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魔女とコヨーテ」
第五話 山の端に陽が沈むまでに

第五話: 山の端に陽が沈むまでに 18

2009.08.20  *Edit 

 獣よけの簡単な結界を張り終えた後、緑が濃く茂る草地に外套を敷く。腰を下ろして長靴の紐を解いていると、隣で同じように敷いた外套の上に座ったコヨーテが、紐を解くのを手伝ってくれた。
 長靴から足を抜くか抜かないかの内に、腕を広げた彼に抱き締められる。火はすぐ側にあったが、布越しに感じる彼の体温は、格別の温かさだった。
 頭の左右を包んでいる彼の腕の筋肉が張るのが分かる。力を込めて抱き締められ、頬の骨が痛いほどぎゅうぎゅうと、彼の胸に顔が押し付けられる。シェリルもいつものように、彼から流し込まれた情熱を返すように、彼の背中に縋りついた。
 薄荷の香りが鼻の奥に微かに漂ってくる。彼と自分の体から、同じ匂いがする。心が緩やかに溶けていく。
 どれくらい抱き締め合っていただろう。その抱擁は長く、服を隔てても二人の体温は優しく溶け合い始めていた。
 やがて彼はそっと腕を緩める。軽く顔を下げて、シェリルの額にくちづけした。
「……どうしたの?」
 やっと互いの瞳の焦点が合うくらいの近さで、彼は呟く。
「どうって? どうもしないよ」
 答えながら、彼の鼻に自分の鼻を軽く触れ合わせる。コヨーテは溜め息にも聞こえる吐息を小さく吐き、彼女の前髪を僅かにそよがせた。
「子供みたいだよ」そう言う彼の表情は、初めて会った時のように穏やかに微笑んでいる。「いきなり拗ねたり怒り出したりして」
「別に理由なんかないよ」
「だから子供みたい。自分で機嫌が悪い理由が分からないんでしょ」
 よしよしと宥めるように囁き、コヨーテは彼女の黒髪を撫でる。まったく馬鹿にされていると思うのに、不愉快どころか胸の奥底まで温かく満たされた。永久に光の差さない、闇に閉ざされたごく一部を除いて。
「子供じゃないもん」
 許されている部分を読み間違わなければ、こうして彼に甘えることすらできる。仲間にも聞かせたことがないような、甘ったるい声で囁きながら、その胸に自分からしがみつけるのは、この広い大地の上で彼だけだ。今までそんな男に会ったことは無いし、これからも現れるかどうか分からない。
 彼は数度シェリルの髪を撫で、もう一度額にくちづけすると、唇を重ねた。
 ついばむようなくちづけを何度も繰り返しながら、シェリルの小さな体を、草地に敷かれた外套の上に優しく押し倒す。
「子供だよ。機嫌悪くてむずかってる赤ん坊みたい」
 額を覆うように彼の温かい手が置かれる。指先が顔の産毛に触れるだけで、体の芯に火が灯される気がした。
 例えばシェリルが本当に無力な赤子であったなら、彼はどうしただろうか。
 微笑みながら彼女を見下ろす彼の背後に、無数の星を抱いた夜の空が広がっている。
    
 顔が近づいて、再びくちづけされた。
 唇がそっと押し広げられて、温かい彼の体の一部が入り込んでくる。ふたりの体は既に繋がっている。でもこんな頭に近い部分ではなく、もっと魂の根幹に繋がっているような、体の深いところで繋がりたい。
 口の中が彼の舌と唾液で満ち、その動物じみた匂いを嗅ぎ取るにつれ、頭が熱を帯びてくる。
 コヨーテの指が彼女の喉にそっと触れた。儚く淫靡な感触に、彼女は微かにおののく。
 彼の長い舌が上顎をそっと探る。彼の舌に触れたくて、自分の舌を絡ませる。舌先を軽くつつかれ、めくり上げるように持ち上げられると、舌の裏側を撫でられた。一瞬鳥肌が立ち、唾液が溢れ、彼女は再び震えた。
 彼の繊細な指は緩やかに彼女の首を撫で、時折耳たぶを弄ばれる。やがてその手は、鎖骨を通って下へ滑り、乳房に触れた。深まる吐息が、彼の口の中へと吸い込まれる。
 コヨーテは唇を離すと、両手で彼女の服の紐を解いた。シェリルの両手を上げさせ、服を体から抜こうとする。いつものように、たくし上がった服が、彼女の視界を覆った。
 しかし彼の動きはそこで止まる。彼女の服でその顔をすっぽりと覆ったまま、彼の手はその下に着ている肌着にかかった。
 両腕を差し上げて、乳房と腋の下を晒し、しかも顔が隠れている状態など、屈辱以外の何物でもない。シェリルはもぞもぞと動いて、服を体から抜こうとしたが、コヨーテの腕に押さえられた。
「ダメ。そのまま」
「なんで? 見えない……」
「いいの。そのままね」
 良くはない。
 だが、彼の断固とした、優しい口調で命令されると、腰から力が抜けていくようだ。
 コヨーテの手は再び肌着に戻ると、服と同じように紐を解き、それを差し上げたままの彼女の腕の位置までたくしあげた。乳房が彼の前でむきだしになっているはずだ。でも見えない。
 乳房の先端に何かが一瞬だけ触れた。唇か指先か、一瞬では分からない。
 ベルトが引っ張られる感覚が伝わってくる。すぐにそれは外され、腰に僅かな解放感を覚えた。旅装用のズボンの紐が解かれている。微かな衣擦れの音を拾う耳と、臍の下で蠢く指先の感覚を探る肌に神経が集中する。
 腰を温かい腕で抱かれ、ズボンを脚から抜かれた。彼が次にどうするのか分からず、シェリルは身を固くする。
 しかし何も体に触れず、音もせず、彼の声や吐息も聞こえなかった。立ち去った音はしていないのだから、側にいるはずだが、何をしているのだろう。乳房と下着を穿いただけの下半身を晒している彼女の、どこを見ているのだろう。不安と羞恥で頭に血が上り始めた。
 もしかしてこのままの彼女を置いて、どこかに行ってしまったのだろうか。あるいは服だけ脱がせておいて、彼は疲れて眠ってしまったのか。
 起き上がろうかと迷っていると、突然乳房を掴まれた。驚きに彼女の体は小さく跳ねた。
 腋の下に熱く濡れたものが触れる。軟体動物が這うような感触に、彼女は掠れた声を上げた。
「あっ、あっ」
 その部分の刺激が快楽に変わる寸前に、彼の舌はそこを離れる。乳房を揉んでいた彼の手もそこを離れ、再びシェリルの体は居心地の悪い静寂に包まれた。体の芯に灯った炎が、焦らされてもどかしく燻っている。
 左の腰の横に手が触れた。下着の紐を解かれている。
 自分が顔を覆われている状態で、局部をむきだしにするなんて、あまりに恥ずかしい。慌てて脚をきつく閉じた。
 だがいきなり、再び乳房を握られる。豊かなその膨らみを揉まれ、中心を指先で円を描くように撫でられる。
「うっ……あっ……!」
 走り抜けた快感が上げさせた声は、顔を服で覆われているせいでくぐもり、一層淫靡に自分の耳に響く。
 指で弄ばれているのと反対の乳房に、柔らかいものが触れた。何度か口づけを落とされて、それが唇だとやっと気づく。
 乳首に舌が触れたと思うと、唇で包まれた。音を立てて吸われる。切ない声が漏れた。閉じた脚を擦り合わせる。その奥が熱くなった。
 彼は左の乳房を指で愛撫しながら、右の乳首をざらついた舌先で舐めている。
「あっ……あ、あっ……」
 体が震えて、喉が反った。頭の上に差し上げたままの両手を無意識に握り合わせ、乳房から這い登ってくる快楽をこらえた。
 徐々に肉欲に溺れて高まるシェリルの鳴き声を聞きながら、彼は顔を脱ぎかけの服で覆われたままの彼女を見下ろした。顔を覆いながら、乳房も陰部もむきだしだ。その姿の背徳的な淫靡さに、背筋がぞくぞくした。
 昔見た、古代帝国時代の美しい彫刻を思い出した。上体を捻った見事な女性の裸像。年月を経て、それは首と腕を欠いていた。おかげで彫刻が置かれた状態やその表情を目にすることはできないのだが、見た者の想像力で補えば良いだけの話だ。見当たらない首も両腕も、全く芸術的価値を損なっていなかった。
 舞を舞っているのか、拘束されて苦悶に身をよじっているのか、逆に歓喜に身を委ねているのか。
 禁欲的な唯一神の教えが行き渡る前の、奔放な芸術が花開いていた時代の彫刻は、一糸纏わぬ女の乳房の丸みや、豊かな腰に茂る陰毛まで冷たい大理石から命を吹き込まれていた。
 重みで僅かに脇に流れて広がる豊満な乳房。体の線は臍の上あたりで絞ったようにくびれ、そこから再びなだらかな曲線を描いて膨らんでいる。丸い臍の下は柔らかそうだが幾分引き締まっており、長めの恥毛が豊かに茂る恥丘へと続いていた。
 あどけない童顔を覆ってしまうと、シェリルの体は罪深いほど肉感的だ。小柄な体躯のせいで、豊かな乳房と腰がさらに強調される。
 王都の辺りではもてないなどと彼女は嘆いているが、結婚相手として好かれないというだけだろう。単純に肉体的な意味だけを考えれば、この体に誘惑されて耐えられる男は多くはないはずだ。小柄で豊満な肉体は、征服欲まで満たしてくれる。もしもシェリルが娼婦であれば、さぞ多くの客が取れたに違いない。
 彼女には自分は見えていないはずだ。彼女は今体をまさぐっている男を彼だと信じているが、もし違う男だったら。見えない彼女はそれでも彼だと信じて、こうして甘い声をあげ、腰をくねらせているのだろうか。あるいはどんな男にでも、こんな痴態を見せるのか。
 そんなことを考えると、下半身がさらに熱くなった。

 脚に手がかかり、左右に広げられる。
 普段肌を重ねている時は、色々と喋るコヨーテだが、今夜は先ほどから一言も口を開かない。顔をふさがれて彼の姿が見えない状態で、声まで聞こえないのは、不安を煽られた。彼が自分の姿を見てどう思っているのか──喜んでいるのか、興奮しているのか、あるいは嘲笑しているのか、全く分からない。
 それでもシェリルは忠実に、彼に言われた通り、顔を覆う服を取り払わずに、両手を上げたままの姿勢を保った。
 柔らかな恥丘の陰毛の上に、温かい物が触れる。腰の辺りに彼のさらさらとした髪の感触を覚えた。いつもそうするように、恥丘にくちづけをしてくれたのだ。
 開いた脚の間、体の奥への入り口に、いきなり指が触れた。同時に湿った音が微かに聞こえる。
 そのまま指先はシェリルの体の中へと潜り込んでくる。戸惑いと共に快楽がじんわりと沁みてきて、彼女の思考はさらに鈍り始めた。
「ああああっ……!」
 深い声が喉をついて出た。長い指は少しの間、彼女の体の中の感触を楽しむように蠢いたと思うと、前後に動き始めた。
「あっ、あっ、あぁーっ、あ……!」
 腰を僅かに浮かせながら、体を走り始めた快楽を歌う。服に包まれたまま吐いた熱い吐息が、顔全体をくるんだ。
「エロい声出すんじゃないの」やっとコヨーテの澄んだ声が聞こえた。「こんなに濡らしちゃってるけど、もし触ってるのが僕じゃなくて、通りがかりのオヤジとかだったら、どーすんの」
「それぐらい分かるもん……あうっ」
 そう言い返したものの、彼の涼しげな声を聞いて、やはり自分の体を探っていたのはコヨーテだったと、大きく安堵した。
「分かるって、何で?」
 鼻で笑いながら問いかける彼は、彼女の中で指を動かし続けている。その声は冷めた響きを帯びていて、それはそれで魅力的だった。しかし彼が興奮しているのかどうか分からない。早く彼の顔と、下半身を見てみたい。
「だって、触り方とか……そういうので、何となく」
「ホントに~?」
「わっ! ああっ!」
 膣に彼の指が入ったまま、陰核に別の指が触れる。弾かれたような快楽に彼女の体は大きく反った。
 既に熱く膨らみ始めている小さな快楽の芽は、軽く触れられただけで、腰の奥をかき混ぜられるような刺激を伝えてくる。指先でさらに押し潰すように力を込められると、視界が明滅するような強烈な快感が走り抜けた。
「あぁーっ、うっ……あ!」
 より切ない声が喉から溢れる。両手を差し上げたまま、流れる快楽に合わせて、腰が蠕動してしまう。
「気持ちいい?」
「気持ちいいよ……」
 答える言葉はかすれて、もう呂律も怪しい。
 突然指先は彼女の陰部から離れた。
 腕に手がかかり、やっと服が両腕から抜かれ、視界が解放される。
 見慣れたコヨーテの顔をそこに認めて、安心すると共に、体の奥で情熱がさらに燃え上がる。どちらかと言えば中性的で、聖人の絵のような彼の顔を見て、どうしてこんなに劣情を煽られるのかは、ずっと不思議だった。その表情も見るからに欲望に高ぶっているわけでもなく、彼女が大好きな、あの穏やかな微笑みを浮かべているだけなのに。
「やっぱり顔見えないとつまんない」
 彼は唇を合わせると、彼女の柔らかな下唇をそっと吸った。淡い快楽が静かに体に沈む。
 その言葉が妙に嬉しかった。
 体から溢れてくる快楽をこらえきれない性質のシェリルは、声も我慢できないし、顔にもそれが表れてしまう。はしたないし、快楽に歪む顔はきっと見苦しい。けれどどこかで、彼にそれを愛して欲しいとも思っていたのだ。
 彼に与えられた快楽によって、乱れていく自分の姿を楽しんで欲しい。
 彼女は人並みに自分の容姿に女性らしい自惚れも持っていたが、やはり人並み程度の劣等感も併せ持っていた。少なくとも自身が取り立てて美しい女でないことは、よく知っている。
 だからコヨーテが、純粋に視覚的に自分の姿を愛でてくれるなら、例えそれが肉欲に歪んだ痴態でも、こんなに嬉しいことはない。それは同時に羞恥も伴うが、それすら次の快楽に繋がっていると、今では彼女もよく分かっていた。

 コヨーテはシェリルの顔を跨ぐように膝立ちになると、ベルトを外してズボンを引き下げた。彼の両脚の間にあるものは、既に膨張して立ち上がりかけている。
 彼が何か言う前に、シェリルは寝転がったまま、下着の上からそこに触れた。しっとりと温かい。撫でると僅かに動く彼のその部分は、彼と知り合ったばかりの頃には、ただ不気味で醜悪なものにしか見えなかったが、最近では可愛らしいとすら思う。
 彼は下着の紐を手早く解くと、それもずり下げて、自分の男性自身をむきだしにした。シェリルの目の前で、彼女に見つめられたその器官は、硬くいきり立つ。それが唇に押し付けられた。薄荷と石鹸の香りに混じって、微かに独特の生臭さが漂う。
「……洗ったの?」
 まるで彼女を蹂躙するように組み伏せ、顔に男根をつきつけている男を見上げながら、いたずらっぽく訊くと、彼もまた目を細めて答えた。
「綺麗に洗ったよ。舐めて欲しいもん」
 そう言えば旅に出てからは、彼のそこを口で愛撫したことはなかった。彼がそうして欲しそうなら抵抗なく受け入れるが、自分から進んでそこを口に含むのは、まだためらいがある。彼が頼んでこなかったのは、体を洗っていなかったからなのだ。
 そんな風に、彼は体を重ねる彼女に、ちょっとした気遣いと思いやりをくれる。それが嬉しかったし、それで十分だと思っていた。
 彼女はやや首を上げて舌を伸ばし、彼の柔らかい先端をそっと舐めた。根元を手で押さえると、まだ幾分柔らかい陰茎は、彼女の手の中で硬さを増して立ち上がっていく。なんて正直で愛しい生き物だろう。
 先端に軽く唇を触れさせる。小さな穴からは僅かに液体が漏れ始めていた。舌で触れると塩辛い。
 右手で男根をすりあげ、左手で陰嚢を弄びながら、その先端を柔らかい唇で包む。軽く吸い込むと、コヨーテの掠れた声が聞こえた。
「あ……あっ」
 上品で澄んだ声が、劣情に歪んで上ずっている。彼女は特に男性器そのものが好きというわけではなかったが、それを愛することによって、彼が悦んでくれるのが嬉しかった。

 彼の方も、この幼い顔の少女が、小さな口を必死に開けて、自分の体の中で最も誇らしく、最も汚い部分を可愛がってくれるのは、至福だった。
 根元を小さな手で押さえ、口で性器ごと頬張りながら、先端部分やその付け根を舌で優しく撫でる。股間から背筋を伝わって快楽が這い登ってくる。
 時折彼は小さな呻きを漏らす。そうすると彼女も僅かに身じろぎした。男があまり喘ぐのもみっともないとは思うのだが、それがシェリルを興奮させているなら、我慢し過ぎる必要も無いのかもしれない。
 彼女は寝転がったままの不自由な体勢で、顔を前後に動かし、頬の内側の柔らかい部分で彼自身を擦る。
 どうすれば気持ちいいか、どこが快楽を呼ぶのか、ここ一年ほど、何度か彼女と抱き合っている最中に教え込んだ結果、彼女の彼の性器への愛撫は、彼にとって理想的になりつつあった。
 こと睦み合いに関しては、シェリルは彼に非常に従順だ。最初に会った時から、身代わりを演じている身でありながら、結婚前の、しかも実際には他人の婚約者に体を触ることを許してしまうほど、慎みの足りない女ではあった。しかし今の彼女の、この淫らな可愛らしさは、肌を重ねあう内に、ほとんど彼が教え込んだものだろう。
 彼女は自分のものだ。
 傭兵や流れ者がよく口に出す、「俺の女」という呼称を彼は嫌いだった。女を所有物のように呼ばわる男たちを野蛮だと思ったし、それに甘んじている女を愚かだと思っていた。従って、逆に女の方から「あなたのものにして」などと言われると、どんなに美しい女であってもたちまち萎えた。
 シェリルを自分の所有物だとは思っていない。お互いの都合がいいから、時々会って体を重ねるだけだ。たとえ彼女が恋人を作ったり、あるいは結婚したりしても、自分がそれをとやかく言う権利は無いと思っている。無論、愉快では無いが。
 だがそういった、言葉上の意味とは全く違う部分で、彼は彼女を自分のものだと思いたかった。その気持ちは言葉に言い表すのはおろか、具体的な形にすらならない、極めてあやふやな願望だ。
 彼は陵辱は趣味ではなかったし、女を征服したいという欲求はそれほど無い。しかしシェリルを見ていると、どうしてもどこか屈服させたいという衝動が沸いてくる。こうして組み伏せて性器を愛撫させている今も、もっと強く、彼女が咳き込むほど押し込んでやりたいと思う。
 気持ちをを抑え込み、手を伸ばして、男根を咥えているシェリルの頭を撫でてやる。彼女は顔を動かしながらも、目を上げて彼を見た。言葉は無くても、髪を撫でられて彼女が喜んでいるのが分かる。
 腰の奥から最も強烈な感覚が上ってくる寸前、彼は彼女の口から自身を引き抜いた。時間さえあるなら、急ぎの旅の途中で無ければ、彼女の喉に精液を吐き出したい。僅かな抵抗を覚えながらも、それを懸命に飲み下すシェリルの顔が、また可愛らしいからだ。
 しかしもちろん、彼女の体の奥深くまで自身を埋め込んで、ひとつになって彼女を悦ばせてもやりたい。一晩に二度射精するのは、明日の早起きに差し支えるかもしれない。
 心の中で苦笑いする。彼女と初めて会った、まだ十代の頃なら、一晩に二回抱こうが三回抱こうが、翌日には何も影響しなかっただろう。第一、当時女を抱いている時など、翌日のことまで禄に考えが及ばなかった。
 彼もシェリルも、変わらないようでいて、少しずつ時間の流れに侵食されている。

 コヨーテは再び彼女の足元に回り、脚を大きく開かせた。彼の背後に小さく燃える焚き火がある。炎に自分の秘所が照らし出されていると思うと、恥ずかしかった。
「びしょびしょだよ。お尻まで垂れて、マント汚しちゃってるけど、いいの?」
 彼が彼女の裂け目を指でなぞる。ねちゃりという粘液質の音が意外に大きく聞こえて、シェリルを赤面させた。
「やだ……」
「じゃ、ここ濡らすのやめなよ」
「やだやだ、無理」
 両脚を抱えられたまま、僅かにばたばたと振ると、彼は小さく笑った。
「駄々っ子じゃないんだから。……しょうがないな」
 彼はシェリルの脚の間に正座すると、彼女の腰を大きく上に持ち上げて、体を丸めさせた。尻が地面を離れて、座った彼の目の前まで上がる。まるでおむつを替えられる赤子だ。
「やだ、恥ずかしいよ」
 寝転がったまま、下半身を折り曲げられていると、斜め上に大きく開かされた自分の脚の間と、そこに顔を埋めているコヨーテが見える。羞恥のあまり瞳が潤み、大きく喘いだ。
「ワガママ言わないの。……洗った?」
 指先で彼女の陰核を軽くつつきながら、彼は尋ねた。彼女は小さく頷く。
「じゃ、君も夕方からエッチするの楽しみにしてたんだ」
「そうじゃないけど……」
「そうなの? なら、もうやめる?」
「やだやだ。続けて」
「正直だねえ。なんでそんなに可愛いの」
 コヨーテの台詞に酔いしれる間もなく、彼の舌が触れた陰核から、強烈な快感がせりあがってきた。
 舌を伸ばして、陰毛の間を舐める彼の表情まで見える。
「あっ……あっ……はあっ」
 愉悦に合わせて勝手に動く、自分の腰の動きもよく分かる。いつもこんな風に腰を揺すっていたのか。彼にはどんなに淫らに見えたことだろう。
「ほんとだ。僕の石鹸と同じ匂いがする」
 鼻を恥毛の茂みに埋めながら、彼が囁く。吐息が肉の芽にぶつかって、小波のような心地良さを呼び寄せた。
 陰毛のような場所まで、彼と同じ香りを纏っている。もっと彼と他の物まで分かち合うわけにはいかないのだろうか。切ない願望は、今は燃え盛る肉欲に油となって注がれるだけだった。どんな願いも全て、彼を受け入れてひとつになりたいという欲望に束ねられてしまう。
 今は。
 
 彼は左手でシェリルの豊かな腰を支え、陰核を舌で舐めながら、右手の指で膣の入り口に触れた。指先が再び中にゆっくり入り込む。
「はあああっ! あ……!」
 陰核を擦られる鋭い快楽と、膣の奥から直接体の芯に伝わる鈍い快楽。性質の違う愉悦が混ざり合い、目を閉じて叫ぶ彼女の暗い視界に、時折光が瞬く気がする
「気持ちよさそー……」
 陰核を掬い取るように舌でねぶりながら、合間に彼が呟く。何か熱い塊に意識を押し上げられている彼女は、それに答えることもできず、ただ嬌声を上げ続けた。
 体中を走り回る悦楽に合わせて、無意識の内に脚を蠢かせ、腰をくねらせるシェリルを、胴体を捕まえられても、懸命に羽根や手足を動かして逃げようとする動物のようだと彼は思った。たとえば蝶。あるいは尻尾を捕まえられた猫。
 上から秘部を愛撫されながら、顔を見下ろされていると知ったシェリルは、両手で口元を覆い、一番見苦しく歪んでいるだろう部分を隠した。
 彼は膣の中に差し入れている指の動きを速める。湿った音が派手に響き、体の奥まで摩擦されるように熱くなる。
「うぅーっ! ふうっ……あうぅ……」
 口を覆った手の隙間から、甲高い喘ぎが漏れる。夜露を含んだ土と草に匂いを嗅ぎながら、自分が動物になってしまったみたいだと思った。    
 やがて彼は指を体の中から引き抜き、纏わりついた彼女の愛液を舐め取った。
「もうこっちは石鹸の匂いなんかしないよ。ちゃんと洗った?」
「洗ったよ……」
 息を乱しながら、弱々しく彼の顔を見上げる。背を大きく丸めたままの体勢はそろそろきついが、彼が許してくれるまでは従いたい。
「ほんと? いつもみたいにやらしー匂いがするけど」
 指先でその優しく入り口を撫でながら、彼は低い笑い声を上げた。羞恥と屈辱が甘くせり上がり、頭がぼうっとする。悲しくもないのに、瞳に涙が盛り上がった。
「だって……」
「いいけどね。好きだから」
 まるでくちづけするように、舌先で膣の入り口にそっと触れると、彼は持ち上げていた彼女の腰を、恭しいほど丁寧に地面に下ろした。
 両膝を立てさせて、脚の間に体を割り込ませる。
 やっと与えられる。
 彼と繋がれる予感に、彼女は大きく震えた。両手を伸ばして、彼の胸に触れる。
「脱いで……」
 しっかりと抱き締めあって、素肌を重ねたい。その一心で呟くと、彼は頷き、やや荒っぽく上着を脱ぎ捨てた。
「全部」
 ズボンと下着を腿に纏わりつかせたまま、彼女ににじり寄る彼に告げると、彼は顔を僅かにしかめた。
「下も?」
「だって、ずるいよ」
「わかった、わかった」
 呆れた口調ながら、それでも顔を綻ばせて彼は下半身の服も脱ぎ捨てる。
「お互いすっぱだかで、こんな野原の真ん中でやるなんてさ、動物の交尾みたい」
 シェリルの上にその体の重みを預けながら、彼は呟いた。
「いや?」
「全然。興奮する」
 シェリルの短い問いに答えるか否かの内、脚の間に硬く熱い彼自身がゆっくり押し込まれる。
「あーっ! あっ……あああっ……!」
 目を閉じ、背を反らして、その愉悦を味わった。いまだ快楽の極みを知らない彼女に取って、彼とひとつになれるこの瞬間は、最も体も心も揺さぶられて高まる、法悦の一瞬だった。
「指よりいい?」
「いい、いい。全然いい……」
 意識も危ういような状態のまま、うわ言のように答える。コヨーテはそれを聞くと、きつく彼女の頭を抱き締めた。視界が彼の胸で塞がれる。暖かい春の夜、愛欲に高ぶった互いの体は、僅かに汗ばんできていた。石鹸の香りはいつの間にか弱まり、鼻腔の奥に馴染んだ、彼の汗と蝋に似た体臭が漂う。
 死ぬならこうして彼に抱き締められて窒息したいなどと、馬鹿げたことが脳裏に浮かんだ。
 きっと幸せだ。

 彼女を抱き締めたまま、彼は静かに腰を前後に動かし始めた。徐々にその動きは早まっていく。
「ああっ! あ……あううっ」
 何度も体の奥に硬いものが押し込まれる。シェリルも彼の体に力の限りしがみつき、その動きに合わせて体を揺すった。脚で彼の腰を挟み込むと、ふたりの脚の間で陰毛が擦れ合う感触が分かる。
 自分の柔らかい腹の上に重なる、彼の鍛えた固い腹が規則的に動くのが、とても頼もしく感じられた。彼は依存されることも、寄りかかられることも望まない。けれど抱き合っている時だけ、何もかも忘れて白痴になって、彼に全てを委ねることを許してくれる。
 やがて彼は上体を起こし、彼女の腰を掴んで、より激しく突き入れ始める。体ががくがくと揺さぶられた。
「わあ……っ! あはっ、あっ、あっ、あ……!」
 耳に届く自らの嬌声も、彼に揺さぶられて歪んでいる。腰を掴む彼の手に自分の手を重ねて力を込め、少しでも情熱を伝えようとした。
「シェリル……」
 名前を呼ばれ、右手だけ強く握り返される。彼女の伝えたかったものは、彼にどう受け取られたのだろう。
 目を開けて彼を見上げる。情欲に歪んでいてもどこか品があるその表情が、彼女は大好きだった。
 彼の頭上には夜が暗い幕を広げ、そこに輝石や硝子を砕いたような星くずが瞬いている。そのひとつひとつが瞳のように見えた。まるで無数の瞳に見下ろされているようだ。
 そんなことを考えていると、不意に体を抱え起こされる。
「交替。たまには君が上になって」
 器用に繋がったまま、彼は体を倒して横たわった。
 コヨーテを見下ろしながら、シェリルはやや恥らいつつも、膝と腰を上下に動かし始める。先ほどまでとは違う場所に、体内で彼自身がぶつかる。
「ああっ……」
 俯きながら、大きな溜め息をついた。
「ほら、動いて」
 彼女の腰を支えながら、彼は下から腰を突き上げた。瞬時の脳天まで快楽が突き抜ける。
「あっ!」
「ほらほら、自分で気持ちいいように動いてみてよ」
「だって……」
「早く。僕に跨って嬉しがってるシェリルが見たいよ」
「コヨーテ……」
 熱いものがこみ上げる。彼女は上体を折って彼にくちづけした。軽く舌同士を触れ合わせると、両手を地面について、腰を再び前後に動かし始める。
 荒れた呼吸が、悲鳴のように高まった。それは夜の大気に優しく溶けていく。
 体を大きく動かし、それにつられて揺れる彼女の豊かな乳房の動きを押さえるように、彼の手がそれを掴んだ。溢れる快楽に、彼女は大きく喘ぐ。
「ねえ……気持ちいい?」
 呼吸の合間に途切れ途切れに尋ねると、彼は何度も頷く。
「気持ちいいよ。シェリルは?」
「気持ちいいよ……。気持ちよすぎちゃう」
「エロ娘」
 指先で乳首を軽くつねられる。彼は下から大きく腰を突き上げてきた。
「うわあっ! あああっ! あは……あう……!」
 絶頂に近づいているのか、彼は荒々しい呼吸を繰り返しながら、シェリルの視界がぶれるほど、激しく腰を動かし続ける。悦楽が吹き零れる。彼女は彼の腹に両手を当て、彼の動きを妨げないようにするのが精一杯だった。
「いくよ……出すよ」
「出して。全部出して」
 コヨーテに強く上体を抱き寄せられる。同時に彼が熱い呻きを漏らした。爆ぜる炎に照らされる彼の白皙を見つめながら、膣の中で熱く震える彼の感触を味わう。彼につられるように、彼女も深い深い溜め息をついた。

 唇を触れ合わせた後、体をそっと離す。
「……ごめんね、重かった?」
「うーん、馬の気持ちが分かった」
「うるさいっ」
 相変わらずお世辞も言わない彼の腕を軽く殴りつける。自分のふくよかな二の腕と違い、彼のそこは鍛えられて固い。愛欲の残り火が大きく爆ぜた気がする。
 彼は荷物から手ぬぐいを引っ張り出し、彼が注ぎ込んだ精液と愛液に汚れた彼女の股間を先に拭ってくれた。
 続いて自分の性器を拭っている彼の腕に何となくしがみつく。
「……どうしたの?」
 シェリルがそうやって彼の体に纏わりつくのは、体を重ねている時以外では珍しいことだったので、彼は不思議そうに訊いてきた。
「なんでもないけど。……やだ?」
「ううん。いいけど。でもパンツ穿かせて」
 結局彼女は彼が下着とズボンを穿き、小川に手ぬぐいを濯ぎに行くまで、ずっと彼の腕や背中にしがみついていた。
「ねー、ちょっと……猿の子供じゃないんだから。いーかげんにパンツぐらい穿きなよ」
 手ぬぐいを手近な木の枝に引っ掛けた彼は、苦笑いしつつも穏やかに彼女を見下ろしている。そばにいて触れることを拒まれていないというだけで、彼女はたまらなく嬉しかった。
 彼が上着を着る間、素晴らしい速さで下着と服を着込んだ彼女は、外套の上で横になったコヨーテの隣に寝ころぶと、再びしがみついた。
「どうしたの?」
「なんでもないよ」
 仰向けに寝転がる彼の腕にしっかりと掴まりながら、祈るように呟く。
「ご飯食べた後、機嫌悪かったのに、今ご機嫌みたいだね」
 彼は体の向きを変え、彼女と向かい合うように横向きになると、静かに髪を撫でてくれた。肉欲とは違う陶酔が満ちて、めまいがしそうだった。彼の言葉には答えず、シェリルはよりきつく彼の体にしがみつき、顔を埋めた。温かかった。
 彼は僅かに体をずらし、彼女の外套の上に二人して横たわるようにすると、彼の外套をふたりの体の上からすっぽりと被せた。外套の下で、ふたりの体温は閉じ込められて緩やかに澱んだ。
 
 何故かこのところ、仲間たちと会った時のことを思い耽ることが多い。あの頃、まだシェリルは魔術師ギルドを出たばかりで、右も左も分からない、ほんの子供だった。
 たまたま旅の途中の宿でマライアと会ったのは、今思い出しても幸運だったと思う。彼女に会わないままスタンリーたちと出会ったとしても、今のようにパーティーを組めたかどうかは疑問だ。
 何が何でも彼らを助け出すのだ。戦乱だの伝説の指輪だの、関係無い。例え辺境伯によって王国内が荒れようとも、彼らと共にいればどうとでもなる。どうにもならなくて力尽きたとしても、彼らと一緒だったら諦められる。
 シェリルにとって、仲間たちは正しくかけがえのないものと呼べた。引き換えにできるものなどない。彼らの為なら、自分の倫理や伯爵たちの信頼すら捨てることができる。
 仲間たちの命と天秤にかけられるものは、今はひとつしか浮かばない。
 寝息を立て始めたコヨーテの体に、もう一度強くしがみついて、彼女は目を閉じた。
 二人の頭上で星が幾筋か流れた。しかしふたりともそれに気づかなかった。   

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