて体を支え、彼女は頭を彼の胸にもたれかけた。荒い呼吸に上下するその動きが愛しい。女でよかった。彼を受け入れることができて、喜ばせることができてよかった。
「よかった……嬉しい」
「シェリル……」
 手を使えない彼は、顎で彼女の頭を挟もうとするように力を込めた。食いしばった歯の間から、彼が苦しげな吐息を吐くのが聞こえる。やがてその息がさらに荒くなった。
「シェリル、シェリル……もっと動いて。中に出させて」
「コヨーテ……!」
 突き上げてくる彼の動きを邪魔しないように、彼女は彼にしがみついたまま尻の動きを合わせた。
 早く。昇りつめて。私の中で天国を味わって。
 彼女自身の快楽は、もうどこかに吹き飛んでしまっていた。彼の悦楽こそ彼女の至福だと、以前にも考えたようなことを思う。
 喉を仰け反らせた彼が、熱い息を吐き出す。それを頭の先に感じたシェリルは、顔をあげて彼を見上げた。
「あっ……あ……あ!」
 遠慮も無く声をあげて到達し、彼自身が自分の体内に情熱を撒き散らす間、恍惚に歪む彼の顔をじっと彼女は見つめていた。  
 幸せだった。今世界中で幸福を感じているどんな人間も、今の自分には敵わないだろうと思った。

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~ Comment ~

RE:拍手へのお返事 >Kさん 

拍手、ありがとうございます~!

日比谷公園…いいモン見ましたね~。…じゃなくて、スゴイ人たちもいたもんですねえ。
しかもベンチ…結構目立ちますが、それがたまらないんですかねー。
今回のふたりも、隣で人が寝てるっちゅーのに…。この人たちも、若干露出シュミがありそうです。困ったもんです。

>ルパンと不二子

ああ~、確かに!
いや、性別が逆なので思いつきませんでしたが、そのまま~!
ルパンが追いかけてっているのに、キホン相手にされてないとことか、そっくりです。
むっちゃ翻弄されてるし…。大した苦労してないのに、ちゃっかりいいとこだけ持っていくのも、不二子とおんなじです。
今回はほんとにダイブして、本懐を遂げた(?)わけなんですが…。四話はあと半分ほど続きます♪

ああ、申請ありがとうございました~~!m(_ _)m
こちらこそ、申請にビビっていたので、ぜひぜひよろしくお願いします。

RE: 拍手お返事 >Rさん 

拍手、ありがとうございます~! 
ファンタジー舞台の破天荒な話ではありますが、ちょっとしたとこに身近さを感じていただければ幸いです♪
やんちゃだった頃…まさか今回のお話のようなことが?(笑) 
目的は達成ですが、四話はもう少し続きますので、お付き合いいただけると嬉しいですm(_ _)m
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