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魔女とコヨーテ」
第五話 山の端に陽が沈むまでに

第五話: 山の端に陽が沈むまでに 14

2009.08.08  *Edit 

 伯爵と別れ、自分の客室に戻る頃には、頭にずっしりと疲労感が詰まっていた。月はまだ中天にあったのだから、時間はそれほど経っていないはずだが、考えることがあまりに多かった。
 結局男爵もシェリルも伯爵の提案に従うしかなかった。
 明日、シェリルは男爵の家族を追って西へと旅立つ。男爵が伯爵に保護されたのは、一昨日の話らしい。以降、彼らは徒歩で移動しているはずだから、まだ領内にいる可能性が高い。馬を使えば追いつけるだろう。
 伯爵の部下も領内を探しているらしいが、巡礼者に扮した男爵の家族は、恐らくいかめしい役人や兵士を避けて、ひっそりと移動しているだろう。
 男爵から借りた、奥方のスカーフがあれば、魔術を使って彼女のいる方角くらい探れるかもしれない。彼女の目的の為には、伯爵の部下よりも早く男爵の家族を保護したい。伯爵が兵士をつけてくれると言ったが、少人数の方が動きやすいからと断った。
 無論、シェリルは男爵の家族と指輪を伯爵にそのまま渡し、スタンリーたちの救出を伯爵に委ねるつもりはない。あまりにも危険だからだ。恐らく軍を動かしても、スタンリーたちは助からないだろう。コヨーテの言った通り、彼らは人質を始末して、姿を消すだけだ。
 どこにも味方がいない、たった一人の彼女に、今まで男爵や伯爵との間に積み上げた信頼が機会をくれた。
 男爵の家族を探し出し、指輪を取り上げるのだ。
 アシュケナジー男爵は、仕事を頼んでくるだけでなく、何度か屋敷に逗留させてくれている。シェリルも男爵夫人や子供たちとは顔見知りである。うまい具合に言いくるめて、問題の指輪をシェリルに預けてもらえればそれでいい。彼らがそれを渋るなら、術を使って眠らせてでも手に入れる。同行しているコヨーテも、手伝うことはあっても反対することはないだろう。
 いずれにしても、信頼によって好機をくれた男爵と伯爵を裏切ることになる。もう二度と顔は出せない。うまくマライアたちを救出できたとしても、当分はこの王領内を離れなければならないだろう。今まで築いてきた名声も水泡に帰す。
 そして指輪は暗殺者ギルドを通じて、辺境伯に渡ることになる。それによって、王国内には混乱が起こるかもしれない。
 しかしそのあやふやな危機を回避する為に、仲間たちを犠牲にすることは、やはり到底考えられない。
 自分で考え抜いた結果だ。後悔はすまい。
 そもそも貴族同士の争いなど知ったことではないが、信頼を裏切ってしまうのは、胸の底に重苦しいしこりを残した。
 溜め息をつきながら扉を開けて部屋に入る。
 寝台の上に座っている人影を見つけて、血の気が引いた。燭台の炎に照らされたのはコヨーテだ。まだ起きていたのだ。
 何てことだ。考え事をしていたら、部屋を間違えてしまった。
「あ、間違えちゃった……」
 咄嗟に厠から戻った振りを装い、曖昧に笑った彼女に対し、彼は微笑み返した。
「おかえり。──間違えてないよ。ここは君の部屋。男爵には会えた?」

 言い訳や反論を考えるのも、もう面倒だった。
 ただ大仰に溜め息を吐き出し、小さなテーブルに乱暴に燭台を置く。コヨーテは彼女の動きを見つめながら、寝台に腰掛けたまま腕と足を組んだ。顔つきは穏かだったが、薄暗い部屋で炎を照り返す瞳は、冷え冷えとしている。
「……後をつけてたの?」
 多少動揺を落ち着かせ、静かに問うと、彼はかぶりを振った。
「だったら、ここで君を待つ必要なんて無いでしょーが。君も相当用心深かったから、ついていくのは諦めたよ。魔術で眠らされたりしたら、たまったもんじゃないしね」
「なんで、あたしが抜け出すのが分かったの?」
「何となく、君も伯爵も変だったから、もしかしたら何かあるんじゃないかと思ったんだ。それで夜中、少し起きてたんだけど……君が本当に動き出した時には、ちょっと驚いたよ。愛人関係か、さもなきゃ僕に知られないように、男爵についての話を聞きにいくか、どっちかだと思った」
 愛人関係という言葉に、つい小さな笑いが漏れた。ああ見えて愛妻家の彼と、娘そっくりのシェリルが愛人関係になるはずなどない。
「変って……変だった?」
「変だったよ。そもそもここに来た時だって、何も連絡していなかったはずなのに、伯爵が出てくるのが随分早かったし。君、応接間での伯爵との話を早く切り上げたがってたよね」
 そう見えたのだろうか。普段通り振舞ったはずだが、嘘がうまい人間は嘘を見抜くのもうまい。
 男爵との話をどこまでどう話すか、シェリルが考えていると、コヨーテは自分の隣を軽く叩いて言った。
「ま、立っていられると僕も落ち着かないから、ちょっと座ってよ」
 断っても仕方ない。彼女はおとなしく言われたままに彼の隣に腰掛ける。
 間に挟まった沈黙は、当然だがよそよそしくて気まずい。居心地悪く身じろぎしていると、やがてコヨーテの方から口を開いた。
「そんで? さっきも聞いたけど、男爵には会えたの?」
 通りのいい彼の声は、無機質で冷たい。
 彼に対してどこまで語るかは、部屋に戻って頭を整理しながら、じっくり考えるつもりだったが、不意を突かれた形で、今話さなければならない羽目に陥った。
 色々と小細工を考えるのに疲れてしまい、諦めたようにシェリルは機械的に頷いた。
 見知らぬ人間や敵に対しての謀は苦にならないが、好意を持ち、信頼がある人間に対しての裏切りや隠し事は、彼女には負担だった。どこかで誰かに心を預けたい。
 最も信頼できる仲間を捕らわれ、師や魔術師ギルドも頼りにできず、伯爵や男爵をも裏切らなければならない今、大して信頼など無いコヨーテに寄りかかりたいと思う気持ちが止められない。裏切りへの罪の意識を彼に打ち明けたかった。彼がそれを共有してくれることはないが、笑い飛ばしてもらうだけでも楽になる気がする。
 結局、シェリルは正面の裸の石壁を見つめたまま、淡々と語った。
 男爵が指輪を手に入れた経緯から、王都を脱出し、教皇庁の手の者に襲撃され、負傷したこと。彼は辛うじて伯爵に保護されたが、指輪は家族が持ったまま、西へ旅を続けていること。伯爵の提案で、シェリルが家族の保護を命じられ、引き換えに伯爵が軍を動かしてでもスタンリーたちを救出してくれると約束してくれたこと。
「それ、信じるの? 伯爵の軍で、君のお友達を助けられると思う?」
 話を聞いたコヨーテは、予想通り冷笑を浮かべた。
「思ってないよ」答える声に力がこもる。「だから、指輪は約束通り、あの男のとこに届けるつもり」
「じゃあ、伯爵のとこには持ってこないの?」
「そう」
「いいの? 後々まずいんじゃない?」
「まず仲間を助けたいの。そうじゃないと、後々のことまで考えられない」
 彼女を見つめるコヨーテの表情が微妙に変わったが、その眼差しに含まれているものは複雑過ぎて、読み取ることができなかった。
「でもさ、本当にそれでいいの? あと六日しかないんだよ。ここからあの廃屋に戻るまで、三日はみておいた方がいい。すると、動けるのはあと三日。男爵の家族を探すんでいいの?」
「他に方法は無いじゃない」
「あいつの命令を覚えてる? 男爵か指輪、どちらかを持って来いってことだよ」
 コヨーテの意図が分からず、シェリルは眉をしかめた。
「だから、指輪を持ってる男爵の家族を探しに行くんじゃない」
「だからね、男爵か、指輪か。どっちかってことなんだよ。今手元に無い指輪を探しに行くより、この家に男爵がいるなら、そっちを連れて、今ここを出れば、確実にあいつの命令した仕事はこなせるよ。君も君の友達も僕も助かる」
 彼の差すようなことを考えたことはなかった。戸惑ったシェリルだが、徐々に気色ばんでくる。
「待ってよ。指輪の持ち主は分かってるのに、敢えて男爵を連れて行くの? 連れて行かれた男爵はどうなるのよ?」
「僕だったら、そこまでは考えないね。男爵と人質を引き替えたら、後はとっとと逃げる」
 彼の言うことを考えてみた。確かに赤毛の男の命令は果たしたことになる。
 しかしやはりできない相談だ。赤毛の男の元で男爵がどんな目に合うか、自分が赤毛の男の立場だったらと仮定すれば、簡単に想像できる。まず指輪のありかを吐かせる為に尋問するだろう。家族の安全の為に男爵が黙っていれば、暗殺者ギルドのことだ、拷問など爪の先程の罪の意識も無くやってのけるに違いない。地位を捨て、財産を処分して旅立ち、負傷した男爵をそんな場所に送れるわけがない。
「あたしはいや。指輪を探す」
 きっぱりと告げると、コヨーテは溜め息のような笑いを漏らす。
「いいの? もし指輪が見つからなかったら……」
「そんなこと考えてたらきりがないよ。あと三日で指輪を見つけりゃいいんでしょ。時間はまだあるし、男爵の家族を見つける方法もある」
 半ば睨むように見つめると、コヨーテは肩を竦めた。
「あ、そ。まあ、君ならそう言うと思ったけど。……じゃあ、明日から男爵ご一家を探しますか」
 わざとらしく腕など上げ、上体を伸ばしていた彼は、不意に氷のような視線を向けてきた。射抜かれたように顔が強張る。
「君、王都で『もっと信用して』って言ってたけど、そういう台詞は誠意を尽くしてから言ってよ」
 様々な意味で、彼が彼女に危害を加えるようなことは無いと思うのだが、それでも稀に、彼に対して純粋に恐怖を感じることがある。この時も鼓動が激しくなり、反対に背筋が冷えた。萎縮しているのだと分かると悔しいが、どうすることもできない。
「……ごめん」
 気圧されるように小声で呟くが、言い募る彼の声は増々重たく聞こえる。
「時間は無いんだ。隠し事して相手を出し抜こうなんて考えてる場合じゃない」
「もう、何も隠し事なんかないよ。出し抜きたかったわけじゃなくて、あたしは男爵の安全を考えたかったの。今あなたが言ったみたいに……」
「もう、いいよ」
 シェリルの言い訳を素っ気無く遮り、彼は立ち上がった。
 就寝の挨拶も無く去っていく彼を、視線ですら追うこともできない。シェリルは背後で扉が閉まる音を聞きながら、寝台にひとり腰掛けたまま項垂れた。
 確かに術を使ってまでコヨーテを出し抜くより、彼に自分の意図を打ち明けて、正面から協力を頼むべきだったかもしれない。誠意が無いとは、彼に言われたくはないが、事実だ。相手の誠意を乞うなら、まず自分も誠意を尽くすべきだった。
 去り際のコヨーテの冷淡な声を思い出し、胸の奥が詰まった。
 怒らせてしまった。しかも今までのような、些細な事情ではない。彼の自分に対する小さな信頼も失ってしまっただろう。
 ほんの少しでもいいから、心の底で澱んでいる重いものを誰かと分かち合いたかった。つい先程まで、それを僅かながらもコヨーテと共有していたのだと、彼に突き放された後で気づいた。
 状況は変わらない。彼は目的が同じである限り、協力はしてくれるだろう。ただ、もう抱き合うことはないかもしれない。
 悲しいのは、彼と肉体的に触れ合えないだけだからだろうか。そうでないなら、目に見えないところで、彼とは他の繋がりがあったということだ。
 それは分かっていたはずなのに、小心のせいで、自分から壊してしまった。
 どうして私はこんなに臆病で、自分ばかり大事なのだろう。
 涙がにじみ、片手で額を覆った。

 突然、背後から二本の腕が巻きつき、シェリルの胴体を抱えた。
 驚きの声を上げながら、後ろに引きずられる。振りほどこうとしながら、首を捩じって振り返った。
「反省した?」
 コヨーテだ。氷のようだった先ほどの表情とは打って変わって、薄気味悪いほどの笑顔である。
「脅かさないでよ!」
 コヨーテはとっくに退室し、室内は無人だと思っていたので、心底驚倒した。まだ心臓が破裂しそうに激しく打っている。反動から彼女は攻撃的に怒鳴り声を上げた。
「自分が悪いの棚に上げて、何言ってんの。あ、泣いてた? ちょっと懲りた?」
 からかうように顔を覗き込まれて、僅かに零れた涙を慌てて指先で拭う。
「うるさいな! あなたこそ、部屋出たフリして、こっそり中にいるなんて、キモチ悪いよ!」
「だって君、ごめんとか、おやすみとか、何も言わないんだもん。むっつりしちゃって、僕が悪いみたいじゃんか」
 彼はシェリルを抱えるように胡坐をかいた膝の上に引き上げる。胴体に巻きついていた手が動き、背後から彼女の両の胸の膨らみを押さえた。
「ごめんって言ったよ」
「聞こえなかったー。……ホントに悪いと思ってる?」
 耳元で話す彼の声が微かに弾んでいる。乳房を握る彼の動きは、徐々に激しくなった。つられるように彼女の呼吸も乱れ始める。
「思ってるってば。ごめん」
「まあ、反省したならいいでしょ」
 尊大に言い放ち、彼女の耳をぺろりと舐めると、彼は右手を乳房から離して、彼女のズボンのベルトを外し始めた。
 その間にも、彼の左手は乳房を探り続ける。時々、服の上から胸の頂を擦られると、鋭い快感が突き抜けて眉が寄った。
 コヨーテの手はベルトを外すとすぐに、彼女のズボンの紐を片手で器用に解いていく。臍の下あたりに時折触れる、その長い指の動きに陶然とした。下腹部に力がこもる。
 紐を解き終わると、彼は彼女の体を抱えたまま膝立ちになり、彼女の背を押して上体を倒させた。よつんばいになるシェリルの穿いているズボンが、膝まで引きずり下ろされる。
 突然尻を平手で叩かれ、彼女は小さな悲鳴をあげた。
「いたっ……!」
「これぐらいで大袈裟な声あげないの」
 そう言いながら、彼が腰の辺りに口づけする感触を覚えた。これぐらいと言われても、叩かれれば痛いのは当たり前だ。
 下着の紐が解かれて、取り去られる。背後で彼もベルトを外し、服の留め具を外している音が聞こえた。
 腰を掴まれ、広げさせられた脚の間に、硬く温かいものが触れる。
 まさか、もう交合するのだろうか。今まで抱き合ってきたどんな時も、彼はある程度の時間をかけて、彼女の体を温めてくれた。昨日、一昨日の睦みあいも忙しなかったが、彼女が彼を受け入れられるようになるまでは、指や舌を使って全身を愛撫してくれたのだ。
 しかしまだ、ほとんど愛撫らしい愛撫は受けておらず、さすがにシェリルの体もまだ冷たくて固い。
 急に先刻の恐怖がぶり返してきた。まさかまだ彼は怒っているのだろうか。
「待って。……声聞こえるとまずいから、しないんじゃなかったの?」
「別にもう僕は見つかってもいいよ。声デカイのは君の方なんだから、見つかるのが嫌なら自分で我慢してよ」
 振り向こうとすると、頭を掴んで前を向けさせられる。彼の声に怒りは聞こえなかったが、不安が残った。
「でも……」
「でも、何? 入れちゃうよ。いい? あんまり濡れてないから痛いかもしれないけど、我慢してね」
「やだやだ、待ってよ」
 我慢してねではない。初めて彼に抱かれた時の激痛を思い出すと、体が裂けるようなあの痛みはもう味わいたくないと思った。
「じゃ、どうして欲しいの?」
 彼女のまだ潤みきっていない入り口を、自身の性器で何度か撫でながら彼は訊いてきた。
 顔に血が上る。望んでいることを言葉に出すのが恥ずかしい。
 羞恥の内、無意識に彼女は体の芯に力を込めた。そうすると僅かに彼女の豊かな尻が恥らうように動くのが見え、背後で腰を掴んだまま、男はその淫靡な愛らしさに目を細めた。シェリルが口を噤んだまま答えないので、白く丸々とした尻をそっと撫でてやる。彼はどちらかと言えば小振りの尻の方が好きだったが、これはこれで可愛らしい。
「ほら、どーすんの」
 もう一度問いながら、先ほどよりは軽く尻を叩くと、尻を向けたままの姿勢のシェリルは、弱々しい声を返してきた。
「……もうちょっと触って」
「なんで?」
 どこを触るのかと聞いてくると思ったが、理由を聞かれると思わなかった。シェリルは恥じらいながら困惑する。
 いつもそうしておろおろしている内、難しいことは何も考えられなくなるくらいに、頭も体も熱くなってしまう。彼しか見えなくなる。
 抱き合った後の熱が冷めた後もそうだったら、あるいは幸せかもしれないのに。
「シェリル、なんで? ちゃんと言ってよ」
「だって……」
 重ねて問いかけられても、どう答えればいいのか分からない。従順に四つん這いになったまま、彼女は再び僅かに腰を動かして身じろぎしながら、恥らっていた。
「だってって言うなってば」
 尻を撫でていた手が再び腰をしっかり掴んだと思うと、入り口を撫でていた彼自身が内部に押し入ってきた。
「あっ……あっ……あ……! 待ってってば!」
 開ききっていない膣が押し広げられる痛みに、彼女は掠れた声をあげた。だが彼との睦み合いにすっかり馴染んだ少女の肉体は、痛みの刺激の裏に熱い快楽を探り当てる。
「ダメ。たまには痛い目に合いなさい」
 抑揚の無い彼の声も、所々呼吸が乱れて息が弾んでいる。自分の肉体に侵入した彼も、快楽を味わっている。そう分かると、体の芯が熱くなる。
 瞳を閉じる。体の中心にねじ込まれたものが、痛みなのか快楽なのか、彼女も彼女の肉体も戸惑っていた。だが熱くなっていくコヨーテの体と吐息を感じるにつれ、それは喜ばしいものだという気持ちが沸きあがってくる。すなわち快楽だ。
 根元まで彼女の中に自身を埋め込んだところで、彼は重々しい吐息をついた。突っ伏すように頭を寝台に押し付け、痛みと快楽の狭間で僅かに震えているシェリルの背中を見下ろす。
「……大丈夫?」
 痛い目に合えなどと言ったが、結局彼はいつものように、後ろから手を伸ばし、髪を撫でながらそう訊いてきた。その手つきに触れるだけで、痛みは甘やかな物に変わっていく。
「平気」
 どんなに痛くても、一度繋がったならもう離れたくない。シェリルもいつものようにそう答えた。
 彼は顔を屈めて彼女の背中と首筋に何度か音を立てて口づけをする。服をたくしあげて彼女の胸から豊かに垂れ下がる乳房を両手で掴んだ。
「あっ……!」
「静かにね」
 快楽に鳴く彼女に言い聞かせ、彼は腰を緩やかに動かし始めた。
 熱い振動が体の芯まで届く。頭のてっぺんから指先、足先まで悦楽が吹き零れた。僅かな痛みすら、甘美な快楽にしかならない。仰け反りながら、思わず彼女は叫んだ。
「はあっ……! あっ! ああっ!」
「静かにしなさいって。伯爵に聞こえちゃうよ」
 シェリルは慌てて顔を寝台に押し付ける。叫びをこらえると、唇の隙間から唾液が溢れた。くぐもった甘い呻きが零れる。
 彼女の小さな体を揺さぶりながら、彼は嘲笑を漏らした。
「あんた、痛がってないでしょ。お仕置きになんないな」
「……痛くないもん。気持ちいい」
 愉悦に上擦る声で答える。鼻の奥に内側から甘酸っぱいような香りが淡く広がった。
「どうヤられても気持ちよくなっちゃうんだね。別の手を考えなきゃダメか」
 小さな笑い声が聞こえる。その蠱惑的な響きに彼女が酔いしれる間も無く、彼の腰の動きが早く、激しくなった。
 寝台に顔を押し付け、時折掛け布を噛んで唾液で濡らしながら、体内を荒々しく蹂躙する彼自身を悦楽の内に味わう。叫ばないようにするのがやっとで、他の面倒なことは、昨日までの交合と同じく、頭からすっ飛んでいった。
 彼が彼女の中で劣情を放つまでの短い時間。ふたりは束の間の至福を啜り続けた。   

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~ Comment ~

re: 拍手お返事 >可芳さん 

拍手、ありがとうございます♪
スタンたち、カウントダウンが始まってますね。
なのに、シェリルたちときたら…動物か!

うう、ありがとうございます~。
仕事は大分落ち着いてきました。って、でも気がつくと次の山が目の前だったりするんですけど^^;
忙しくならないうちに、トマト、行きましょう~♪
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