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魔女とコヨーテ」
第六話 道の先

第六話: 道の先 6

2009.10.18  *Edit 

口を開いたのはコヨーテだった。
「シェリル……つらい?」
 憐憫に溢れた彼の澄んだ声を聞き、シェリルは小さく頷く。
 つらい。何もかも苦しい。心臓が止まる瞬間まで、この苦しさは続くのだ。それはあとどれくらいだろう。
 乾いた溜め息を吐き、彼は再び話し始めた。
「ごめんね。……僕はあの廃屋に様子を見にいった時、傷だらけの君を見つけて驚いたよ。体からナイフ生やして、血だらけで泣いている君を見てて、助けずにはいられなかったんだ」
「そんなこと、頼んでない……」
 掠れた声が喉から漏れた。涸れたと思った涙が再び瞳を潤ませる。コヨーテは頷いた。
「そうだね。頼まれてもいないのに、無理矢理君を連れ出して、術を使ってまで手当てして……。結果として、君がこんなに苦しむなんて、正直、考えてなかった」
 丁度彼の頭の上で揺れる炎は、時々その瞳を一緒に揺らがせた。まるで彼の瞳も潤んでいるように見える。
「勝手なことして、本当にごめん」
 横たわったまま、コヨーテは両手でシェリルの柔らかな、涙に濡れて赤くなった頬を挟んだ。
「君は、つらい? 食べたり、眠ったり、こうして僕と寝たりすること、全部を憎んでいるように見えるよ」
「全部いやだよ。もう何もしたくない」
 呟くと、とうとう涙が零れた。泣いてばかりいて、目元が腫れて熱い。
 少しの間、彼はじっとシェリルを無言で見つめた。やがて、涼やかだが重い声で言った。
「君を連れてきちゃったのは、僕の勝手だから、そのせいで君が苦しんでいるなら、僕も見ててしんどいよ」 
 シェリルが何か答える前に、彼は言葉を続けた。
「だからもし、君が望むなら……。全部終わらせて、君の友人のそばで静かに眠りたいなら」ゆっくりした瞬きが挟まれた。「僕には、その方法がある」

 呆然とする彼女に向かって、彼は続ける。
「僕が勝手にしでかしたことで、君を苦しめているなら、僕がどうにかするよ」
 コヨーテの言わんとしていることは、すぐに分かったが、頭の奥まではなかなか沁み込まなかった。シェリルはまだぽかんと、彼のゆらぐ瞳を見つめている。彼はその視線を受け止めて、微笑んだ。その表情を見ると、衝撃に固まったのと違う部分が緩むのを感じた。
「自分で試したことないから、保証はできないけど……多分、そんなに痛かったり、苦しかったりすることはないと思う」
 頬を挟んでいた左手で、彼はシェリルの髪を撫でた。
 夜が明けても何もする気力の無い彼女が、──恐らく毒か何かで──彼に背を押してもらい、仲間たちが眠る底なしの虚無へと旅立つ。
 さっき彼と抱き合っている最中に熱望していたことなのに、眼前に突きつけられるとすぐには受け入れられなかった。死への恐怖は本能の一番太い根と繋がっている。
 だが、それを押えて冷静に考えてみれば、本当にシェリルに取って望ましいことかもしれない。本能に乱されず、今度こそ冷静に考えるのだ。彼女は自分に言い聞かせた。
 シェリルを見据えている彼は、もう一度口を開こうとして、また噤んだ。
 彼女を見つめるほんの数瞬の間に、その瞳に様々な感情がよぎるのが分かった。けれど、それを読み取ることはできなかった。
 黙ったまま、二人は寝台の上で見つめあった。
「君が……」
 一瞬も視線をそらさないまま、彼は静かに口を開いた。
 彼女は次の言葉を待った。
 コヨーテの唇が弱々しく続く言葉を紡ごうとしたが、それは形を成さずに消えた。
 深い既視感を覚えた。 

 彼の茶色の瞳が放つ、薄暗い光に見覚えがある。とても惹きつけられたことを覚えている。最初にそれを見たのは、月明かりの下だった。初めて彼と触れ合った夜。あの時はうっすらとしか見えなかったものが、小さな炎の下で、よりはっきりと彼の瞳に映っている。
 ややあって、再びコヨーテは呟いた。
「君が……もし……」
 君が。
 もし。
 初めて重なり合った後、公子を偽った彼は、雇われ魔女と知った彼女に向かって、何を言おうとしたのだろう。
 あの時はその続きを聞かなくてよかったと思ったが、もし彼に黄泉へと導いてもらう道を選ぶなら、その前にあの時消えた言葉をぜひ聞いておきたかった。
 そして今目の前で、あの夜と同じ言葉を吐いたコヨーテは、言葉を切って視線を彷徨わせていた。彼には珍しいことであった。
 頭を撫でていた手を引いて、彼はシェリルの体を抱き寄せた。全裸のままの彼の温かい肌に触れ、蝋の香りに似た体臭が鼻の奥に漂う。
「君が、もし、望むなら……。ひとりで友達の元へ行くのが、淋しくて怖いなら、僕もつきあってもいい」

 彼の胸に顔を埋めながら、シェリルの心臓は激しく鼓動を打った。
 廃屋で奇跡的に仲間を助け、彼らと共に、西の辺境を目指して旅立つ。そして山脈を越えた最初の町で、待っていたコヨーテと再会する。
 指輪を取り戻してから、あの惨劇の夜に仲間の亡骸を見つけるまでの、ごく短い時間にシェリルが描いていた儚く眩しい夢だった。
 今度はシェリルがコヨーテと手を取り合い、仲間たちが待つ暗く冷たい、安らかな永遠の闇へと旅立つ。
 体が震えた。止められなかった。
 彼の胸から顔を上げ、炎に照らされる白皙を見つめる。コヨーテは穏やかにシェリルを見つめ返す。
「……本当?」
 彼女は尋ねた。何度そうして問いかけて、『嘘だよ』と笑われたか分からない。
 シェリルを見つめたまま、彼は答えなかった。
「本当に?」
「本当だよ」
 もう一度訊くと、柔らかい声が返ってきた。彼の瞳もまた、決して後戻りできない未知の世界への微かな恐怖に揺れていたが、口元は彼女を安心させるように、微笑んでいるような気すらした。
「どうして……?」
 シェリルには、体を捨てて仲間の元へ行きたい理由がある。でも彼は何故。囁きのように掠れた声で問いかけると、彼は僅かに目を細めた。表情は柔らかいが、その瞳に宿る、あの虚無的な光はさらに深くなった気がする。
「どうしてって……。もし君が、ひとりが怖くて踏み出せなくて、そうして苦しんでいるなら……僕が一緒にいることで、君が楽になれる道が取れるなら、それでいいよ。放っておけば、友達と一緒になれるはずだった君を、深く考えもせずに助けて、こっちに引っ張り込んじゃったことには、責任感じてるんだ。別に僕も何が何でもやりたいことなんて無いし、こうやって日々、ぶらぶらしてるだからね。死ぬ理由が無いから生きているだけで……」
 コヨーテはふと口を噤んだ。喋り過ぎたと思ったらしい。
 彼が己を抑えるように数瞬目を伏せる間、シェリルは黙っていた。そのまぶたにくちづけしたいと思ったが、口元を引き結んでこらえた。
 やがて彼は目を開け、再び穏やかな声を出した。  
「僕はどっちでもいいよ。君がいやなら、もちろん強制はしないし、君がひとりで眠りたいなら、そうしてあげる。ひとりで眠るのが怖いなら、僕もつきあうよ。……僕のことは気にしなくていい。僕が一緒に眠ることで君が喜んでくれるなら、僕も嬉しい」
 見つめるコヨーテの眼差しは、湖のように静かだった。
 シェリルの目の前に、死という選択肢を突きつけることによって、相対的に彼女の中の生への渇望を引き出そうとしている──彼女に生きる気力を与えるために、言っているようではなかった。
 むしろ。

 寧ろ、彼は彼女が首を縦に振り、彼と手を繋いで共に安息の闇へと旅立つことをこそ望んでいるように見える。願望が見せる錯覚だろうか。
 胸の奥から、匂い立つような感銘が湧いた。肺や心臓を全て焦がされるようだった。
 彼のすべてが今、彼女の手の中にあった。
 あれほど焦がれた彼と手を取り合い、重なり合い、苦しいだけの体を捨てて、ふたりで永遠の夜へと旅立つ。その向こうには、仲間たちが待っている。流れるべき時間が無いそこでは、彼がシェリルに疲れて愛想を尽かすこともきっとない。
 ずっと一緒だ。永久に。
 もう淋しくない。


 結論を先延ばしにすることはできなかった。
 今首を縦に振らないなら、もう機会は訪れないだろう。少なくとも、彼と一緒に仲間の元へ迎えるのは、これが最初で最後の機会だ。
 逃せば、醜い体の中に魂を閉じ込めたまま、流れ続ける時間の下で、あらゆる苦しみを受けていかなければいけない。


「コヨーテ」
 シェリルは久しぶりに彼の通り名を声に出して呼び、しっかりと彼の体に縋った。
 再び涙が溢れた。
 この涙の温かさ。
 触れた彼の肌の手触りと、蝋に似たからだの匂い。腹に押し付けられた、彼の固い腹筋。腿に静かに触れる硬めの恥毛。先ほどまで彼女の中に埋め込まれていた、繊細で熱い彼自身。彼女の脚を優しくくるむ、体毛に覆われた彼の脚の筋肉。
 彼女が愛するものはまだ、この世界にこんなにある。
 まだ、全部捨てられない。 
 暗い冥界の底に沈んでしまえば、永遠に彼と、仲間たちと一緒に安らげる。
 けれど彼のこの淡い汗と肌の匂いを感じることも、唾液にまみれた舌を肌で味わうこともない。精神の世界で溶け合ってひとつになっても、違う肉体を繋ぎ合わせ、熱く醜い情熱に溺れながら、ひとつになりたいと渇望することはない。
 渇望。
 永遠の安らぎの中では、その卑しくぎらついた輝きは消え失せる。食べたい、飲みたいという欲望を叶えるために、這いずって苦しまなくていい。
 けれど飢えと渇きが無ければ、それが満たされた時の快楽もない。
 きっと幸せだ。でも嬉しいと思うことはあるだろうか。
 コヨーテと一緒にいて、何度嬉しいと思ったことがあるか、数え切れない。
 そしてマライアたちと一緒に過ごしていた間も、何度楽しいと思ったことがあるだろう。苦しいこともつらいこともあった。多分苦しんでいる時間の方が長かった気がする。
 そしてこれからも、それは変わらない。一瞬の快楽の為に、長く険しい道を飢えて渇いたまま、這いずって歩かなければならない。それでも。
 もし今夜、彼の誘いを断って、この重く醜い肉体を纏ったまま、地上を歩き続けることを選んだとしたら。同じ苦しみはすぐにやってくるだろう。失われた友を求めて嘆き、そしてその悲しみをものともせずに、腹を減らし、眠りたがる自らの肉体を、疎んで捨てたくなるだろう。
 決意を固めただけでは、精神の全てはついてこない。仲間たちを失った傷はそんなに浅いものではないし、打ち寄せる世の荒波は、そんなに甘くはない。シェリルのような意志の弱い人間なら尚更だ。明日の夜にでも、地上にいることを選んだことを後悔するに違いない。聡い彼女は、自分の性質をそれなりに解っていた。それでも。
 体を纏ったまま生きて、地上を歩き続けてまでやりたいことなどない。野心など持っていないし、道の先に輝いていた幻のような小さな夢は、跡形も無く消え去った。
 仲間たちはいなくなってしまったが、今、彼がそばにいる。
 しかしこのまま、永遠の眠りに就かないのなら、彼もまた、いつ、どういう形で離れていくか分からない。それは明日かもしれない。今夜、苦しみ抜く決意をしたところで、明日、彼があるいはシェリルが、暗殺者の刃に倒れないとも限らない。そうなれば、離れ離れになってしまう。
 それでも。
 友人を失った悲哀に苦しみ、彼を失う恐怖に怯え続けるとしても。
 まだ生きて、這いずって、もう少しだけこの肉体を通して、見て、感じたいものがある。
 いずれは死ぬ。明日かもしれないし、数年後かもしれない。少なくとも数十年のうちには、肉体は枯れて失われる。生きている限り苦しみが続くとしても、その時間は限られている。永遠ではない。
 それならやがて区切りがやってくるまでは、もう少しもがいてみてもいいかもしれない。
 頭をしっかりと彼の胸に押しつける。汗や肌の匂いだって、花の香りのように美しいものではない。とても生々しくて、感じ方によっては不快ですらある。
 それでも彼女は彼の匂いが好きだった。
 コヨーテは答えを求めるような言葉や仕草は見せず、しがみついているシェリルの頭をゆっくりと撫で続けている。
 しばらく彼の手の温かさと、その感触そのものを味わった。ここで黄泉へと踏み出すなら、彼女を慈しむこの手の感触を楽しむこともない。つくづく、彼の存在は、主にこの肉体を通して感じてきたのだと思った。体の中で産まれるまで育ててくれた母親を除き、こんなに彼女の体に深く触れた人間は他にいない。
 顔を上げる。微笑んでいる彼が見える。
 決して自暴自棄になっているわけでも、シェリルを責めているわけでもない、その表情を見て、しかし彼女は随分と彼を傷つけてきたことに、今更ながら気づいた。
 意識を取り戻した時、少しでいいからそばにいて欲しいと頼んだのは彼女だ。そしてコヨーテはそれを聞き入れて、彼女のそばにいてくれている。
 それなのに、彼を見てもいなかった。
 仲間を失った衝撃に打ちのめされて、自分を責めて哀れむことでいっぱいで、立ち上がろうともしなかった。そのことが、そばにいて、どうにかシェリルを支えようとしてくれていた彼を、無自覚のままどれだけ傷つけてきたのだろう。
 コヨーテが、嘆き続けるシェリルに、恐る恐る触れているのは分かっていた。半ば自失の悲しみの中で、彼が傷ついた人間を扱うのに、決して慣れていないことは、感じ取れた。何故ならシェリルも同じだからだ。
 なのに、先ほど疲れた溜め息を吐いた彼に対して、無理をしてまでそばにいてくれなくていいなどと、言ってしまった。
 コヨーテに対して、仲間の死の責任を求める気持ちはある。彼に対する恨みは、全て消え去ってはいない。
 けれどそれとは全く別の次元で、彼がシェリルの望み通りそばにいてくれて、彼女を支えようとしてくれたことは、嬉しかった。
 彼があの夜、廃屋まで戻り、強引にでも彼女の命を救ってくれたことも、やはり嬉しかった。仲間の死への自責が覆っていたものを取り除いてみれば、隠しようもなく喜んでいる自分がいる。
 同じ人間に対して、全く矛盾することなく、相反する感情を持つことができる。それを最初に教えてくれたのも、彼だった。
 前の宿で厠を出た時、襲撃者がコヨーテを狙っているのを見つけた際には、心臓が止まるかと思った。自分が憎くて、世界中が憎くても、彼を失うのはやはり怖かった。無意識のままに、彼を支えにしていたのだ。
 その彼を思いやって立ち直ることが、仲間の死に対する冒涜になるだろうか。
 彼の手を突き放し、この世の全てを憎んだまま、息の根が止まるまで、ただただ悲しみに浸り続けることが、友への供養になるだろうか。
 コヨーテも言っていた。生きている人間が、死者に何かしてやれることはない。いくら自分を責めたところで、彼らの魂が慰められることはない。
「ありがとう」
 コヨーテと目を合わせたまま、彼女は呟いた。
 頭に浮かんだのは詫びの言葉だが、以前に彼に、謝られるより礼を言われるほうが嬉しいと言われたことを思い出した。 
「どうして?」
 優しい声で問い返す男に、首を振った。黙って再び彼の体に顔を埋める。
 弱くてずるくてちっぽけな私と一緒に死んでくれると言ってくれて。
 思いを声にはしなかった。口に乗せると、それはあまりにも暗い響きを伴うように思えたからだ。
 生きることを選ぶなら、その忌むべき響きはふさわしくない。こうして触れ合って念じることで、彼に少しでも伝わることを祈るだけだ。

 そのままふたりは、緩やかに肌を触れ合わせて、じっとしていた。
 コヨーテの四肢にくるまれたまま、シェリルは仲間たちとのことを思い出し、静かに涙を流したが、嗚咽は漏れなかった。
 失われてしまった、かけがえのない人たちの為に、彼らの冥福をずっと祈っていよう。そして同じことを繰り返さないように、今彼女が持っている、やはりかけがえのないもの、彼女をこの世に繋ぎとめたものを、今度は決して失わないようにしよう。少なくともあんな無残な形では。
 腹や腕に短剣を突き立てられ、骨に届くほど手首を切り裂いたというのに、コヨーテが傷を癒してくれたおかげで、シェリルの体はどこも失われていない。
 五体満足なら、自分の足で人生を歩きたい。
 かつての親友の言葉が、ごく自然に胸から湧いた。
 シェリルにはまだ無理だ。仲間に支えられてきた無力な少女は、ひとりで人生の険しい道を歩いていくことは、まだできない。
 でも、いつか。そこを目指している内に、たとえ叶わなくても、近い状態になることはできるかもしれない。生きてさえいれば、時間がある。
 時間の無い永遠の場所では、きっと何も変わらない。シェリルは年を取ることもないし、コヨーテが彼女から離れていくこともないだろう。だが、彼女は無力でちっぽけな少女のままだ。
 変容していく可能性に賭けて、時間と肉体の支配を受けることを選ぶなら、シェリルは成長できるかもしれない。けれどそれは老化の始まりでもあり、またどのように変わっていくかは分からない。
 そうでありたいと望むだけでは、思うとおりには変われない。仲間を失った悲しみ、これからぶつかる出来事を乗り越えられるほど強くなれるかもしれないが、それに潰されて小さくなってしまうことだってありえる。
 そして彼も彼女から離れていくかもしれない。少なくとも手を取り合って、一緒に死ぬことは決してないだろう。
 それでも、まだ死ねない。
 いつも半歩先を歩いていた友の思い出が、胸の奥に確かな場所を築きつつある。
 一度の決心では、心はついてこない。こうしてあと幾晩も、悲しみと絶望と戦わなければならないだろう。
 しかし繰り返すうち、癒えることのない魂の傷は、彼女のかけがえのない一部となるかもしれない。仲間たちの生きた証と共に。
 死んだ人間が心の中で生きるという、陳腐だと思っていた言葉をシェリルは今深く実感した。彼らの言葉、生き方、それぞれが道の先に見ていたものは、既にシェリルの糧となり、一部となっている。
 彼女の中に彼らの一部が生きていることは、最大の誇りだ。ちっぽけな自分を、少しだけ愛することができる。
 生きている限り、絶望する度に、何度でもそう言い聞かせよう。
 涙がもう一度、静かに溢れた。それは今まで流してきた、自分を責めて彼らを恋しがる涙ではなく、彼らの魂を悼み、感謝する涙だった。
 マライア、最後までありがとう。そして、これからも。
 頬を流れる涙と共に、ふわりと立ち上る花の香りのような幻を感じた。押し寄せるあらゆる孤独を忘れさせるような、儚くも香しい芳香に、シェリルは一瞬だけ酔った。

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~ Comment ~

RE: 拍手お返事 >Hさん 

拍手、ありがとうございます。
このお話で書きたかった場面の一つですので、印象に残れば幸いです。
陳腐に仕上がっていないといいんですが…。
ここで終われば文句なしのハッピーエンドなのですが(笑)、お話はもう少し続きます。

可能でしたら、引き続き最後までお付き合いいただければ幸いです。
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