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ココナッツ図書館 夜間書庫

魔女とコヨーテ」
第一話 嫁入り

第一話: 嫁入り 5

2009.02.22  *Edit 

 生暖かさがシェリルを目覚めさせた。
 緊張で眠れないと思っていたが、やはり旅の疲れは激しく、いつしか深い眠りに入っていったようだ。
 肩に誰かの手がかかっている。その感触が、シェリルを静かに覚醒へと導いた。
 しかし彼女はそのまま動かずにいた。
「フィリス様……」
 暗闇で、背後から囁き声がした。そこには緊迫したものは何ひとつなく、どこか秘密めいた響きがある。彼女を目覚めさせようとする呼びかけではなく、むしろ眠っていて欲しいと祈るような声であった。シェリルは目を閉じて、相変わらずそのままの姿勢を保った。
 毛布の上から肩に触れていた温かい手が、腕を滑る。体が震えそうになるのを必死でこらえた。
 二の腕を撫でた手は脇腹を撫で、さらに慎重な動きで腰の横に触れた。
「フィリス様、起きていらっしゃいますか……?」
 再びレナードの囁きが聞こえる。
 無視していると、腰に触れていた手が横に滑り、シェリルの柔らかな尻に触れた。少しの間、そこを撫でていた手は、一度彼女から離れると、今度は毛布の下へ侵入してきた。夜着の上に人肌の温かさを感じる。
 あの礼儀正しいレナードが、こんなことをしているのが信じられなかった。僅かに幻滅すると同時に、勝利感のような高揚した感情が静かに湧き出てきた。寝息を立てる振りをしながら、シェリルはそれを噛み潰そうとした。
 寝台が微かに軋む。背中に温かさを感じた。レナードが、背を向けた彼女に寄り添うように、寝台に横たわったようだった。
 彼はゆっくりとシェリルの尻を撫で、反対の手で髪を優しく撫でた。壊れ物に触れるような、遠慮がちで繊細な手つきだ。
 レナードの体温がさらに近づく。彼は背後からシェリルを抱き締めるように、手を前に回し、彼女に体を寄せた。
 臍の上辺りに回された手は、しばらくすると、ためらいがちに静かに体を上に滑り、シェリルの豊かな胸をそっと押さえた。抑えた温かい吐息が首の後ろにかかる。鳥肌が立ちそうだった。
「フィリス様……」
 三度名前を呼ばれた。今度も彼女は返事をしなかった。首筋に温かいものが押し付けられた。幾らか湿った熱い唇だった。
 柔らかさを確かめるように、何度か乳房をそっと押した手は、五本の指を蠢かせ、静かに握るような動きをした。
 知識だけは豊富だったシェリルは、そこから快感が流れ込んでくるかもしれないと、体を強張らせたが、溢れてくるのは純粋な喜びだった。それは、自分を誉めてくれたレナードが、肉体に興味を持ってくれているという、ごく精神的なところを源にしていた。
 一向に目を覚まさないように見えるだろうシェリルの様子に、レナードの動きも徐々に大胆になった。胸をまさぐる手の動きに力がこもる。
 先ほど口づけされた首筋を、もっと濡れた生暖かいものが滑った。同時に幾らか荒くなった吐息も感じた。
「フィリス様……柔らかい……」
 囁かれた独り言は、彼の手と同じく、熱を帯びて熱く湿っていた。
 
 
 夢見心地だったシェリルも、もはや完全に覚醒していた。
 鼓動が早い。熱くなっていく吐息を、規則正しい無邪気な寝息に装う。
 そうして待っている。執行を待つ哀れな生贄なのか、罠をかけた仕掛け人としてなのか、どちらの気持ちの方がより近いのかは分からなかった。いずれにしても、待っているものは同じだ。
 理知的な公子が、自分に対する欲望の為に、どこまで無礼を働くか。薄汚い好奇心を自嘲した。
 あの見苦しい暗殺者には、屈辱的で許し難かったことを、レナードには期待している。
 背中の毛布が動き、初秋の夜の涼しい空気を感じた。寒さに震えが来る前に、そこにぴたりと温かい体が寄せられる。毛布の中にレナードが背後から潜り込んだようだった。寄り添った二つの体を隔てるものは、互いの服だけだ。
 心臓が増々激しく打ち始める。鼓動ひとつごとに、息苦しくなる程甘いものが、血流に乗って全身に送られていくようだ。無意識の内に身体が汗ばんできていた。
 レナードの手が、乳房をさらに強く掴んだ。ゆっくりと揉む様に動かされる。シェリルのまだ若い体は、やはりそこから快楽を探すことはできなかったが、耳元に届く若者の興奮した呼吸が、顔を熱くさせた。
 胸の膨らみを弄んでいる彼の指が、その中心をかすめた。何度かそうされる内、そこはやがて徐々に固くなっていき、下腹部に力が入るような快感が伝わってくる。
「すごい……手に余るくらい大きい……」
 背後から聞こえる熱い囁きが耳を打った。
 小柄な割に胸が豊かなシェリルは、周囲の冒険者や傭兵の男たちから、からかわれ、侮られることが少なくなかった。賢明な彼女はそれを無視するという、最適の対処法を学んではいたが、傷ついていなかったわけではない。
 同業の女たちから嫌味をもらうことも稀にあった。別のパーティーの女戦士に「胸が大きすぎて娼婦みたい」と言われた時には、さすがに怒りを押し殺すのに苦労した。厠にこもって一人で泣いて耐えた。
 できれば少年のような体になりたいと、彼女は常々思っていた。胸が大きいということは、この地方では、男には好まれたが、それは遊び相手としてであって、あまり妻や恋人には望まれない。どこか不身持な印象があるらしい。
 男性にとって、愛や優しさではなく、欲望しかかきたてない、そんな自分の体をシェリルは嫌いだった。
 けれど、こうしてレナードに弄ばれていると、自分の体への嫌悪や劣等感が、薄れていく。自分の肉体が嫌いだったのではない、愛して欲しかっただけなのだ。
 レナードがシェリルを愛して、こんな真似をしているのかどうかは分からない。単純な欲望しか抱いていないのかもしれない。でも今は、彼の気持ちがどうであるかよりも、自分の彼に対する気持ちの方が、重要なのだ。望まない相手に溢れんばかりの愛を向けられるよりも、望む相手に欲望を向けられた方が、ずっと誇らしいと思った。
 仲間に「惚れっぽい」と言われた通り、シェリルは少々見栄えのいい男性に出会うと、すぐにのぼせてしまうことが多い。
 しかし感情を表すのが上手でない彼女の想いは、素直に相手に伝わらなかった。相手を意識しすぎて距離を取ったり、素っ気無い態度に出てしまう。理由の一つは、彼女の小柄で豊満な体型にもあり、簡単な遊び相手と思われたくないという意地もあった。
 遊び相手でも何でもいい。ただ触れて欲しい、抱き締めて欲しいと思ったのは初めてだ。
 自分の持っているもので、彼を喜ばせることができるのなら、何もかも差し出していい。
 今まで彼女は、男性にそうして欲しいと望んでいた。自分の為に何もかも捧げて欲しいと思っていた。彼女自身がそうしたいと思うことになるとは、考えてもみなかった。
 そう思える相手に出会ったことを幸せだと思った。たとえ彼が同じ想いを自分に抱いてくれていなくても。その先がどこにも繋がっていなくても。


 レナードの手はやがて乳房から離れ、再びシェリルの体を下へ滑って、腰を撫でた。背中に全神経が集中する。全ての感覚を使って、レナードの動きを探り、感じ取ろうとしていた。
 彼は慎重に腰から前に手を回し、太ももをそっと撫でる。くすぐったさに似た感触が這い登り、思わず膝がぴくりと動いた。驚いたようにレナードの手がそこから離れる。
 シェリルはひとつ大きく息を吐いて身じろぎすると、また規則正しい寝息を立ててみせ、寝入った振りを装った。
「フィリス様……?」
 やや間があって、レナードが呼びかけたが、無論返事は返さない。
 様子を伺うような気配がした後、再び静かに太ももに手が伸びてきた。
 寝入った女性の体にこっそり触れて、欲望を満たそうとするなんて、なんて卑劣な男なのだろう。公子に対する幻滅は、ひどく甘く、熱かった。そして寝入った振りをして彼の動きを待っている自分は、彼以上に卑劣で救い難い。
 レナードは、彼女の肉付きのよい太ももにそっと手を置き、軽く押した。柔らかい肉にしなやかに彼の手が食い込む。再び体が震えそうになる。閉じた唇を噛んでそれを耐えた。
 彼はそっとそこで服をつまむと、静かに、裾を手繰り寄せるように、布地をたくし上げ始めた。綿の夜着が脚を軽やかに淫靡に滑っていく。くすぐったいのに、それをこらえると、どうしてこんなに罪深いような切なさがこもるのだろうと思った。
 すんなりとした脛が、膝がむき出しになる。暗闇の中、しかも毛布の中だ。背後にいるレナードには見えないはずだと知っているが、恥じらいに顔が熱くなった。
 レナードが彼女の服をつかんだまま手を引き上げると、腿まで服の裾が捲れた。彼はそこで服から手を離し、露わになったシェリルの太ももに直に触れた。温かい掌から、あのこそばゆい感覚がざわりと全身に伝わり、またそれをこらえる為に唇を噛み、こっそり左手の親指の爪を人差し指の腹に食い込ませなければならなかった。今度体が震えれば、彼女が目覚めることを警戒したレナードは、もうこのいたずらを諦めてしまうかもしれない。
 男が彼女のなめらかな肌に手を滑らせる度に、身をのたうたせたい程の感覚が駆け抜ける。息が微かに弾み、喉の奥からかすれた声すら漏れそうになった。
 レナードの手は脚の裏側へと滑り、腿の裏を撫でた後、彼女の丸く形のいい尻に移った。そのためらいがちで、触れるか触れないかという動きは、さらにシェリルの体の感覚を鋭敏にさせた。
 下着の上からレナードの手が尻に触れる。
 今穿いているのは、庶民が着るような小さな薄い綿の下着だ。間違っても貴族が身につけるようなものではない。巡礼の身では仕方無いが、服はともかく下着が粗末だと、自分の身も同じように乾いて愛想が無いような気がして、それだけが残念だった。フィリスがくれた、手触りのいい絹の下着もあったというのに。そっちを身に着けておけばよかった。
 その考えは、一瞬後にシェリルを赤面させた。一体、何を考えているのだろう。相手は一度会っただけの男だ。実際には彼女の婚約者でも何でもなく、この仕事が終われば、縁のない人間だ。その男にどこまで何を曝け出す気なのだろう。
 レナードの手の温かさを感じる。隔てるものは薄い布だけで、時折彼の指先は、下着に覆われていない素肌の部分に触れた。尻の下の柔らかい場所を軽くつまみ、上に滑って、腰に近い、なだらかな曲線を撫でられる。
 そこから流れ込む感覚で、呼吸も苦しいほどだった。
 レナードの手は腰から、シェリルの体の前に回された。彼女のふっくらとした、しかし引き締まった臍の下を何度か撫で、そのまま夜着をたくし上げながら腹を滑り上がる。
 顔が熱くなった。レナードが背後にいることがありがたいと思った。顔は見えなくても、彼女の吐き出す息は熱を持って荒い。目の前にレナードがいたとすれば、すぐに彼女が目覚めていることに気づかれてしまっただろう。
 彼の手が再び、今度は素肌の上から胸に触れた。緊張と快楽への期待で、手足に力が入って強張る。
 レナードの手が、静かに彼女の乳房に埋め込まれていく。その意外に硬くざらついた掌が乳首を刺激し、そこは再び尖り始めた。
「手に吸い付くみたいだ……」
 背後の彼の囁きは宙に溶けずに、シェリルの耳に留まって澱んだ。レナードの体がさらに寄せられ、背中に熱いほどの体温を感じた。綿の夜着を通して、レナードが着ている厚手の麻の服の感触も分かる。
 青年はシェリルを起こさないように、慎重な動きで、横向きに寝ている彼女の首の下からもう片方の腕を通し、背後から両腕でしっかりと抱き締めた。
「フィリス様」
 吐息が首筋の産毛を逆立て、囁きが耳の奥を波立たせた。二人の体はいかなる隙間も許さない程にぴたりと重なる。尻のあたりに、レナードの温かい体の中で、最も熱く硬い部分が押し付けられている。
 体の中で音も無く花が開いていくような気がした。今まで感じたことのない感情が満ちて、シェリルを涙ぐませた。それは喜びに最もよく似ていたが、この十六年の間に彼女が感じたどんな喜びとも違っていた。

 一体レナードは、自分がどれだけ破廉恥な真似をしているのか、分かっているのだろうか。
 公子の動きはもはや不敵な程だった。背後から両手でシェリルの乳房を揉み、首筋や耳に舌を這わせて、時折軽く歯を立てた。そして硬く立ち上がった彼自身を、彼女の体に突き入れようとするように押し付けてくる。夜着よりも薄い下着一枚を隔て、服に包まれたレナードのその部分を感じる。幸か不幸か、シェリルはそれを見た事も触れた事も無かった。
 伯爵令嬢が目覚めて騒ぎ出しても構わないと思っているのだろうか。それともそこまで考えられない程、我を忘れているのだろうか。
 今まで温厚で優雅だった公子の、この恥知らずな程の動きは、シェリルに感染したように、彼女の体を熱くさせた。
 青年の指先が乳首をつまみあげる。悲鳴をあげそうになるのを、シェリルは唇を噛んでこらえた。そのまま親指と人差し指で、何度も転がされると、敏感な先端は増々尖り、固さを増した。
「こんなに固くなってる……可愛い」
 乱れた息の間から聞こえる厚顔無恥の男の独り言は、情熱的にシェリルの頭に響く。
 彼は相変わらず左手で乳房を弄んだまま、右手を彼女の臍の下へ伸ばし、さらに下へと滑らせた。下着の上から陰毛の生え揃った恥丘を軽く撫で、柔らかさを味わうように軽く爪を立てる。レナードの指先が僅かに肉に沈み込んだ。
 もうだめだ。
 体が訴える快楽と心が訴えてくる喜びの中、シェリルはそう思った。さすがにいけない。
 自分の体なら、このまま得体の知れない流れに身を任せてもいいかもしれない。けれど今は伯爵令嬢なのだ。いかに婚約者が相手といえど、寝ている間に秘部をまさぐられるような行為を許してはならない。フィリスに不名誉を着せることになる。
 しかしどうやってこの状況から、お互いに気まずくならないように脱するか。温まった頭には、よい考えは浮かばなかった。おもむろに起き上がり公子の行為を非難して彼の面子を潰しては、今後の旅が気まずい。恋愛の経験が無いシェリルには、機転の利いた方法が思いつかなかった。
 考えるうちにも、レナードの指先は緩やかに盛り上がったシェリルのそこを慈しむように撫でている。
 胸や尻は用心していても、ごくまれに好色な荒くれ者に、いたずら混じりに触れられてしまうことがあったが、唇同様、その場所だけは、他人に触れさせたことはなかった。生まれて初めて男の手で触れられ、彼の前に少しずつ自分自身を曝け出しているような感覚に捕らえられた。
 レナードの指はさらにシェリルの閉じた脚の間へと伸ばされた。固く脚を閉じる。ふくよかな彼女の内腿に阻まれ、彼の指はそれ以上奥へと進めなくなった。何とか彼が指を潜り込ませようとすると、内腿の付け根や陰唇の端が男の指先で強く刺激されて、濃密な快感が伝わってくる。
 それに簡単に身を委ねないように、息を微かに弾ませながら必死で脚を閉じていると、やがてレナードの手はそこから離れ、再び尻へと回された。
 横向きに寝て、軽く腰を前に曲げているシェリルの尻は、若干レナードの方に突き出される形になる。彼の手は丸い二つの尻を撫で、その間、彼女の最も大切な部分に伸ばされた。
(だめ!!)
 恐怖と恥じらいから、シェリルは思わず腰を引いた。レナードの手がびくりと彼女の体から離れる。
 できればレナードに恥をかかせずに、彼にこの場を諦めて欲しい。そんな考えから、シェリルは小さく唸り、寝ぼけた振りを続けた。
「フィリス様」
 レナードの僅かに震える囁きが聞こえる。シェリルは沈黙を保ち、わざとらしいほど正確な寝息を立てた。
 しばらく顔を覗き込む気配がした後、静かに温かい体が彼女から離れた。
 寝台から一人分の重みが消える。床に裸足の足が降り立つ密やかな足音がした。背中に涼しい夜の空気を感じる。

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RE: 拍手お返事 >Kさん 

拍手、ありがとうございます!

このお話ではHシーンが全体的にネチネチしてます(笑)
サッサカサーと終わっちゃうと、私自身が物足りないと思う方なので…^^;
うう、変なお話ですが、引き続きお付き合いいただけたら嬉しいです。
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